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My らいとにんぐ ♡ Lady 〜落ちこぼれケモミミ魔法娘がダンジョンでチート少年を救うまで〜  作者: 九重 ゆめ(元佐伯 みかん)
最終章 終わりよければ全て……あれ?
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久しぶりの遺跡調査課

 トラムを降りた私たち三人は、例の見上げるほど大きな庁舎の前で、呆けたようにポカンと口を開けていた。


「ここへ来るのも、久しぶりだね」


 私が青空にそびえる中央塔を見上げながら、ぼやくと、


「うん。久しぶりすぎだよねぇ〜」


「ええ。そうですわね」


 レト、ラーテルさんも同じような様子で答える。


 私たちが研修で「研修用じゃないダンジョン」を攻略してからすでに10日が過ぎている……。


 あの日エルクさんにおぶわれて帰った私はそのままお風呂にも入らず、丸2日寝続けてしまったんだ。


 


 ハッと眼が覚めると、レトが心配そうに看病してくれていて……そのレトから、実はラーテルさんも骨折まではいかないものの打ち身や捻挫が重症で、同じように寝込んでいると聞いた。あの時は心臓が止まるほどびっくりしたもんだ。


 でも10日経った今、私の魔力はすっかり回復。ラーテルさんも5日目からは動けるようになり、激しい運動はまだ止められているけれど、日常生活に支障がないほどまでに回復した。


 あれだけのことがあったにも関わらず、こうして三人そろって仕事場に来れている……これってすごい奇跡だよね。


「じゃ、早速入ってみよっか」


 私の言葉に二人は頷き、庁舎へと歩み寄り……塔の螺旋階段に続く扉を開いた。錆びた音を立て開く扉の後ろから、私に続き、レト、ラーテルさんの順に入り、私たちは上の部屋を目指す。


ーー昨夜のことだ。夕食を食べていた私たちにエルクさんがおもむろに言い渡した。


「オウルから連絡だ。明日遺跡調査課に朝10時に出勤するように、とのことだ」


 療養している間、時々あの事件が夢の出来事のように思える時もあって……。けど彼らのことを思い出すと、そうじゃないってリアルに引き戻される……そう、彼らとはオウルさんと、サクヤのことだ。


 もちろんエルクさんに二人の無事を何度も確認した。でも「二人は無事だが詳細については知らされてない」って、そればっかり。ずっと胸の奥が心配でチクチク痛んでいたんだ。


 ……特に私、何か彼らにかばってもらっているようだし……。


 二人は大丈夫だろうか。もしオウルさんがいらっしゃるなら、彼のことも聞ければいいのだけど……。螺旋階段を彼らの無事を祈りながら駆け上る。そして。私たちは見慣れた遺跡調査課の扉を開けた。


「……おはようございます」


 様々な感情が入り混じり、ドキドキしてうまく声がでない。小さくかすれた声で挨拶し、そーっと中を覗くと。


「おはよう。レト、ラーテル、アーミー!」


 燦々と陽射し差し込むいつもの部屋。その大きなテーブルの中央で、席から立ち迎えてくれた人物。紺色の丈の長いローブに、黒い細身のパンツ姿、ストロベリーブロンドの男性……あぁ! よかったぁあ!


「オウルさん!」


 


 私達は一斉に声を上げ、顔を見合わせて笑顔でうなずきあうと、彼のところへ駆け寄った。


 それにしても、ラーテルさんの心から安心したような表情と言ったら! 私もつられて笑みがこぼれる。オウルさんにケガさせた上に、色々迷惑かけたって、寮でず〜っと元気なかったものね! 


