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My らいとにんぐ ♡ Lady 〜落ちこぼれケモミミ魔法娘がダンジョンでチート少年を救うまで〜  作者: 九重 ゆめ(元佐伯 みかん)
第4章 落ちこぼれ少女と訳あり少年
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助けてラーテルさん!?

「ラーテルさん!!」


 通路を猛ダッシュでかけ抜けたその先、ああ! 涙があふれてくるほど大切な友人、黒い鎧姿のラーテルさんの後姿を認め、私は力一杯叫んだ。


 


「あ、アーミー!?」


 彼女は私の名を呼び、こちらを振り返ろうとし……何かと気づいたように止めて、前に向き直った。通路の先でうごめく真っ黒くて太い何か……。それを木槌を両手に掲げ、渾身の力で受け止めたのがこちらからも見えた。


 ずぅうぅんっと、凄まじい打撃音が通路いっぱいに響き渡る。


「アーミー! こちらへ来てはなりません!」


 彼女のひっ迫した声に、私は飛びつく2歩手前で立ち止まる。


 通路の向こう側。こちらへ真っ黒な腕を伸ばし彼女を握りつぶそうとしているのは……悪魔の眷属だ。狭い通路の前にしゃがみ、こちらをのぞき込みながら、太い腕を伸ばしている。彼女は受け止めたその腕を、


「はあああぁっ!」


 気合一閃、押し戻し、生じた一瞬の隙をついて、ヤツの肘の辺り、関節に狙いを定め木槌を振り下ろした。ラーテルさんの渾身の不意打ちに、バランスを崩した眷属が膝を折り、ドオッと音をたてて、前のめりに倒れ込む。


 ああ……一ヶ月前のあの時のヤツとそっくり……そう思った途端、私の身体はガタガタと芯から震えてくる。


 でも大丈夫! 今は心強い味方がいてくれるもの!


「サクヤ、ラーテルさんが危ないの! お願い!」


 私は両手を合わせ祈るように、隣で、呆然と立ち尽くすサクヤを見上げた……んだけど。


「え!? いや、ちょっ……いきなりあれを殺れって言われても」


 え、ええええ!? さっきまでの威勢はどこへやら、挙動不審に後ずさって、さらに完全に視線が泳いでるじゃない! もう〜! 口ばっかりなんだからあ!


 あきれ果て、心底がっかりした私の気持ちが伝わったらしい。彼は焦ったように首を振り、突然私の両肩を強くつかみ、顔を覗き込む。な、な、なんなのこれ!? またこのパターン!? 彼の金色の瞳が次第に怪しく光りを帯びる。


「いつもならあんなの一発よ? けど今は寝起きで力が足りない! アーミー! ここはもうディープなキスで迅速かつ確実にパワーチャージするしか方法が……! ぐふ!」


 刹那、彼が左の方向へ吹っ飛んだ。びっくりしてよくよく見ると側面から放たれた、ラーテルさんの右ストレートがダイレクトにキマったらしい……。


 ……ラーテルさんそういえば男嫌いだから。


 壁に激突してそのまま崩れ落ちるサクヤ。大丈夫かな。そっーと様子を見下ろし伺う私の背後から、


「無抵抗、かつ、か弱い女性にセクハラを働くとは……女の敵! 汚らわしい! 許せません!」


 私の大好きな凛とした声が響いた。とりあえずサクヤはそのままに、後ろを振り向く。


 そこには……ラーテルさんが肩で息をしながら立ていった。


 黒い鎧はあちこちかけて、顔も擦り傷や打ち身の跡が見える。けれど生きてる。ラーテルさんも生きててくれたあぁ……!


「ラーテルさんーー!」


「アーミー! ああ無事でよかった……信じていました……ほら泣いている暇はありません。最後のアレを倒さなければ」


 思わず抱きついて泣き出しそうになったところを、ラーテルさんに肩を抱かれ止められる。え!? あれを一人で倒す!? そんなの無理だよ! 何より大きすぎるもの。頭を狙うにしても、近づくのに相当な危険。素人の私だって無理だってわかる。


「ラーテルさん! 一人でなんてダメです! 死んじゃう!」


 私に背を向けようとしたラーテルさんの腕を、力一杯つかんで止める。でも彼女が本気を出せばこの腕は振りほどかれてしまうに違いない。どうしよう。イヤだよそんなの!


