王都へ向かって
饗しを楽しみ、子爵の子供は物怖じせず俺に抱きついてきて、可愛くて思わず遊んであげた。
それを微笑ましく見るご夫婦と控えているメイド達。
「さあそろそろ寝る時間だろう。
明日も勉強があるんだ。
もう寝なさい」
ギルディット子爵の言葉に不満そうな雰囲気を出しながらも子供達は大人しく従い、婦人に連れられて屋敷へ戻った。
「息子達と遊んでくれけありがとうございますディアガン様」
「ん。
俺子供好きだしいいよそんな改まってお礼言わなくても。
いい子達だ」
「聖龍様にそう言って頂けて親として鼻が高いです。
可愛い子達です」
子爵は目尻を下げてデレデレして、グラスに残っていたワインを一気に飲む。
「ディアガン様のお陰であの子達が安全に生きていけるでしょう。
それだけで私は幸せです」
赤く染まった顔、酔の中で夜空を見ながらポツリと呟いた。
俺はその言葉が何ろ意味するのかまだわかっていなかった。
翌日
「ディアガン様、出発はいつになさいますか?」
ソワソワした様子で寝そべり雲の流れを見ていた俺に近づき聞いてくる。
子爵の様子だと早く王都に報せに行きたいって雰囲気を隠しきれていない。
「そうだな。
婦人や子供達に挨拶してから行こうか」
「それはそれは、妻や息子達は喜ぶでしょう!!」
婦人と子供達と挨拶を済ませ、また会いに来ると約束して子爵と共に屋敷を出た。
もちろん子爵は専用の馬車に乗り、俺は浮遊して馬車の速度に合わせてのんびりと漂う。
先触れとして騎士を向かわせ、護衛は6人だ。
昨日出会った冒険者がダンジョンの噂をしたのか、街はお祭り騒ぎだ。
子爵の馬車の上にいる俺を見て歓声が上がる。
その歓声は人を呼び、俺を間近で一目見ようと、集まってくる。
多くの人に見守られながら俺達は街を出た。
「ダンジョンってそんなに重要なんだな~」
俺の何気ない独り言に騎士の一人が答える。
「勿論でございます聖龍様。
良きダンジョンを多く抱えた国は無限の資源と力を得ます。
最もランクの高いダンジョンが国の守護者と崇められ、戦争ではダンジョンと協力して戦います。
ダンジョンがあるかないか、どれだけ有するか、どれだけランクが高いかで国は変わっていきます」
「ふ~ん、この世界はそれ程までにダンジョンと密接なのか」
「えぇ、そうです。
我が国は今まで一つもダンジョンが生まれて来なかったのでずっと他国に多額の金を払って保護してもらってましたが、それももうおしまいです。
我が国は搾取されるのは終わり、豊かになっていくでしょう。
今の王は良き王ですので聖龍様と良き関係を築き我が国を導いてほしいと思っております」
「王様が良い人なら喜んで手を貸すよ。
俺もこうして人と交流できるなら願ったりかなったりだし」
「聖龍様のダンジョンはどんなダンジョンなんですか?」
「まだ出来たばかりで今は三階層しかないなぁ~。
二階層はペットのスライムとゴブリンの住処だし、一階層はレッサードラゴンの住処で防衛を任せてるよ。
え~っとランクは……」
ダンジョンステータスを見て口をあんぐり開ける。
俺の様子に俺と話をしていた騎士や盗み聞きしていた騎士がどうしたのかと伺う。
「いつの間にかAランクなってた。
この前までGだったのにな~。
なんで急に上がったんだろ?」
Aランクと聞いて騎士たちはワッとざわめき出す。
「まだ三階層でそのランク……、流石は聖龍様のダンジョンです!!
場所はどこにあるのですか?」
「確か、村長さんが大魔境ダエルダルって言ってたかな」
それを聞いた騎士は、今度は打って変わってシーンと静まり返る。
ん?どうしたんだ?と周りを見ると、青い顔をしていた。
「……よりにもよってそこにダンジョンが出来てしまいましたか……。
凶悪な魔物がひしめく高位冒険者が調査に向かってもほとんど帰って来なかったという……」
「確かに俺のダンジョンの近くに居るのはなかなかいい気配を放つ奴が居たな。
でも俺のレッサードラゴンと一対一で互角程度だしまあ俺は脅威になると思わなかったな。
(最初はビビったけど……)
一階層に居るレッサードラゴン100匹を一気に放ったらそいつら簡単に殲滅出来ると思ったぞ」
レッサードラゴンが100匹と聞いて騎士たちから、そして馬車の中から「えええええええ!?」という驚きの声が街道に響いた。
だいぶ日傾いてきて、街道の脇にそれて騎士たちは野営の準備を始める。
俺のライトの魔法で辺りを明るく照らし、騎士達たいそいそと作業をすすめる。
食事は干し肉を取り出したので、ここは俺がご馳走することにした。
「俺が美味しいもの出してあげるからそれ食べて休んでていいぞ」
アイテム召喚から惣菜パンやらサラダやら綺麗な水やらを出してあげると、子爵や騎士は目を輝かせる。
「この透明な模様の入っている袋に入っているのはメンチカツサンドという。
袋を破って中のを食べるんだぞ。
こっちのサラダはポテトサラダ。
そんで水は天然水のミネラルウォーターだ!」
それぞれが言うとおりに袋を破って惣菜パンを食べる。
ゴミはダンジョンに帰ったら吸収して処理しちゃおう。
「こ、これは!!
神の為にある食事か!?
味わい豊かで濃厚な味……、美味すぎる!!」
子爵は目を見開きバクバクと食べて咽ていた。
「このサラダもあっさりとした味付けに芋の味もしっかりしていて食べやすくて美味しい!!
これならいくらでも食べられるぞ!!」
「あ!!こら!独り占めするな!!」
「俺にも食わせろ!!」
騎士たちが惣菜パンそっちのけにポテトサラダを奪い合う。
そこへ子爵も参戦し子爵が半分も食べてしまい、騎士は涙目になっていた。
「そんなに欲しいならもっとあるぞ」
ポイントそんな掛からなかったし文字通り山程出せる。
俺の言葉にパアアアっと顔を明るくさせて期待して俺を見るのだった。
食事も終わり、俺は一応結界魔法をかけて休んだ。
結界魔法があるから騎士達もしっかり休むことができた。