「良かったです! あの後一度もお会いできなくて心配してました」


 私の言葉にラーテルさんも、


「そうですわ! 一言連絡をくだされば良かったのに」


 と続ける。不満げな表情を浮かべたレトが極めつけとばかりに、


「そうだよぉお〜〜。ボクたち毎日とっても心配だったんだからねぇ〜〜」


 腰に手を当て珍しくしっぽをピンと立てながら頬を膨らませた。


「すまない。思いのほか事情聴取や、事後処理に手間取ってしまってね。なかなか業務を再開できなかったんだ」


 オウルさんはきれいなストロベリーブロンドの髪を後ろへはらいながら、私達に座るように促す。


「あの後、エルクから君たちの様子について聞いていたのだが、大丈夫かい? 傷はもう癒えただろうか? 特にラーテル」


 そして私達の顔を一人一人心配そうにじっと覗き込んだ。


「ええ、大丈夫です。10日間ゆっくりと休ませていただきましたから」


 ラーテルさんが答える。私とレトも首を縦に振ると、オウルさんは心の底から、というように深い安堵のため息をついた。


「あの時、きちんと伝えられなかったのだが。君たちを欺き、結果あのような目に合わせてしまい申し訳なかった。本当に……すまない」


 そのまま私たちに向けて、深く頭を下げた。え、えええ!? 上司に頭を下げられるなんて! 私とレトは慌てふためいて席を立ってしまう。


「そ、そんな、あの、やめてください!」


「そうだよぉ。ボク、どうしていいかわからなくなっちゃうよぉ」


 あたふたと困惑しきりの私とレトをしり目に、ラーテルさんが目を伏せたまま立ち上がり、静かに語り出した。


「レトとアーミーの言う通りです、どうか顔をお上げください。私はダンジョンの奥でオウルさんを責めてしまいました。でも……最後、私たちを何か大きな力から守ってくださった。私も友人のアーミーやレトがあのような場所に何年も囚われたらと思うと……お気持ちはわかります。一言相談して欲しかったとも思いますが」


 ラーテルさんは胸に手を当てて、まっすぐにオウルさんを見つめた。


「色々ありましたが……今ではアーミーもレトもあなたを信頼のおける上司として認めています。もちろん私も」


 はあ〜。言いたかったことをズバッとラーテルさんが言ってくれてよかったぁ。私は胸をなでおろした。


 確かにオウルさんに未知のダンジョンに連れ込まれたせいで、あんなことに巻き込まれたと言うのが正論なのだけれと、ラーテルさんの言う通り。私だってレトやラーテルさんが閉じ込められたら、なんとかしたい! って思うに違いない。


 ……実際、私は二人を助けたい一心で、ネオテールの敵といわれるアクマだか、眷属だかのサクヤを起こしちゃったわけだしなあ……。


 


「いや、今回の研修における一連のトラブルの責は全て私にある。謝罪するのは当たり前のことだ。しかし……今の言葉、うれしかったよ。ありがとう」


 オウルさんは顔を上げて、私たちを目細め見つめながら微笑む。でも、すぐに目を伏せた。


「このような謝罪のみで許されるとは当然思っていない。それについてはきちんとこれから償うつもりだ」


 う、うーん。気にしないでって言ってるんだけれど、オウルさんもとても真面目だからなあ。これから仕事を行う上でってことかなあ? なんて思いつつ。私の胸はまたチクリと痛んだ。そうだ。もう一人、私には無事を確認したい人がいるじゃない!


「あのダンジョンでの事件って、結局何が原因だったんでしょう? それに……」


 サクヤは? と聞こうとしてなんだか恥ずかしくなり私は口ごもってしまった。オウルさんが、そうそう、その話をせねば、と口を開く。


「ああ、そうだね。ダンジョンの入口が爆破された事件の真相はこうだ。グレーの髪の騎士団員、彼はダウトという名でね。賭け事に興じて大金をすり多額の借金を抱えていたらしい。期限までに返さねば、騎士団に事の次第をバラすと脅され、団の運営資金を横領していたそうだ。それについて取り立ての男と会話をしていたところ、運悪く手紙を出しに来たアーミーに鉢合わせし……事の次第をバラされぬよう、あのような許されぬ行為に及んだ、と言う事なんだが」


「そ、そうなんですか? でも手紙を出したあのとき、ほんの一瞬でそんな話聞こえなかったのに……」


 手紙を出したあの日、みんなを待たせていたのもあって私も急いでいた。確かに何か話していたようだけど、内容の詳まで聞こえなかったんだけどなあ。でも、あちらはそうは思っていなかったんだろう。


 自分、それに巻き添えで仲間まで殺されかけたこと……到底許されることではないし、もちろん当事者の私だって許せない。しかもそんな身勝手な理由で!!


