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My らいとにんぐ ♡ Lady 〜落ちこぼれケモミミ魔法娘がダンジョンでチート少年を救うまで〜  作者: 九重 ゆめ(元佐伯 みかん)
最終章 終わりよければ全て……あれ?
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遺跡調査課、言わずもがな新メンバー!

「アーミー! 会いたかったぁああああ! オレのこと心配してくれてたの!? マジうれしい! 再会のハグウゥをおおおお」


 上の部屋へ続く梯子から飛び降りるやいなや、こちらにまっしぐら。金色の瞳をキラキラ輝かせながら、ダッシュで走りよる、細身の同年代の黒服の男。新メンバーって、やっぱり、サクヤのこと!?


 無事だったんだ! それに、これから一緒に仕事出来るなんて! 


 うれ……。いや、う、うーん。正直


うれしくはないかなあ。


 あーいうカンジじゃなかったら、もっと違う迎え方があったんだけど……無事を確認できたのと、2週間経っても相変わらずの様子に呆れたのも含めて、私は横を向いてため息をついてしまった。


 はぁ〜。


「何度も言いますが、職場でのセクハラは厳禁です」


 その間に、ラーテルさんがテーブルに置いてあったバインダーを素早く手に取り、彼に投げつけ……さっすが、ラーテルさん、クリーンヒット! 


 顔をおさえてうずくまるサクヤ。取りあえず私は体当たりで彼に抱きつかれるのは免れたようだ。


「サクヤ、無事だったんだね。よかった」


 あの時はかなり汚れた服を着てたけど、今はオウルさんのものを借りのか、似たような黒色のシャツにパンツ姿だ。片耳のひし形のピアスはあの時と同じ。ちゃんと服も着替えられたみたいだし、お風呂にも入れてるみたいだし。少し長めの髪も、ケミストルマッシュ風にきちんと切りそろえ、顔色もいい。元気もあり余ってるみたいだしね。 


 なにはともあれ、よかったあ!


「いやあ、俺も牢獄に入れられたりして大変だったのよ? でもヤロウ、これ以上ウダウダ言うなら、もっとでかい穴をぶ……いってええええ!」


 そのままオウルさんの横に立って、愚痴ろうとしたようだけど。


 ほーら、まーたそういう突飛押しもないこと言うから。オウルさんに、耳を引っ張られて注意されている。


 でも牢獄って。やっぱりサクヤは悪魔。事情聴取中はそういう場所に入れられちゃったんだ……。少し胸が痛む。


「か……いや、王の慈悲で彼も赦された。サクヤは悪魔だが特別待遇を受けることになったんだ。しかし……」


 オウルさんは無言でメガネの奥にある青い瞳をサクヤに向かって光らせる。


「わーってるって。この余りある力を破壊行為に使わず、世界各地のダンジョンに眠る眷属どもを殲滅するのに使えばいいんだろ!? まかしとけって! ったく。人を大量殺戮兵器みたいに扱いやがって」


 はぁあ〜。その歯に衣着せぬ性格、相変わらずなんだから。オウルさんはサクヤの背を強めに叩きながら、やっぱり私と同じように、ふかーいため息をついた。


「とりあえず。自己紹介しなさい」


 一方のサクヤはどこ吹く風、オウルさんの隣、私たちの前に背筋をばして立ち、こっちを見てウインクされた気がしたけど、私はスッと目をそらす。全くもう!


「えっと。サクヤって言います。色々あって遺跡調査課に配属になりました。うーんと」


 ラーテルさんが額に手を当て、露骨な嘆息をもらす。うう。男嫌いのラーテルさんが、最も苦手とするタイプだもの、サクヤ。


 一緒のチームでやっていけるかなあ……ラーテルさんの本気の一撃で調査どころじゃ無くなりそう……一抹の不安がよぎる。


 一方レトは「新しいメンバーはサクヤかぁ! 男の子でうれしぃいなあ」と、ニコニコ単純に嬉しそうだ。


「まあ周りはあれこれ言いますが、オレ自身、やたらめったらな破壊行為をしたいわけでは無く。ただこの世界を見て回りたいんです。長く寝てて、昔とだいぶ様変りしているようだし。あれ(・・)もどうやら残って(・・・)るようだし……。どっかの誰かじゃないけれど、オレがやったことは正しかったのか。そうでないなら軌道修正したいというか、何というか……」


 サクヤは珍しく遠くを見るような目をして、首を傾げた私と目があうと。ニッコリとこちらに微笑み返してきた。


「ま、色々問題のある課のようですが、アーミーの愛さえあればオレは常に魔力満タン、凶暴な眷属も魔物も何のその! つう訳で、アーミー! レト、ラーテルサン! 一緒に世界を股にかけた冒険を楽しみましょう! どうぞよろしくお願いします!」


