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My らいとにんぐ ♡ Lady 〜落ちこぼれケモミミ魔法娘がダンジョンでチート少年を救うまで〜  作者: 九重 ゆめ(元佐伯 みかん)
最終章 終わりよければ全て……あれ?
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元英雄たちの邂逅(1)

「オウル殿、これはこれは……新人研修の帰りでいらっしゃいますかな」


 一ヶ月ぶりだ。兜を脱ぎ、夕風に下ろした髪をなびかせたバルトさんが、ゆっくりとこちらを振り向いた。青い瞳が夕日を受け、紫を帯びて冷たく光る。ちくりと胸が痛む。でもこれは、あの夜のような高揚感のあるドキドキした痛みじゃない。彼のさすような鋭い視線は、なぜか私に向けられてる気がして、胸が痛み思わずうつむいてしまう。そんな私をラーテルさんが心配そうに見下ろしてくれる。


「ああ。しかしバルト。王の身辺警備をしているはずのお前と、城壁警備担当の彼が。なぜこのような場所に?」


 オウルさんがそれに答えた。こちらも冷ややかに、暗にバルトさんの行為を責めるような口調だ。次第に緊迫していく空気感……でも次の瞬間、鼻にかかった高い声がその雰囲気をぶち壊した。


「聞きたいのはこっちにゃ。研修ダンジョンは3部屋しかない、攻略2時間のお手軽仕様のはずにゃ。様子を見に来たらまだ出て来てなくてビックリしたのにゃ。なんでこんな時間に、しかもそんな格好でお前らはウロウロしているのにゃ?」


 この声! やっぱり! フードを脱いで少しアゴを上げ、こちらをイジワルく睨みつけるピンクのツインテール、長いしっぽの魔法少女。魔法ギルドのお偉いさん、ソロルだ。そして、その二人の後ろで、あからさまに動揺し、今にも逃げ出そうとしている挙動不審な男……。


「アーミー。どうかしましたか?」


 ラーテルさんが、私の様子に異変を感じ、心配そうに気使ってくれた。でも、どう答えればいいんだろう。あのヒトが時限爆弾を掛けて私たちを閉じ込めようとしたなんて。今こんな状況でそんな爆弾発言していいのだろうか。


「ん、うん、え、えっと……」


 気後れして口ごもる私の背後から、空気を読むと言うことを知らない、とんでもなくダイレクトな爆弾発言が炸裂した。


「おい、アーミー言ってやれよ。どっちかわかんないけど、趣味悪りぃ赤鎧の男に肩を突き飛ばされた上に、目の前で時限爆弾かけられて、ダンジョンの入口共々吹き飛ばされそうになったってさ」


 確認しなくてもわかる。今のはサクヤだ。なんでそんなはっきり言うの!? 非難がましく振り返ろうとした途端、


「何!?」「なんですって?」「ほ、本当なのぉ〜? アーミィー??」


 オウルさん、ラーテルさん、レトのが驚愕した声があたりに響き、一斉にこちらに視線が集まる。う。ううどうしよう。みんなにはこれから話すつもりでいたから、何が起きたかまだ話していなかったんだもの。きっと今、ものすごくびっくりしてるよね。


 それに……あの団員さんだって、みんなに責められることになっちゃうし……。


 もう! だから今言うか迷ってたのに……上目遣いでサクヤを見上げると、なぜかしたり顔で深ーくうなずいている。「言わないでどうする、言って当然!」というかのような憎らしいしたり顔だ。でもいくらサクヤを責めても、言っちゃったものはもう、取り消せないもの……皆に視線で「説明を早く!」と急かされ、私は渋々起きたことを話そうと顔を上げ……ん?


「貴様! ……は…しが…がう」「ち、違う……、いや、も、申し訳ありません!」


 いきなり彼方から切羽詰まったやりとりが聞こえ、私は慌てて顔を上げた。バルトさんが、灰色の男性の首のあたりをつかみ、噛みつくように怒鳴りつけている。


 で、でも今、貴様って言った後、何か言いかけて……。


「って……うにゃにゃにゃにゃ!? お前は!?」


 よく聞こうとそばだてた私の耳に、今度はソロルの騒々しい声が飛び込み、何も聞こえなくなってしまった。お次は何? 訝しくソロルを見ると、彼女の黄色の瞳の中の瞳孔が細くなり、半身を引いて逃げ腰で慌てふためている……。彼女の視線の先は、私? じゃなくてその背後。恐る恐る後ろを見ると、サクヤがニヤリと笑い片手を上げた。


「よ! シスコンネコ娘! 久しぶりじゃん! 姉ちゃん、相変わらず元気にヒステリックしてる!?」


 サクヤ!? この子の知り合いなの? 私が問い詰めるより先に、ソロルの絶叫が森いっぱいに広がった。


「ど、ど、どどどどど、どうなってんのにゃ!?」


 そして……え、ええええ!? ソロルはそのままサクヤから視線を外し、当て付けるようになぜか私を睨む。た、確かに彼を目覚めさせたのは私だけど……。


 レトとラーテルさんからは事情の説明を急かされるし、ソロルからは無言で非難されてるし。サクヤは、ニヤニヤおかそうにこの状況を楽しんでいるし。一体何からどう説明すれば!? と、私は頭を抱えその場に座り込んでしまったのだけれど……。


 


「バルト! 何をしている!?」


 こちらのバカ騒ぎを諌めるように、オウルさんの怒声が辺りの空気を引き裂いた。私たちは驚いてオウルさんの視線の先、バルトさんと、向かい合い立ちすくむ騎士団員に目を向けた。


 それが合図であったかのように、バルトさんが動いた。


 バルトさんから突如、鳥肌の立つ、寒々しい気がゆらめき立ち、今まさに逃げようとした団員の腕をつかんだ。そのただならぬ雰囲気に私が息を飲むと同時に、ラーテルさんの制止を求める声が上がる。


「いけません!」


 しかしバルトさんはそれを振り切り、驚くような速さで空いた右腕で腰に穿いた短剣を抜き、団員の男の首にその刃を突きつけた。背の高いバルトさんは恐怖で目を見開いたままの彼を見下ろし、殺気を押し殺した低い声をもらす。


「騎士団の名に泥を塗るとは……ここで命を持って償ってもらおう」


「お、おやめ下さい! ど、どうかお許しを! ご慈悲をバルト様!」


 短剣が彼の首にわずかに食い込む。すぐさま首筋から赤い血が一筋、彼の首元へ滴り落ちた。団員は恐怖にうち震え、立つのもままならない様子。このままじゃ、理由もわからぬまま、彼は殺されてしまう。そんなの絶対にダメ!


「やめろ! バルト!」「お願い! やめてください!」


 オウルさんと私は同時に叫び、バルトさんを止めようとした。しかし全く効果はない。こちらを見向きもせず、迷いも見せず、彼は短剣の刃を横に滑らせる……! 噴き上がる血飛沫が見えたような気がして、私は思わず強く目を閉じた。


 ーーその瞬間だった。

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