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My らいとにんぐ ♡ Lady 〜落ちこぼれケモミミ魔法娘がダンジョンでチート少年を救うまで〜  作者: 九重 ゆめ(元佐伯 みかん)
第4章 落ちこぼれ少女と訳あり少年
32/42

残骸散らばる墓場と押し寄せる葛藤

『ダンジョンはむやみに進んではならない。あたりに気を配り、ゆっくり進むこと』


 オウルさんの言葉を思い出しながら、私は目の前に開いた穴に、ゆっくりと手をかけた。


 目指すは鳥の右半身。出口のある最初の部屋と対照的な位置にある、壁一枚隔てた隣部屋だ!


 穴を崩さないように、身をかがめてそーっとくぐり抜ける。そしてゆっくりと中へと踏み込んだ。ううう。緊張する……またミミズが出てきたらどうしよう……!? 


 口から心臓が飛び出ちゃいそうになりながら、ペンダントの光を頼りに、立ち止まり静かに辺りを見渡してみる。


 やっぱり! 想像していた通りだ……今来たミミズ部屋とそっくりな作り!


 詳しく計測したわけじゃないけど、部屋は大体同じサイズ、同じ形をしている。もちろんシンメトリーになっているけどね。ということは隣室もきっと同じように作られているはず! 出口もあるに違いない!?


 こちら側は壁で隔たれていたからか爆弾の影響は受けていないみたいだ。とにかく駆け足で隣の部屋に踏み込んだ。入口付近で一度立ち止まり、キョロキョロと辺りを見回す。よし、原生生物はいない。それと……こちらの部屋には台座、壁画はないみたいね。


 それはそうと、とりあえず出口を探さないと!


 安全を確認し終えてすぐさま、部屋の奥。一番南側の壁面へダッシュする。お願い! 外への出口がありますように!


 


 …………!?


 淡いレモン色の光に照らし出される壁。立ち止まる私の目前には、無情にも大きな壁が立ちはだかっている。ど、どこか端に穴はない? 端じゃなくても、別の場所に!


 予想外の展開に、カッと身体が熱くなり、冷や汗が噴き出してくる。私はその壁のあちこちに手をつき、出口を探した。北側がダメなら、東側……壁面にずっと手を這わせてあるハズの出入り口を探す、でも……。


 無い……出入口がない!


 この部屋の壁は、一枚岩のようなもので出来ている。硬く滑らかな岩肌が部屋全体を覆い尽くし穴などない。ただずっと岩壁が続いているだけ……私はその滑らかな壁面にこぶしを当て、思い切り殴りつけた。


 何度も、何度も、何度も……!


 行き止まりだ。ここに出口はないんだ……傷ついた指から血があふれ出す。私は壁の前に、膝から崩れ落ちた。


 もう爆弾も残っていない。方法は思いつかない……完全に行き詰まってしまった。私たちはここで死んでいくしかないのかな……ごめん、ごめんね、みんな。


 私が使える魔法が、「足が速くなる」なんてものじゃなくて、もっと強力なものだったらみんなを助けられたかもしれないのに……こんな壁吹き飛ばして、みんなを助けてあげれたのに。自分の無力さを心の底から恨み、私はもう一度壁を手で殴りつけた。


 力があれば……! 私にこの壁を破壊できるような力があれば!


 ……チカラ?


『……ここに眠る私の古き友人は悪魔だが……彼は確かに驚異的な破壊の力を持っている』


 オウルさんの言葉が不意によみがえり、私は顔を上げた。


「……破壊の力」


 そっとつぶやいてみる。みんなを助けるには出入口に塞がる岩や土砂を吹き飛ばし破壊する必要がある。その力を手にいれられるなら……?


 私は部屋の奥。北側の方に目をやった。


 そして……立ち上がると、吸い込まれるように北に向かって歩き出した。


 歩きながら考える。オウルさんの話、信じていいのかな……?


 私たちを騙したような人を信じていいのかな?


 頭の中で答えの無い疑問が何度となく繰り返される。オウルさんがいうに、その破壊の力を持った人は味方だって言った。でも、もし違ったら? またウソだったら? それを起こした瞬間に私は殺されてしまうかもしれない……だって!


 私の知っている悪魔の眷属は、殺戮しか興味がない、無感情で残忍な恐ろしいバケモノだ。そんなのを起こしてしまったら世界はどうなっちゃうの?


 ずきんずきんと胸が痛む。焦りと罪悪感、恐怖に苦しくて気持ち悪くなってくる。でも……私の歩みは止まらない。


 そんなヤツを起こして、王国の人に罪に問われたとしても、私はやっぱり大切な友人たちを助けたい。気付いて何もしないままいたら、きっと私は死ぬその時まで絶対後悔するだろう。だから……。


 その思いだけが私の足を動かしている。


ーーふっと気づいた時には、あちらの部屋と同じように、黒いオーブがはめ込まれた壁の前に立っていた。


 これが鳥の右目……私はオーブにそっと触れてみる。「リョウノメニウツスベカラズ」とあった、もう一つのオーブ。これをこの先の台座にはめ込めば、封せし者(フウセシモノ)が蘇るに違いない。


 この部屋の先には、さっきみたいに悪魔の眷属がうようよいる……。


 私は大きく息を吸う。もう一度自分の胸に尋ねてみる。


 今、眷属を止められるオウルさんはいない。それに、ラーテルさんのように戦力のない私は、ここで悪魔の眷属に襲われて死んでしまうかもしれない。でも……そうだとしても! 


 私は最後まで二人と一緒に戦いたい!


