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My らいとにんぐ ♡ Lady 〜落ちこぼれケモミミ魔法娘がダンジョンでチート少年を救うまで〜  作者: 九重 ゆめ(元佐伯 みかん)
第4章 落ちこぼれ少女と訳あり少年
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鳥のクチバシで眠るもの(2)

「あ〜ぁ、やわらかで、スベスベで……やっぱ女の子ってサイコウ……! って、あれ?」


 しゃ、しゃべった!? 


 内容がちょっとキモチワルイのはおいといて……死んだと思っていた人が急にしゃべった! びっくりした私は台座から飛び退った。しかしこちらには気付かず、目を覚ました少年は上半身を起こし、背伸び一つ。胡座をかいて辺りを見回している……。


 うう〜。見つかったらど、どどどどう反応すれば? 


 動揺し慌てふためく私の姿をついに、男の子の視線が捉えた。暗闇に際立つ珍しいアンバー色のアーモンドアイが、夜空に走る雷みたいに鋭く光る。「驚異的な破壊力」……オウルさんの言葉が不意に思い出される。私は緊張で恐怖で、目を見開いたまま、少年の顔を見つめたままフリーズしてしまった。


 と、と、とにかく力を貸してくださいってお願いしないと!


 でも……いきなり問答無用で攻撃されちゃったりしたら……?


 オロオロしまくる私と視線があうと、彼の目が一瞬にして驚きの色に染まった。怖い! 思わず両手で頭を抱えようとした私に投げかけられたのは……。


「も、モモちゃん!?」


 聞いたこともない人の名前だ。私は頭を両手で押さえたままキョトンと彼を見上げた。


 も、モモちゃんって誰? 


 でもこちらをのぞき込む彼は、私の答えを今か今かと待ち構えているようだ。金色の澄んだ瞳はキラキラと輝き、にっこり笑いかける口元からちらりと八重歯がのぞいている。


 こう見るとあどけなく可愛らしい印象の男の子だけど、ゆ、油断はできないよね。でも私……モモなんて名前じゃないしなあ……。


「あの……。ごめんなさい。人違いです。私、アーミー=S=トニトルスっていいます」


 ウソはつけないもの。私はかすれた声で正直に答えた。違う!? と逆上するかと思いきや……目の前の男の子は意外にもポンっと手をうち、そっか、そうだよなあ。と深ーく納得している。


 はぁ。よかった……脱力しそうになったところを、再度、少年がぐっとこちらへ身を乗り出した。そして。え? ええ? こちらの顔を食い入るように覗き込んでくる。


 なななななに? なんなの!? 本能が危険を訴えてくる。なんかギラギラしててすっごくコワイ……。


「ヤバイ、マジヤバイ。白い耳に、ふわふわのシッポ。目はクリクリ真っ黒で……フェレット!? いや、オコジョのネオテールじゃん。ぃよし!! ヒロインガチャSSキターー! しかもちっちゃくてカワイイ! ドストライク! 超好み! すげぇえ好み!」


 う、うーん。こちらを無視して一人でガッツポーズしたままずーっとしゃべってる。彼、大丈夫かなぁ。やっぱり頭を強くうってるのかもしれない……。


「『私は色ごとに興味はないからね』、なーんてすかしてたクセにダンナ、やるときゃやるじゃん」


 どこかで聞いたような人物のモノマネをひとしきりして気が済んだか、少年は、はたと気づいたよう辺りをぐるりと見渡した。


「いやしかし、ここどこだ? 天蓋付きのキングベッドは? 宮殿は? 部屋を埋め尽くす美女のお付きは? あのやろう! やっぱ話が違うじゃねぇえか!」


 い、いけない! さっきから彼の怒涛のペースに流されっぱなしだったけれど、私も彼に聞きたいことや、話したいことがいっぱいある。と、とりあえずぐっとお腹に力を入れ、


「あ、あの……! あなたは悪魔なんですよね……? 私のこと殺そうとしないんですか……隣の眷属たちみたいに」


 強く拳を握りながら、勇気を出し彼に声をかけた。少年が弾かれたようにこちらを見つめる。


「アクマ? あ、あぁ……、オレ、そういうことになってんのか」


 そう答えつつ、彼は大げさに首を横に振る。


「確かに、オレ、君の言うアクマってやつなんだろうけど、可愛いは正義! キミの味方よ? その証拠にだいぶ前だけど、すぐそばの部屋にいた趣味悪い兵器の方は、ぶっ壊してあったでしょ」


