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やっぱり居るんだね冒険者


 村に一日滞在し、もっと大きい街に行きたいから別れを告げる。


「楽しかったよアザルさん。

またここに来るね」


「はい!是非我が村セシン村へお越しください。

歓迎いたします!」


 村長のアザルさんや村民達に見送られ快晴の空へと飛び立つ。





 村を出て3時間位だろうか。

 街道を見つけ、その街道沿いに気ままなそよ風の空の旅をしていた時、何やら甲高い金属がぶつかり合うような音が聞こえてきた。

 その音は俺が今進んでいる街道の先から聞こえる。


 よく見ると、小汚い野郎共が馬車を取り囲んでいる。


 これは定番のあのイベントだろう。

 ワクワクしながらそのイベントの場へと向かう。


 俺が近づいて来るのが見えたのか、馬車を守る割と若そうな男が顎が外れんばかりに口を開け呆然としていた。


 俺に驚いて隙を作るから攻撃食らっちゃってるよ……。


 とりあえずその男にホーリーヒールを発動してあげる。


「こらー。

何やってるんだお前たちー」


 内心ではかっこ良く決まっているが実際は棒読みだ。

 俺の存在に気がついた全員は剣の手を止め、目を見開きオレを見上げていた。


 そりゃ驚くだろう。

 人間からしてみれば全長5~6mある龍が突然現れたのだから。


「で、馬車の方を助ければ良いんだよね?」


 そう言うと、盗賊と思われる輩共は一斉に逃げ出すが、一瞬にしてこの場に結界ができて逃げられなくなる。


 白い半透明な箱型の結界が大きく俺達を閉じ込めていた。


「必死に剣振っても俺の結界壊せるわけ無いだろ。

なんせ俺の全力体当たりに耐えるんだから」


 呆れながらそう言うと諦めたのかその場に剣を捨て膝から崩れ落ちる。


「そんじゃ次君達ね~。

はいヒール」


 ホーリーヒールが馬車を守っていた若者達を包む。


「ねえ君達、もしかして冒険者って奴?」


 そう問いかけるとブンブンと頭を縦に振り肯定の意を示す。


「やっぱり冒険者か~!!

なんか革の鎧みたいなので着てるし剣持ってるし馬車守ってるって事は依頼かなんかだよね?

うわ~いいなぁ~、俺も冒険者なってみたかったな~」


 俺の言葉にギョッとしていた。




 とりあえず冒険者達は落ち着き、馬車から出てきたフランクな服装の男は俺を見て固まった。


「ねえねえ、あいつ等ってやっぱり盗賊なんだよね?」


「え、えぇ……、まぁ……」


 結界の隅の方で固まって猛獣に追い詰められた子鹿みたいにプルプル震えている。

 厳つい男か顔真っ青にして泣いていても不快なだけだ。


「さっさと拘束して連れて行こ~!!

街に向かってるんだよね?

そこで突き出せば報奨金とか貰えるのかな?」


「も、貰えると思いますけど……」


 近くに居る冒険者の男は俺の存在に引き攣っていた。


 他のメンバー達はこの近くにいる男を気の毒そうに見ながら盗賊を縄で縛っていく。


「俺ディアガン、君の名前は?」


「……サイオス、です」


「そっか、サイオス君よろしくね」


 サイオスと名乗った若い男はエッ!?という顔をして俺を見た。





 俺はサイオス。

 今、俺達は重い空気の中街道を進んでいる。


 さっきまで盗賊に襲われて、人数が多くて殺られる!と思った時にそれは現れた。

 見惚れるような美しい鱗に全身覆われていて、神聖な雰囲気と圧倒的存在感を纏うドラゴンだ。

 頭には二本のこれまた美しい角が生えていて、凛々しい目つき。


「それでさ~、俺のペットのゴブリン達が可愛いのなんの」


 今、俺達についてきてゴブリンをペットにしている話をようようと話している。


 なんと言うか姿形、雰囲気はもの凄く綺麗で神聖なのに中身が残念に思えるのは俺だけだろうか。

 しかも驚いた事に神話に登場する聖龍だという。

 言われてみればそう感じるが……。





「あの、聖龍様はなぜこんな所に……?」


「この国のお偉いさんにビジネスの話をしようと思ってさ。

それに俺の事はディアガンで良いぜ!

それか呼びにくかったらディーでも」


 キリッとキメ顔をしたつもりだけどあまり伝わってないようだ。

 サイオスは引き攣った笑みを浮かべる。


「ビジネスって言ってもただダンジョンを売り込みに行くだけだけどね」


 俺がそう言うと、冒険者の皆と馬を操っている男がグルンと首を動かし一斉に俺を見る。


「えっと、ディアガン様がダンジョンをこの国で見つけて下さって、それを教えに行くって事ですか……?」


「いや?自分のダンジョンだよ。

昨日村に滞在したんだけど面白い話聞けてね。

ダンジョンって結構国として重要みたいじゃん。

だから売り込んで生産チー……んんッ、協力関係になっておこうかなって思って」


「「「「「……えええええええええ!?」」」」」


「いやぁ~でも自分でダンジョン攻略出来ないのってね~。

色んな事が出来るのは楽しいっちゃ楽しいけど人間として冒険者になって冒険者でいろんな人と出会って……ってそういうロマンが欲しかったよ」


 冒険者達も、馬を操る男も、盗み聞きしていた盗賊も青天の霹靂に驚愕し足を止めた。





 もし聖龍様がいう事が本当なら……。

 この国に聖龍様のダンジョンができたという事になる。

 あの伝説の聖龍様!!そのダンジョン!!


 この国は大きくなる。


 この場にいる人間は全員そう思っていた。






「どんな街だろうな。

でかい街だといいな」


 俺は呑気に街を楽しみにしていた。



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