「ライトニング・スピード!」


 自分を振るい立たせるように声を張り上げる。私は両手で太ももを打った。同時に壁に埋め込まれたオーブに手をかけ、先ほどのオウルさんのように右にひねる。オーブが壁から外れるや否や、土臭い風とともに、あの時と全く同じ様子で扉がゆっくりと開いていく。


 すぐにここを飛び出して、眷属が混乱してる間に、あちらの部屋に行かなくちゃ!


 私は襲いくる眷属の合間を縫って、隣の部屋まで駆け抜けようと、オーブをリュックにしまい、すぐ様身構えた、のだけど……。


 足を踏み入れた途端、予想していたのとは全く違う光景が目の前に広がり……私は思わず、そのまま立ち尽くしてしまった。


 そこに悪魔の眷属はいなかった。いや、実際はいるのだけど……。


 どれも手足がもがれ、バラバラになった身体俄地面に投げ出されている。中には胴体に穴が空いているもの。頭がなくなっているものまである。私より先に何かが眷属を倒したに違いない。でもそれにしても……あまりにも残酷な様相に胸が痛くなってくる。


 もしかして例の破壊の力を持つ者がやったってこと?


 私はゴクリと息を飲んだ。


 やっぱり……起こしちゃダメなんじゃ。私は立ち止まる。でも起こさないとみんなを助けられない! そう思いなおし一歩踏み出す。起こしちゃいけないという気持ちと、いや、それでもオウルさんを信じて起こすべき、という葛藤が何度も何度も胸の中で繰り返される。


 私はためらいながら眷属たちの墓場を歩いていく。数度立ち止まったけれど、決し手後退りはしない。でも、でも私……。


 ……コツ。


 しまった! つい考えごとに夢中になって、足元の注意がおろそかになっていた。私は何かに足を引っ掛けて、その場に……ベシャッと顔からうつ伏にすっ転んだ。イタタタタタ……。


 どうやら取れた眷属の体の一部に足を引っ掛けてしまったみたいだ。同時に、右手が眷属の冷たくすべすべした身体の部分に触れている……!?


 ……え?? なに!? 


 触れた指先がら急に力が抜ける。こんな気味の悪い感触、初めて! 私はとっさに指を引っ込めた。


 しかし……遅かった!? 


 倒れていた眷属の小さい丸い頭が一瞬光る。そして……長い片腕をうねらせながら、ギシギシと軋むような音を立て、立ち上がろうとするそぶりをみせる。レモン色の光が照らす滑らかな黒色の肌。壊れていたんじゃないの? ウソウソ……眷属が……目を覚ました!!


 恐怖で声を出すこともできず、私は這いつくばりながら奴から距離を取った。でも片腕、片足ともないその眷属は、それでも無理やり手を使い、身を起こし……光る頭をこちらに向け、ズルリ、ズルリと足を引きずりながら、確実にジワジワと私を追い迫ってくる。


 今、仲間はいない。あの時みたいに格好いいバルトさんもいない……。


 私が奴をやつけるしかない。でも戦うって、どうやって??


「もし、眷属に出会ってしまったら、どうすればいいんですか?」


 私は四つん這いになって逃げながら、寮の庭で研修を受けていた時の、エルクさんとの会話を必死に思い返す。


「そうだな。ラーテルならまだしも、アーミーには奴らを倒すのは無理だろうなあ。ただ」


 エルクさんはナナメ上を見上げ、何か思いついたように、ニヤリと笑い、私を見下ろし微笑んだ。


「足止めくらいならできるはずだ。奴らは腕の付け根、足の付け根といったヒトで言うところの関節の部分に、隙間がある。そこにナイフの刃を差し込んでやれ。しばらく動きを止めることができる。その間にできる限り遠くへ逃げることだ」


 足止め……とりあえずやってみるしかない! 


 私は身体の中に残るありったけの勇気をかき集めて立ち上がった。


 そして、自分より一回りも、ふた回りも大きい悪魔の眷属を振り返る。そのまま全速力で逃げたいのを我慢しつつ、ペンダントを握りしめた。レモン色の光があたりを明るく照らす。その光に照らされた奴の足の関節に……あった! 数センチほどのすき間!


 あの高さなら少し腕を伸ばせば私の身長でも届きそう!


「ライトニング・スピード」


 無我夢中! 私はもう一度自らに魔法をかけ、ナイフを鞘から引き抜いた。


 そのまま奴の、たった一本の足めがけて走り出す。目の端に奴が片方だけ残る右腕を振り上げ、私に振り下ろすのがちらりと見えた。急いで左に身をかわすも……。


 うっ! 


 わずか、かわしきれず。鈍い痛みが二の腕に走った。奴の指先がかすったんだ。ただかすっただけなのに、こんなに痛いなんて…でも歯をかみしめそれを我慢しつつ……私はナイフの柄を両手で掴み、奴の足の付け根にその刃を思いっきり差し込んだ。


 ギチギチと言う音とともに眷属の歩みが止まった。そのタイミングで私は不安定なその足に、力一杯体当たりを食らわす……!!


 奴がゆっくりと地面に倒れていく。でもそれを全て確認している暇はない! 私はダンジョンの奥へと逃げる。


 背後で眷属が背中から倒れる低音が響く。


 その音を背に聞きながら、行き止まりの壁の前で、私はオウルさんがやっていたようにオーブを掲げた。


 早く! 早く開いてーー!!


 ゆっくりと開く扉。その隙間がわずかなうちに、私は中へ飛び込む。


 もう立ち止まり、迷っている暇はない。起き上がった眷属がやってくる前に、なんとかしないと! 


 まっすぐに続く回廊を私はひたすら走り続ける。


 台座のある半円の部屋はもう、すぐ目の前だ……!

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