#10.思春期
#10.思春期
「俊彦さま! 手をどけて下さい!」
俺は顔を真っ赤に染めながら、裸で丸見えな大事な部分を懸命に両手で隠していた。
「い、いやーそのー」
だがこのままでは、最終防衛ラインももうすぐ突破されそうである。
浴場は湯気が立ち込めていて、向こうがはっきり見えないとはいえ、思春期の俺にとっては一大事だ。
「仕方ないですね……! アストロ!」
するとビアンカが手で小さく手話の様な仕草をして、何かを唱える。
「わわわわ!」
そしたら驚く事に、俺の体は金縛りにあったみたいに自由が利かなくなったのだ。
(魔法……!?)
それは分からなかったが、その隙にビアンカが俺の両手を容赦なくどける。
ち、ちくしょ……。
もーどうにでもなれ……。
俺は遂に観念した……。
「最初っからそうしてくれればいいんですよ!」
ビアンカは文句を言いながらゴシゴシするが、それにしてもなんと久しぶりの湯船だ。
こんな事なら母さんにも味合わせてあげたかったな……。
なんだか石鹸の泡が目に染みる……。
俺は全身を流された後、お風呂に浸からされた。
そして、風呂から上がると脱衣所には、俺のボロボロの小汚い服はなく、代わりにアイロンでも掛けたてのタキシードがずらっと並んでいた。
その中の一つをビアンカがチョイスする。
それは俺の世界の空の様に真っ青で俺には少し派手に感じた。
「じ、自分で着れます!」
だが今度こそ最後の自尊心を守ろうとする。
「いえ! 俊彦さまにやらせたら私がリース様に怒られるんです!」
しかしまたさっきの魔法で、ビアンカは人形を扱うみたいに俺に服を着せたのである。