 あ、愛って……。私は無いからって否定をしようと口を開くより前に、


「アーミー! これから同僚だね! 憧れのオフィスラブ! 二人でらぶらぶに、こう力を合わせ……でぇえええ!?」


「繰り返し申しますが、職場でもダンジョン内でもセクハラは禁止です」


 すごい勢いで隣の席に座ってきて、私の手を握ろうとして……隣にいたラーテルさんに手刀を振り下ろされる。


「あはは! サクヤとラーテルさん、面白いねぇ〜」


 それを見てレトがケラケラ屈託なく笑った。


 うーむ……この一連の流れ、なんだかパターン化されて来てる気がする。


「私、ダンジョンで他に憧れている人がいるって言ったでしょ?」


 これ以上、ラーテルさんの手を煩わせるのもなんだし。私は手を抑えて体を折るサクヤに、ハッキリとお友達宣言をした。


 ……でも実言うとあの一件で、ちょっと思ってたより違う人なんじゃないかなって、なんとなく辛くて悲しい気持ちになったりもしてるんだけど。でもやっぱり、私……。


 と。サクヤは手をさすりながら無言で席を立った。そしてオウルさんの横に早足で歩み寄る。


「おい、だん……いや、オウル上官殿! ちょっとタイム! こっち!」


 部屋の角っこに歩いて行ってしまった。なんか話があるのかな……?


「そもそも、おかしくない? オレ、ハーレムラブコメでっつったよね? 完璧このハーレム欠陥じゃんよ!」


 はぁあ!? 思いっきりこっちに聞こえてきてるんですけど!


「メインヒロインは別の野郎に絶賛片思い中だしよ」


「サブ1は、百合、もう一人は性別すらあってねえじゃねえか!」


 ムッとする私とラーテルさんをそのままに、レトか今度は席を立ち二人のところに歩いて行った。


 いっけない! 最近見慣れちゃって忘れてたけど今日レトは女の子!?


 オウルさんと、サクヤが振り返るとレトはいつのように、重たそうに胸を両手ですくい上げる。


 もちろん、サクヤの目は釘付けだ。


「って、レトおまえ……!?」


「あ、満月の今日は、ボク女の子モードなんだあ! ボク、どっちにもなれるから、そんなに悲しまないでえ」


 レト、そんなこと気にしてる場合じゃない! サクヤの目つきが怪しい……レトか危ない!? と、思いきや。


「す、すげえ、これ……」


「触りたいのお? ボクぅ〜、男の子だから、いいよ〜?」


「はああぁぁ!?」「サイッテー!」


 二人のあさってなやりとりに、私とラーテルは同時に叫んで席を立った。サクヤもサクヤだけど、レトもレトだ。


 って、隣から殺気……ラーテルさん! いつの間にか、調査用のハンマーを振り上げてる。


「いいワケありませんわ!」「ダメええ!」


 ラーテルさんの叫び声と私が彼女の手を止めたのと、オウルさんが素早くサクヤの襟首をつかんだのは、まさに同時だった。


「お前はまた眠りたいのか?」


 殺気立ったオウルさんの小言と、げんこつを頭にもらって……ションボリ。サクヤは私の隣に帰ってイスに座り込む。


 もう。さ、先が思いやられるなあ。


 ともかく、しょげるサクヤは放っておいて。私たちはオウルさんの方へ向き直った。


 事件の真相、サクヤの無事は確認できたけど、私たちにはもっといっぱい、オウルさんに聞きたいことがあるんだ。


「オウルさん〜、ダンジョン爆破についてはわかったけれどぉ。なんで〜サクヤはぁ〜閉じ込められていたんですかぁ? それに、どぉおして、オウルさんはサクヤを〜、ボクたちを騙してまで助けようとしたんですかあぁ?」


 そう! レトなかなかいいこと言う! それに私も悪魔についてもっと聞きたい!


「それに二人共悪魔って言ってましたよね、悪魔ってなんなんですか!?」


 ラーテルさんも、身を乗り出し気味に発言する。


「サクヤを閉じ込めた者は一体誰なのでしょう?」


 オウルさんは驚いて目を見開き、両手で私達をけん制しながら、答える。


「それについては……もう少し待ってほしい。順々に教えていきたいと思っているんだ」


 少しってどれくらい? と不満げな私達の様子を見て、どこかうれしそうにうなずき、アゴに手をやった。


「前も言ったが、私もサクヤも悪魔だが、君たちの味方だ。しかし一方、君らを襲ったあの眷属のように、未だネオテールに牙をむく悪魔もいる。それもまた真実なのだ」


 オウルさんが目を閉じた。


「歴史書というものは常に勝利したものにより書かれる。そこにあるのは勝者に都合の良い内容。都合の悪い事項は意図的に排除されるものだ。今私がその内容を逐一君らに言って聞かせたところで、可否を問うだけの無意味な議論となってしまうだろう。それより歴史に関わった人物、場所を見聞きし、調べ、自分たちで学び、考えて欲しいのだ。ネオテールが支配するこの世界はなぜ作られたのか。そして過去に何が起き、悪魔は一体何者だったのか」


「そして今何が起きようとしているのかも含め……世界の真実をね」


 その雰囲気に飲まれ、私達は黙り込んでしまう。


 ここまで言われちゃうと……反論できないよね?