 兵器っていうのは、さっきの悪魔の眷属のことかな。それよりも……。


 「キミの味方」


 その言葉が強く大きく私の耳に響く。彼は私の友人たちを助けてくれるかもしれない! そう思うと期待と安堵で心が満ちていく。気が緩み私は大きくため息をついて、思わずうつむいてしまった。


 それを気分が悪くなったととったらしい。今度は少年の方が慌てふためき始める。


「ってか、どしたの? 気分悪い? そんなに汚れちゃって……ケガしてるみたいだし……大丈夫?」


 突然思いもよらぬ優しい声をかけられ、私は顔を上げ、まじまじと彼を見つめた。軽そうなヒトだから、口から適当言ってると思いきや……心底心配そうにこちらをのぞき込む彼の表情。その優しさに触れた瞬間。


 私は張り詰めていた緊張の糸が完全に切れてしまった。


 初対面の、しかも歳の近い男の子の前で泣くなんて恥ずかしい! でも両目からポロポロと大粒の涙がこぼれてしまう。「突然泣いて、ごめんなさい」って謝ろうとしたのだけど、言葉がうまく出ない。ひっくひっくとしゃくりをあげて泣き出してしまった。ああもう、泣きたいわけじゃないのに! ちゃんと話をしなくちゃいけないのに。


「だ、だだだだいじょうぶ? と、とにかく落ち着いて、ほら、何があったか話してみ」


 涙でよく見えないけど、目の前の少年は明らかに動揺している。しばらくうまく話せなかったのだけど、精一杯頑張って手の甲で涙を拭き、ポツリポツリとレトやラーテルさんと別れてからのことを話しだした。


 彼は私の話を、あぐらをかいたまま、真剣に聞いてくれた。しかしだんだんと顔を伏せてしまう。なるべく客観的に、冷静にを心がけたけど、愚痴になっちゃったかな……。愚痴なんて寝起きに聞かされてもつまらないよね。そう気付くとなんだか自己嫌悪に陥って、私も思わずうつむいて口を閉じてしまった。その途端だ。


 彼が憤怒の表情で、急にその場に立ち上がった。


「わかった……! 俺のモモ……じゃなかった、メインヒロインのアーミーちゃんを、そんな目に合わた趣味悪い赤鎧を、今すぐこのダンジョンともども、どてっ腹に風穴開けて……殺る!」


 う、ウソでしょ!? な、なんかとんでもないことを言い出してる! 「驚異的な破壊力」。また、オウルさんの言葉が頭の中をぐるぐると駆け回る。と、止めなくっちゃ!


「なんてことを言うんですか! ダメですゼッタイ! そんなのダメ!」


 身を乗り出して必死に彼の足をつかみ、一生懸命彼の顔を見上げて首を振った。


「何で? ぜーんぶそいつのせいでしょ? ならそれ相応の報いを受けてもらおーか!」


 なんでだろう? なぜか私より彼の方がカンカンに怒ってるみたいだけど。


「あの人にも何か理由があったかもしれないし、勘違いしているかもですし。それに誰かがケガするの好きじゃないんです。ちゃんと話したら分かり合えるかもしれないから……」


 少年は私の言葉に、心底渋々という体でため息をついた。そして私を見下ろす。


「え〜、アーミーちゃんが、そこまで言うならやめるけど。じゃあオレ、この行き場のない怒りをどうすればいいの?」


「助けてほしいんです。仲間と上司を! その人たちはこの壁の向こうにいて、きっと今この時も眷属たちに襲われている……早く助けないと、もし何かあったりしたら私」


 私はこの小部屋の端、鳥の右半身に繋がっているであろう壁を指差し叫んだ。同時にレト、ラーテルさん。そしてオウルさんのことを思い返し、不安でまた涙があふれそうになる。でも泣いてばかりじゃダメだ! 私が出来ることをやらなくちゃ!


「お願いです、力を貸してください。お願いします!」


 私は深く頭を下げた。なんて言われるか……胸が痛くなるほどドキドキ鼓動が早鐘を打つ。数秒のはずだけど、何分、なん十分と感じる長さ、私はずっと頭を下げ続けた。のだけれど……。


「かわいい……性格もカワイイ……キュンと来た」


 なんとも間抜けな声が返ってきて、私は全身から力がガクッと抜けつつ、呆れて顔を上げた。


「よし! 決めた! ついさっきまで辛気臭い野郎の部下やってたけどやーめたっと! 久しぶりに再起動したし、新たに目を覚ましてくれたキミの眷属になることにしよーっと」


