諸王国会議(2)
三日後の今日、宴の当日である。
各国が揃ったということで夕方には宴が始まるとエデルが改めて報せてくれる。
この三日は特に問題もなく、うちの王様が訪ねてくるくらいで平和な休日気分を味わった。
子供達にはおやつ等を与え、面倒はほとんどミーシャが見ていた。
ミーシャは本当にしっかりした子で、皆平等に接してあげるいい子だ。
ちなみに犬の獣人で、耳も尻尾もモサモサしている。
子供達もこの数日で俺に慣れて、小さい子なんかは俺にしがみついて遊んで欲しそうにする。
可愛いからついつい背に乗せて遊んであげるんだけど、ミーシャはその度にアワアワと慌てていた。
「それじゃあちょっと言ってくるから大人しくしてるんだよ?
あと、それ食べ過ぎないようにちゃんと見ててね。
ペットボトルの開け方はもう分かるのよね?」
「大丈夫ですご主人様!!
私が責任持って見ていますしこの透明な入れ物のジュースというやつの開け方もちゃんとわかります!!」
一応心配だから全員ベッドに居させてそれを結界で覆う。
今回は菓子パンを色々とたくさん出してそれで待ってもらうことにした。
いつの間にかご主人差って言われるようになってしまった。
その後たエデルに連れられてルーロン王の待つ部屋に行き合流して、宴の会場に一緒に向かった。
エデルはベッドに山盛りに置かれた菓子パンを若干羨ましそうに見ていた。
宴の会場
俺達が会場に入ると、まだそれ程集まってないようで人とモンスターのなりをしたダンジョンマスターが疎らだ。
「ルーロン様、ディアガン様のお席はこちらになります」
案内された先は会場中央ら辺のテーブルだ。
「聖龍様のお陰で今回は中央に席を設けてもらえました」
「中央が凄いのか?」
「はい、中央は主要国が占めています。
それ程に発言力が強いって事です。
私はダンジョンなしの弱小国でしたのでいつもは隅の角の方で目立たず存在感がほとんどありませんでした。」
「ほ~。
そういうもんなのか」
俺は王様の隣の丁度俺が収まる台の上に乗って腰掛ける。
続々と人やダンジョンマスターが集まってきて、会場が埋まっていく。
一様に俺の姿を見て驚きや好奇心、観察の目に晒され、ほんの一部だが敵意を感じた。
小物がだいぶ集まった所で次は大国と名を連ねる者達がダンジョンマスターを伴って悠々と中央の開いてる席へと案内されていく。
其の殆どが先に居座る俺達を値踏みするかの様な視線を投げかける。
そして、俺達の近くにヒノモト皇国の君主とそのダンジョンマスターが席についた。
一人が茶髪の壮年の男性で、もう一人が黒髪黒目の若い男だ。
ヒノモトの人達は堂々とした振る舞いだが、流石に大物を隣にしておうちの王様は緊張しているようだ。
「これはこれは珍しい。
私はヒノモト皇国の皇王をやってますミヅキ・アズマミヤと申します」
「わ、私は西方の辺境の国を治めてますエルメル・ド・ルーロンと申します」
ダメだ。
大国の空気に呑まれてる。
「僕はヒノモト皇国のダンジョンマスターをやってるミカゲです。
よろしくねディアガン」
「先日ルーロン王国でダンジョンを作りましたディアガンです。
ダンジョンの事については分からないことがまだ多くあるのでご教授して貰えたら嬉いです。
よろしくお願いします」
頭も持ち上げて皇国側に頭を下げる。
思ったよりも早く接触できていい滑り出しだ。
それにしても最高ランクだけあって雰囲気というかオーラが全く違う。
そこに居るだけで重苦しさを感じる。
歓談をしていると音楽が鳴り、今回の主催国であるリールムル王国がグリフォンと共に会場に入ってきた。
「今回、一国も欠けることなく集まってくれた事諸王国会議を開催する我が国として大変うれしく思う。
今宵は宴を楽しんでほしい」
短い挨拶をして中央の主催国の席へと座った。
それからは会場に音楽が流れ、食事を楽しみまずは隣同士から、次第に周囲と話は盛り上がっていく。
小国は大国の席へ向かい挨拶を交わすなど思い思いに宴を過ごしていた。
慣れない場しどろもどろになっていると、今回の主催国であるリールムル王国の方からこちらに寄ってきた。
「ルーロン王よ、祝福をさせてくれ。
ダンジョンを持たなかった国に我が西方諸国に偉大なる種のダンジョンマスターが誕生した事を心より嬉しく思う」
ルーロン王はガタタと慌てて席を立ち受け答えをする。
「ありがとうございますリールムル王。
これで我が国も豊かになると思います」
「発展を期待しているぞ。
ディアガン殿、是非我が国のダンジョンマスターとよしなに」
「私はリールムル王国のダンジョンマスターをしてますギャゾです。
以後お見知りおきを」
そう言ってグリフォンは頭を下げた。
ここに皇国も混ざりお互いの国のダンジョンの事ななど当たり障りのない歓談をして宴会を過ごした。
俺達ダンジョンマスター組も三人で集まって話し、デミゴッドのミカゲは最古のダンジョンマスターと言われているみたいで、ギャゾのダンジョンは階層が数百もあるという。
この際だから思い切って聞いてみることにする
「ミカゲさんは日本という言葉をご存ですか?」
俺の問にミカゲとギャゾ、聞き耳を立てていたミヅキがほんの一瞬ピクリと反応する。
「もしかして……君は……?」
「前世は日本人でした。
と言うことはやっぱりミカゲさんもそうなんですね。
国の名前とかでもしかしたらって思ったんですよ」
「おおおおお!!
偶然とはある者だな!」
「まさかディアガンが僕達の同郷だったとはね!
今回は来てよかったよ!」
「ん?
なんでギャゾさんも反応を?」
「俺の事はギャゾと呼び捨てにしてくれ!
俺も元日本人だ」
「マジで!?
あ、俺もディアガンでいいよ。
ってか呼び難いからディーでいいよ」
まさかのギャゾもとは完全に予想外で驚いたが、俺達は地球の話に花が咲いた。
ミカゲは俺が死んだ年より少し先の未来から、ギャゾは一年前のに死んでこの世界に来たという。
割と転生する時期はバラバラみたいだ。
他にもあと一人いるという事で、後日ダンジョンマスターだけの親睦会の時に紹介してくれるという。
居心地悪いこの会議にこういう仲間が居るだけど安心した。