 目を開けたオウルさんは、私達が納得したか確認しつつ、サクヤに視線をやる。


「サクヤも、エルクの寮に今日から詰めてくれ。部屋は空いてないが、屋根裏の物置を掃除しておくそうだ。そこで寝泊まりするように」


 サクヤがあからさまにムッとした表情で答える。


「物置小屋って……あのババア……」


 ……ラーテルさん以外に、エルクさんまで、敵に回して。ほんっと、命知らずなんだから。


 ジト目でサクヤをにらむ私を見て、一度オウルさんは声を上げて笑うと、席を立った。


「という訳で、メンバーも揃ったことだし。早速次の仕事と行きたいところなんだが……」


ーーーー


「まさか、こんなことになるなんて」


「2週間もさらに休みになるてえ〜思ってもみなかったよねぇ〜」


 私たちはまた、調査課のある塔を見上げてため息をついた。


「実は、私は明日から2週間の出張が決まってしまってね」


 あの後席を立ったオウルさんが口にしたのは、予想もしなかった私達の休暇の話だったんだ。


「王都からさらに大河を下った先にある南の港町で特殊な海底ダンジョンが見つかった。調査の手が足りないそうで、応援を頼まれた。そこへ赴く予定なんだ」


 急に心配なり、


「2週間ですよね。2週間経てばまたみんなでお仕事できるんですよね。あの時みたいに」


 そう確認しつつ、私は背負ってきたリュックに手をやる。そして。オウルさんに渡そうと三人で約束していたノートを取り出した。


「これ、調査報告書です。三人で完成させました。みんなで待ってますから」


 あのダンジョンで作っていた調査書、色々あって、途中だったでしょ? 


 寮で療養中に、三人で補完しあって、きちんと完成させたんだ。


 もちろん、鳥の右半身も書き込まれている。測量はできなかったけどね。


 オウルさんはそれを私から受け取り、じっくりと中を確認してくれた。そして、


「……素晴らしい。完璧な出来栄えだ」


 と褒め、ノートを閉じる。表紙をしばらく見下ろし、ふと。なぜか寂しそうに目を閉じた。え? ストロベリーブロンドの髪がかかり、彼の表情がよくみえない。でも、次の瞬間には私たちを、見渡し最高の笑顔で語りかける。


「レト、ラーテル、そしてアーミー。この一ヶ月の成長は目を見張るものがあった。君たちは最高のチームだ。これからサクヤも加わることになる。彼は性格に難はあるが、根は悪くない、必ずや君たちの力となるだろう。今後とも、その優れたチームワークを発揮し、勇気と自信を持って困難に立ち向かってほしい。君らなら必ずどんな壁も乗り越えられるだろうからね。……これからの活躍を期待しているよ……」


 そして、一言。


「ありがとう……」


 そうささやいて……。


「あの! オウルさん、あなたも罪は問われておられないんですよね?」


 突然それまで黙っていたラーテルさんが声をあげる。オウルさんは何も言わない。ただいつもの優しい笑みを浮かべながら、


「……私はこの後すぐ港町に立たねばならないのでね、今日の仕事はこれでおしまいだ」


「……サクヤ。彼女たちを頼んだよ」


 そうおっしゃって、私は早々に部屋を出されてしまったんだ。


 ……なんかおかしな雰囲気だったんだよなあ。


「まあまあ。ダンナも一応、オレと同じ特殊な悪魔の一人だからさ、そんな気にするこたあないって。すぐ帰ってくるさ。ささ、寮に案内してもらおうかな? エルク……オネエ様の宿に、さ」


 サクヤはこちらを見ず手を頭の後ろで組みながらトラム乗り場に向かって歩き出す。


 確かに、心配だけど。サクヤがそういうなら……。それにまさかダンジョンを一人で攻略(・・・・・)なんてことはないだろうし大丈夫……だよね?


「サクヤ〜トラムに乗ったことあるう〜? 先輩のボクが、教えてあげるよお〜」


 あまり深く考えることを知らないレトは先輩面して、はあ。サクヤにあれこれ言われてるようだ。セクハラに発展する前に助けに行かないと。


「ラーテルさん?」


 彼らの方に駆け寄ろうとして、立ち尽くしたままのラーテルさんの後ろ姿に声をかける。


「え、ええ。すみません。行きましょう」


 不安げに塔を見上げたままのラーテルさんは、私の声に振り返り、サクヤとレトのやり取りを見て、ため息を付き駆け寄っていった。


 私も。もう一度塔を見あげる。


 2週間後、オウルさんが帰ってきたら新しい仕事が始まる。


 次はどんなことがおきるだろう?


 今回の件で気付いたけれど、調査は予測出来ない出来事の連続だ。だから、この2週間という時間を無駄にしないようにしないと……!


 ーー大切な仲間のために! それに……。


 私は自分自身に今一度言い聞かせるように、昨夜の決意を心の中で繰り返す。


 そして。


 形見の星のペンダントを握りしめ、みんなの背中を追って、走り出した。


 

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