第14話〜昼食〜前編
久々すぎてはじめまして。
結愛からメールが届いた三分後、俺は手に弁当を持ち屋上へと続く階段を登っていた。
この学校はもうすぐで創立50年を迎える建物だが、建物内は常にきれいに保たれており50年の歴史は感じさせない。
しかし、この階段はいたるところにホコリが溜まっており、全くもって掃除がされていない状況だった。
まあ、屋上を使用する生徒なんて全くと言っていいほどいないし、生徒にとってはほとんど関係のない場所になっているから、仕方ないのかもしれないが。
「それにしても、放置しすぎだろ・・・」
俺はもはや廃墟じみた長い階段を一段ずつ登りながらそうつぶやく。と、その時、階段に溜まったホコリに何やら足跡のような跡が付いているのに気づいた。きっと俺より先に屋上に来た結愛のものだろう。
「さて、結愛も待ってるし早く行かないと 」
屋上でその足跡の主が待ちくたびれているはずなので、俺は階段を登るスピードを早めた。
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階段を登りきると、ようやく屋上と繋がるドアが俺を出迎えた。
50年も経っているせいですっかり錆びついているドアノブを回し、ぐっと力を込める。
するとギィィィィィという音とともに重いドアが開いた。
「・・・っ」
一瞬太陽の日差しに目がくらむが、徐々にそれも治っていく。そして目が完全に太陽の光に慣れたとき、見知った人影を捉えた。
「あっ、お兄ちゃん。遅いよ?」
その影ーもとい結愛は長くきれいな蒼髪を揺らしながら俺の方へとかけてくると、
「ふぅ〜・・・お兄ちゃん久しぶり〜」
バフッと、俺に抱きついてきた。ふわりと甘いシャンプーの香りが鼻孔をくすぐる。
「久しぶりって、今朝まで一緒だったじゃん」
「でも授業中会えなかったから寂しかったんだも〜んっ」
結愛はプクッと頬を膨らませて少し不機嫌そうな表情を見せる。
どうやら、告白によって俺への執着度は更に高まったらしい。まあ、知っていたことだが。
「ん・・・はぁ・・・お兄ちゃんいい匂い・・・。安心するぅ」
そう言いながら、顔を俺の胸のあたりに擦り付ける。
さながら猫のようだ。
「こら、匂いを嗅ぐなっ」
「あ、もっ、もうちょっとだけっ」
俺は鼻をスンスン鳴らす妹を体から離し、少し距離を取る。
すると、結愛は名残惜しそうに、
「別にいいじやんっ、いい匂いなんだし、何も気にすることないじゃん」
とぼやいていた。当人からすると本当に恥ずかしいからやめてほしい限りだ。
とその時、俺は手に持っていた弁当の存在を思い出す。
「それより、お弁当。早く食べるぞ」
俺はここに来た本来の理由を思い出し、結愛を誘う。
「は〜いっ」
結愛もお腹が空いていたのか、特に何も抵抗することなく俺のすぐ横に座った。
「今日のお弁当はな〜にっかな〜っ」
と、結愛はご機嫌にお弁当箱を開封していく。
こういう楽しみにしてくれていた姿を見ると、作ってきた甲斐も有るというものだ。
「さて、食べるか」
「うんっ」
俺がそう言うと結愛が返事を返す。
「それじゃ 」
「「いただきますっ!」」
こうして二人のお昼が始まった。
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