村発見!ダンジョンと何か
ダンジョンをレドルに任せて俺は領域の一番端、魔境?の堺に来ていた。
これから俺の冒険が始まる!!
なんて思って空高く飛び俯瞰していたら、村が見えた。
辺境の村ってやつだろう、見窄らしい家が10軒程しかない。
この体になってかなり目が良くて、人間からじゃ俺は点にしか見えない程高く飛んでいるのだが、俺はしっかりと一人ひとりの顔が見える。
貧しい暮らしをしているんだろうが皆は笑顔で不幸なんて様子はない。
小さな子供が二人、無邪気に駆けまわっている。
「う~ん、どうやってアプローチしたものか……」
とりあえず人間にも見えそうな位の位置で飛んで見る……。
やっぱりというか前しか見ていないから気づいてもらえない。
「ここはやっぱり思いっきり行くべきか?
でも大丈夫かなぁ……」
自分の体を見るが、ちゃんと接してもらえる自身がない。
神々しく見えるような感じで……。
「後光とあると神々しいか?」
背にライト(強)を発動してゆっくり降り立つ。
流石に気がついたようで騒然とする村人達。
光が強過ぎたのか眩しそうに手を翳す。
ちょっと調整して……。
「こんにちは人間達よ……」
俺が声をかけると村人達は平伏した。
今俺はどうなってるかわかるか?
なんか崇められてる。
演出に凝り過ぎたせいか俺を神の使いかなんかだと勘違いしているんだろう。
その誤解はどう解こうか俺を悩ませる。
「あ、あの!
せ、聖龍様……でお間違い無いでしょうか……?」
俺に一番近いテカった頭皮を晒す男が声を震わせ恐る恐る尋ねる。
「いかにも!
俺は聖龍である!」
ステータスにそう記載されてるし嘘じゃない。
調子に乗って村全体にホーリーヒールを発動する。
村は淡く柔らかい白色に光に包まれ、空気が清浄化し清らかに、村人の開梱作業で出来た傷が癒え、寝込んでいた老人迄もが元気になった。
これにより村人は一瞬惚け、奇跡だと騒ぎ始めた。
「ありがとうございます聖龍様!!
どうか我々で饗しをさせて下さい!!」
そう言って村人達は一斉に動き出し、俺の為に粗末な作りだが祭壇のような物が出来た。
ここに座って欲しいということだろうか?と思い、その祭壇と思われる物の上にふわりと浮き上がり留まる。
「「「「「「おおおお……」」」」」」
俺の悠然たる立ち振る舞いに再度惚ける村人。
「聞きたいことあるんだけどいいか?」
「私で分かる事でしたら何なりとお答え致します!!」
この俺の側に佇んで居る頭頂が光っている男は低頭恭しく構える。
「この国の場所と名前、あとこの国も大きさなんかもわかったら知りたいな」
「この国は大陸最西端に位置しておりますルーロン王国と申します。
正直に言えば小国です……ね……」
「そうなのか。
この方角のずーっと行った所にある凄く広くて深い森があるんだか知ってるか?
魔物がいっぱい居るんだが」
俺が顔を向けた所を見てハッとする男。
「そちらですと大魔境ダエルダルという冒険者すら近づかない大変危険な魔境があったと思いますが……、そこがどうかいたしましたか?」
何やら深刻そうな顔をする。
別に俺は聞いた丈なのだが……。
しかし本当に魔境だったか。
しかも大魔境って……。
「じゃあその大魔境ダエルダルのもっと向こう側にある、横にとてつもなく広がっていて高く聳え立つ断崖?岩屋またなんだ?」
「ああ、それでしたら古くから言われている伝説で、神話の時代に神が大陸を分断するためにお作りになられたとか。
あちら側には魔大陸という凶悪な魔物が跋扈し恐ろしい種族が居るとかなんとか……。
もう数千年も昔の話だと言い伝えられています。
眉唾なものですね」
ふむ……ちょっと見てみたいかも。
ダンジョン伸ばしてみようかな。
あ、人間にとってダンジョンとはどんな存在でどんな扱いなのか聞いておこう。
「質問ばかりで済まないがダンジョンは人間にとってどんな存在なんだ?
それとどういう扱いをされるものなんだ?」
俺の質問に男はキョトンとする。
「ダンジョンですか?
そうですね、一言で言うなら諸刃の剣でしょうか?
国に多大な恩恵を齎すのがあれば、国に牙を向く凶悪な物がありますね。
ダンジョンが発見されれば必ず調査され、国に利益を与えると判断されれば保護、危険と判断されれば冒険者がダンジョンを落としに行きます。
そんな所でしょうか?」
ほう!
じゃあ俺はこの国に存在を明かしともに生きていくことが出来るということか。
問答無用でダンジョンは悪なんてめんどくさい事じゃなくて良かった。
「この国にはダンジョンはあるのか?」
「聞いた事ありませんねぇ~。
もしダンジョンがあって、ソレが国に恩恵を齎すものなら我が国はもっと豊かでしたでしょうね。
ダンジョンを多く有する国はそれだけ恩恵も大きく、大国になります。
我が国でもダンジョンが発見されれば私達は豊かになるんですけどねぇ……」
喜べお前たち。
ダンジョン出来たぞ!
俺はダンジョンマスターだ!!
この国は俺という存在を得て安泰だな!!
ワハハハハハ!!
心の中でニヤつき高笑いをする。
俺達が話している間に饗しの準備が出来つつあった。
目の前に並ぶ豪華とは言えない食べ物。
でも彼らにとってはこの精一杯の饗しなんだろう。
「俺だけがこうして美味いもの食っても味気ない。
俺からもお前達に贈ろう」
ダンジョンメニューを出すが、人間には見えてないようだ。
アイテム召喚を見て、この国での豪華な食事とされる物をポイントを使ってポンポン出す。
「さあ食べてくれ。
俺からの礼だ!」
香る食欲を誘う匂い、様々な料理が村人達の前にいくつも並んだ。
この日一番の歓声が村に響いた。
お祭り騒ぎのどんちゃん騒ぎだ。
この世界に来てから初めて物を食べたけど、結構行けるもんだな。
俺は村人が用意してくれた食い物を平らげた。