 け、眷属!? 私、悪魔じゃないんだけどなぁ。うれしいとか、イヤだとかそういう感情よりも、単純に困ってしまって、なんて返答しようか戸惑いながら彼を見上げる。でも少年自身はこっちの困った様子なんて気にもせず、屈伸したり、準備運動に余念がない。


 と、とりあえず助けてくれそうだから、素直にお願いしておくのが正解かな……。


「と決まれば取り急ぎ、この壁を吹っ飛ばせばいいってわけね」


 彼は壁に向けて手を突き出し。ふと首を傾げた。まるで魔法をかけようとして、魔力がないことに気づいた。そんな感じだ。くるっと私を振り返る。


「さしあたってアーミーちゃん。力を貸して。さっきしてくれたみたいに俺の手に握ってくれる?」


 少年が私の目の前にしゃがみ込み右手を差し出した。私はその手に自分の手をそっと重ねる。しかし彼は不満げに首をかしげる。


「んー、なんかイマイチだなあ……さっきよりエネルギーが弱い」


 あ、もしかして! 自分の首にかかっている形見のペンダントを右手で握りしめる。星型のペンダントがキラキラとレモン色に輝き始める。そして彼の手を握りしめた。パッと少年の顔が輝く。


「お! 来た来た! なるほど! それ電気石(トルマリン)か! それのおかげでキミの雷属性の魔力が増幅されたってわけね。よし……これならいける!」


 雷の属性?? 自分の魔法の属性について、そんな風にハッキリと言われたのは始めただ。私の魔法って雷の属性があったんだ……。ずっと「変な魔法」とだけしか言われたことなかったら、知らなかったよ。


「さあ! アーミーちゃん! キミの仲間を助けに行こう!」


 少年が私の手を握り、引き起こしてくれる。私は立ち上がって、


「はい! あ……」


 そう返事して、彼の名前を呼ぼうとして……初めて気がついた。そういえば私、自分の名前は名乗ったけど、彼の名前をまだ聞いていなかったじゃないか。


「あ、あの、待ってください、あなたの、お名前を教えてもらえますか?」


 私の問いに、彼も気がついたように振り返る。そして早口で、


「名前? 俺はシャク……ラ」


 と、答えてくれた。え? よく聞こえなかった。


「え? サクヤ?」


 そう聞き返す私の言葉に、彼は一瞬否定するように首を振ろうとして、動きを止めた。そして心底うれしそうに何度もうなずきかえす。


「あ、そうそう。そっちのほうがヒトっぽくていいや、そう! サクヤ! ヨロシク!」


 私は彼と向かい合った。よかった。これでみんなを助けることができるんだ。


 あたたかい気持ちが心の底から満ちてくる。サクヤがこわい悪魔じゃなくて、オウルさんの言うように優しい頼りになる人で本当に良かった。


「ありがとう……サクヤ。本当にありがとう……!」


 私は心のままに、彼の手のひらを両手で握り、彼の目をじっと見つめながら、精一杯お礼の気持ちを伝えた。つもりだったんだけど……。


 え?? サクヤってば、ど、どうしちゃったんだろう? 目を細めて……な、なになになに?? また、なんか目つきがコワイ。しかも妙な雰囲気なんですけど!?


「うーん。でもやっぱりパワーが足りないな。寝起きだしなぁ」


 いきなり私は、彼に両肩を優しく、でもしっかりとつかまれる。さらに、ちょっと何!? 顔近づけ過ぎじゃない!?


「アーミーちゃん、どこかのラノベじゃないけれど、オレとキスで契約&充電……」


 な、何それ?! いくら助けてくれたからといえ、初対面の人となんて絶対イヤ!!


「ご、ごめんなさい! 私他に好きな人いるんで!」


 ゴツっ!! 痛っ!?


「いってえええええええ!」


 動ける範囲で目一杯頭を下げて謝ったつもりなんだけど、間が悪かったみたい。私の渾身の頭突きを受けたサクヤはそのまま後ろにひっくり返り、台座の向こうへと転げ落ちた。


 私もしゃがみこんで、自分のおでこをさする。うう〜いたたたた、こっちも相当のダメージ……。でも、た、助かったぁ……私のファーストキス……。


 って。いきなり初対面でキスなんて、この人一体なんなの!? チカン!? いやもしかして、こんなところにずっと一人でいたから、欲求不満になってるのかな? 


 そう考えるとちょっと可哀想だけど……。


 黙って立ってれば絶対モテるはずなのに。コワイやら、ムカつくやら、呆れるやら……私は額を押さえながら、あっちで痛がってるサクヤを見下ろしつつ、深ーいため息をついた。


 なんだかなあ……もう!

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