「いや、セクハラじゃないから! 純愛だからね!? そ、それはともかくアーミー、あれはヤバイ。マジヤバイ。充電しないと倒せる気がしない」


 って! サクヤの声が足元からした。どうやら無事だったみたい。ラーテルさんの容赦ない一撃を受けた左ほほをさすり、よろよろ立ち上がる。


 それをラーテルさんは氷のように冷たい視線で見下ろす。


「あなたが助っ人ですか? 人を選んでる場合で無かったかもしれませんが……不審者にアーミーが何かされるぐらいなら、私が倒します!」


 ラーテルさんはサクヤを、手出し無用とばかり睨みつけ、私の腕を容易く外すと、通路の前に仁王立ちになる。ダメだって言ってるのに! 今だってかなり息が上がってる。疲れ果てたラーテルさんが大ケガするのは時間の問題だ。


 ……どうしよう。私は頭を抱えた。


 確かにサクヤはパワー不足なんだと思う。そのためには彼に私の力を渡すしかない。


 でもキスはしたくないし……それ以前にキスなんてしようもんならラーテルさん、サクヤを瞬殺しかねないもの。


 チカラ……キスなしに、彼に力を分け与える方法。私はじっと自分の手のひらを見つめる。手のひら? そ、そうだ!


「そっか!」


 私は声をあげて手をパチンと打って合わせ、精神を集中させた。私が使える唯一の魔法。これを自分じゃなくてサクヤにかけてあげれば……!


「ライトニング、スピード! サクヤ! 手を貸して!」


 全身を駆け抜けてきた魔力が手のひらに集まり、ピリピリとした痺れが次第に強くなる。その状態で左手でペンダントを、右手で差し出された彼の手を握った。


 ふっと、また力を吸い取られる感覚にとらわれ、彼の体が一瞬淡く光る。うまく力を渡せた……かな?


「なるほど、これならいける……!」


 サクヤは自分の両手を見つめ、私を見てうれしそうに声をあげた。私もにっこりと笑ってうなずき返す。


 彼はラーテルさんの横に立つと、左手を今まさに立ち上がろうとした悪魔の眷属のまるい頭に向けて振り下ろした。


「特に呪文は要らないけどせっかくだから、激しく愛して! ラブ・ミー・サンダー(・・・・)! なんつって!」


 ダンジョンの天井付近。虚空から突如として生まれる雷の塊。


「な!?」


 ラーテルさんがあげた、その声をかき消し、先ほど壁を壊した時の数十倍はありそうな太い雷の束が、轟音をたて、眷属の頭に直撃した。ビクッと全身を痙攣させ眷属の動きが止まる。と、コロリと奴の頭が胴体から取れ、その場に甲高い音を立てて転がった。頭が亡くなったことで、力を失った眷属の体が、地響きを立ててその場に崩れ落ちる。


「やったあ! サクヤ、ありがとう!」


 倒せた! ラーテルさんを、みんなを助けることができた! うれしくてうれしくて、私はサクラを見上げてお礼を言った。彼がまぶしそうに私を見下ろし、大きく腕を開く。な、なんで近寄ってくるの!?


「アーミーのためなら、こんなのどうってことない。さあ、オレの胸に飛び込んでおいで! 全力でモフモ……」


 こ、これは逃げられない! 誰か助けて! 身体を強張らせ、強く目を閉じようとした時、ラーテルさんの木槌の柄が彼の膝裏を薙いだ。「フをうっ!?」 ってマヌケな声を上げ、崩れ落る彼の後ろから、静かにたたずむラーテルさんがそっと手を広げる。


「アーミー!」


 ラーテルさん……。うわぁああああん! 


 私は倒れるサクヤをまたいで、ラーテルさんにしがみついた! 彼女の首に腕を回し抱きつく。あったかい……生きてる……生きてるんだ! よかったぁあ。


「よかった、ひっく……無事でよかったぁ。ラーテルさん、良かったぁ」


 ラーテルさんたちと別れてからのことが一気に思い出されたのと同時に、仲間全員が無事だったことに心から安心したこともあって、私はわあわあと身も蓋もなく泣き出してしまった。