 けど……あの時バルトさんに殺されてしまっていたら、明らかにならなかった真実を教えてもらえて、少しだけ、ほんの少しだけ、心のどこかのモヤモヤが晴れたような気もする。


 なんだけど、まだ全部がすっきりしたわけではない。ずっと気になっているのは、ダウトという団員に向かって、バルトさんがもらしたあの発言だ。


 サクヤが事の成り行きをみんなの前でバラしたあの時、バルトさん、犯人の胸倉を掴んで、確かに言ってた。


ーー「話が違う」って。その意味を、私はずっと寮で考えていたんだ。


 で、一つの結論に達した。


 ……信じたくないけれど。バルトさんってほら、悪魔や眷属に対してすごい嫌悪感を持っているようじゃない? まさか、私たちが悪魔を蘇らせようと悪巧みをしてると勘違いして、ダウトっていう団員を使って入口の爆破を仕組んだ、というのが真相だったとしたら……?


 私は自分の思い付きが、急に怖くなって、ぎゅっと目をつむった。


 なんて……考え過ぎだよね。


「納得できないところもあるだろうが……横領をはじめ、ダンジョン破壊、アーミー以外にも、レト、ラーテルたちも巻き沿えに殺人を犯そうとした罪は重い。彼は厳しい刑罰を受けることとなった。懲戒免職のほかにも色々……命だけは救われたがね」


 オウルさんは新しい縁なしメガネを直し、微笑む。


「他に聞きたいこともあるだろうが……口外禁止の事項もあるから、事件についての詳細はこの辺で勘弁してくれると助かる。もちろん、君たち三人は無罪だ。悪魔のサクヤを起こしたことも含め、仲間を助けるためだったことが立証され罪を問われるようなことはない。それだけは安心して欲しい」


 私たち三人はホッとため息をついた。とりあえず私たちは何も悪くないってことは証明されたらしい。


 もしバルトさんが何か勘違いをしていたとしても、事の真相を知ってもらえたって事だよね……!


 ともあれこれは全部私の憶測、いや妄想だ。もちろん誰にも話をしていない。……今となってはバルトさんの発言自体、確かめようがないからさ……。


 でも、もしバルトさんがダウトって人に爆破をやらせたとしても、私たちが悪い企みをしていたわけではないということが理解してもらえたはずだ。


 でもそうするとだよ。


 私たち三人は無罪が立証されたけど。私たちをあざむいて、違うダンジョンに案内して悪魔のサクヤを蘇らせようとしたオウルさんって、何か罪に問われちゃったのかな……?


 そんなことを内心考えヤキモキしていると、オウルさんが、


「ともあれ、私は彼を糾弾できる立場ではない。事情があるとはいえ古い友人を助けたいがために、何の罪もない君たちを欺き、大ケガを追わせてしまったのだから」


 なんて自嘲気味に締めくくるもんだから、私たち三人は同時に「それは言わないお約束です!」とつっこんでしまった。 もう〜! それはさっき気にしないで下さいって言ったのに〜。


 さてと。とりあえず事件の真相は置いておいて。確認したいことがもう一つある。


「あの、私、もう一つ聞きたいことがあって……そのお」


 私がオウルさんを上目遣いで見上げると、彼には珍しく心底おかしそうに、ニヤッとした笑みを返された。う。なんだろうこの意味深な微笑み。そ、そういう事じゃないんだけどなあ!


「ああ、実はこの課に今日から配属となる新しいメンバーがいる。紹介しよう、おい、入って……」


 え!? 新メンバー!? なんて驚いたのもつかの間。オウルさんが声をかけた途端、上の部屋につながる天井扉がバンッと音を立て開く。次いで、ガッチャン! スライド梯子が床に刺さるような勢いで滑り降りてきてた。


 


 う、うーん。なんだかとっても。イヤ〜な予感……! 

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