#再戦
#再戦
次の日になって、俺たちは慌てて外に出た。
勇志の手紙は、今日のお昼に、お城の決闘場に来なければ、ムロの正体をばらすというものだった。
きっと、勇志は、ムロが猫人族だという事に気が付いた様だが、ほっとく訳にもいかない。
「やっと来たか……」
俺たちが決闘場に着くと、そこには準備万端の勇志がいた。
「助けて! 俊彦!」
勿論、枷を付けられてるムロも。
そして、決闘場の周りの観客席は、前回と違って、人で一杯だった。
「アレが前回、卑怯な手で勝ったという冒険者か? 確かに卑しい顔をしておる」
「あっちの勇者様は、すでにトリプルAのクエストをクリアしてるらしいぜ?」
「それにしてもよくあんな装備でここに来れたよな? 殺してくれって言ってる様な物だぞ?」
「彼も冒険者の端くれなら正々堂々と戦ってほしいですね?」
きっと勇志が、俺に公衆の面前で醜態をさらさせるために準備したのだろうが、すでに大半の人が勇志の味方である。
それも仕方ない。
きっと勇志に言いくるめられてるのもあるだろうが、勇志は、ルックスがいい。
背も高く。
足もすらっとしている。
その上、三百年に一人現れるか現れないかの存在で、風の噂では、すでに高ランクのクエストもいくつもクリアしてるとか。
きっと勇志の才能ならスキルもレベルアップしているだろう。
それに対して、俺は、執事見習い。
クエストもフニャールがクリアしたのを除けば、ランクCしかクリアしてない。
未だに無スキルだし、ルックスも良くない。
なのに俺の方を応援する奴なんて皆無なのだ。
何でこの世界はこんなに不平等なのだろう?
何でこの世界はこんなに差が出来るのだろう?
でも、そんな事言ったらきりがないかもしれない。
人間は、与えられたものに屈してはいけないのだ。
「ルールは簡単だ。前回と同じで、殺したら負け。参ったと言わせた方が勝ちだ」
勇志が、自信満々な笑みを見せるが、今回は、審判はアルベールじゃなく、勇志が用意した審判だった。
「俺が勝ったらムロを返してくれるんだろうな?」
「ああ。勝てたらな? でも、何であんなのを連れてるんだ? もしかしてまたあの時の様に自分と重ねてるのか?」
「……」
「まぁいい。それじゃあ、最初から全力で行くぜ!」
そして、開始の合図が鳴った。