「アーミーも無事で安心しました、何度も爆発音があって、とても心配したのです」


 そんな私をラーテルさんはしっかりと抱きしめ優しく髪を撫でてくれる。


「でもずっと信じていました。アーミがーが助けてくれるって。だから頑張ろうって。ありがとう、アーミー」


 ああ……私を信じていてくれていたなんて。なんてうれしくて、優しくて、あたたかい言葉なんだろう。私はかつて感じたことのないほど熱い何かに心が満たされるのを感じる。命をかけて私のことを信じてくれる友人がいるって……なんて素敵なんだろう。うれしい……。


「ラーテルさん、ありがとう、ございます」


 この気持ち、なんて伝えればいいのか、言葉にならなくて。私はまっすぐとラーテルさんの瞳を見上げて、そう伝えた。ラーテルさんはそれだけでわかってくれたみたい。優しく微笑み小さくうなずいてくれる。良かった。伝わったみたい。


「……なにこの展開。キミら百合なの? 話が違う……」


 って! もうサクヤってばまた、茶化したりしてぇ! ムッとしつつも恥ずかしくなり、困った顔で彼を見下ろすと、ラーテルさんも私を離し、下に転がるサクヤをまさに汚物を見るような視線で見つめ、


「アーミー、コレは?」


 そうたずねた。ああ。そういえば、ラーテルさんにサクヤの紹介をまだしてなかったよね!


「あの、これはサクヤって言って、オウルさんのおっしゃってた友人らしいんです。彼、色々助けてくれて。でも長い間寝てたからか……ちょっと」


 女性に飢えてる……なんてとてもじゃないけれど恥ずかしくて言えない。けどラーテルさんは何かを察したらしく、ギラリっとアメジスト色の瞳を光らせ、


「なるほど……」


 そう低い声でつぶやいた。う、うーん、余計なこと言っちゃったかなあ。


「アーミー、オレもかっこよかったでしょ? だから、せめて3秒でいいから! モフっと、ムギュウ〜させて!」


 さっきからラーテルさんの決して軽くはない攻撃を受けているハズなのに、どこからその元気が出てくるのやら。ジャンプ一番飛び起きると、私に迫ってくる。


「い、イヤです!」


 確かにカッコよかったとは思う。でもだからと言ってよく知らない人とハグしたり、キスしたりなんて考えられない! 私がラーテルさんの後ろに隠れてそうハッキリとお断りすると、


「オレ、もう一回寝てこようかな……」


 がっくりと肩を落とすサクヤ。言い過ぎちゃったかな……なんてちょっと胸が痛んだその時だ。後ろから長い紺色のローブを羽織った背の高い人影が現れ、


「いい年して拗ねてどうする」


 そう声をかけた。私はサクヤの後ろにため息まじりで佇む背の高い男性を見上げた。あ、ああ〜〜〜〜!


「オウルさん! もう大丈夫なんですか?」


 私が叫ぶと、オウルさんの影からカンテラ片手にレトがひょっこりと顔を出し、こちらに向けてピースする。オウルさん、立てるまで回復したんだね! さすがレト、すごい、すごいよ! そんなレトを見下ろしながらオウルさんは微笑み、続ける。


「レトのおかげで傷も癒えた、意識が回復したよ。ラーテルも、アーミーも。怖い思いをさせてしまって申し訳ない。本当にすまなかった。そして……私の友人まで救ってくれてありがとう……」


 私たちの方に歩み寄ってきたオウルさんは、無事を確認してホッとして涙ぐむラーテルさんの肩にそっと手を置いた。ラーテルさんは、うつむいたまま何度も頷く。オウルさんのこと、すっごく心配してたものね。よかったね、ラーテルさん! 


 って! 


 ラーテルさん、オウルさんに肩を叩かれても全然嫌がってない! きっと安心しきっちゃって嫌がるのを忘れてるのだろうけど……なんかさっきのサクヤへの対応とあまりに違いすぎて違和感を感じちゃったよ。


「色々あったようだが、コレがいれば外へ出れるはずだ。さあ、行こう」


 オウルさんが、珍しくイタズラっぽい表情と声でサクヤを振り返り声を掛けた。


「こ、これって」


 ものすごく不満そうなサクヤを見て、私たちは思わず吹き出して笑ってしまった。ずっと忘れていた明るい笑い声がダンジョンいっぱいに響き渡る。


 そうだ! もうこのダンジョンに用はないものね。さあ! 光溢れる外の世界へ! 急いでここを脱出しよう!


 

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