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フォーシーズンズ  作者: まふみかん
3/7

やらかした

「...何してたんだよ」


かなり不機嫌そうな声で瑞希が言った。なんでそんなに怒ってるのかよく分かんないんだけど?

でもテンションが最高潮な俺はそんなこと気にせずに、


「いや、ちょっと嬉しいことがあってね。なー紅葉。」


さらに不機嫌そうになる。俺は今この瞬間にやっとやってしまったと気づいたのだ。


「ご、ごめん瑞希、今度アイスおごるからさ」


それでもまだ瑞希の機嫌は治らない。というか逆に悪くなってる気がする。


「てゆーかなんでそんなに怒ってんの?奈輝なんかしちゃったんじゃないの?」


紅葉が言うと瑞希が少し引いて、


「まぁ今はいい、奈輝、学校に着いたら詳しく聞かせてもらうからな。わかったな!」


瑞希のすごい剣幕に俺は「わ、わかった」と返すことしかできなかった。



1限目が終わったあとの休み時間、


「さぁ、詳しく聞かせてもらおうか」


「詳しくって何をだよ...」


そう聞くと瑞希は「だからっ!お前が紅葉と...」とどんどん尻すぼみになっていって、だからっ!しか聞こえなかった。


「ま、まぁ奈輝が朝からしたことを教えてくれ」


朝からのこととか聞いてどうするんだろう。歌い手のことだけ避けて話そうかな。


「えっと朝飯たべて...」


「そこじゃない!家出てからだ!」


おぅっ、怖っ。俺は嬉しいことがあって紅葉の家に行ったことを話した。それだけかよ、と言われたが、ついつい俺は余計なことを付け足してしまう男なのだ。


「あ、それと嬉し過ぎて紅葉に抱きついちゃったわ」


ニヤニヤしそうになる顔をがんばって堪えながら、瑞希の顔が不機嫌に染まっていく様を見届ける。


「え、えっと、瑞希さん?」


「なんでお前ばかり...」


なんでお前ばかり?どうしたんだ、全くわからないぞ。何か紅葉関係のことばっかりで怒ってる気がするけど...まさか?


「まさか瑞希、紅葉の事が好き...とか?」


「えっ!?そ、そんな訳ないだろ?ありえないって」


まぁそうだよな。いつもの様子見ててもそれはないか。それにしても瑞希の好きな人、気になるな。


「あ、あのな奈輝。そんなに紅葉にベタベタしてると嫌われるぞ?これは忠告だ。あー俺優しいな。」


「何言ってんの瑞希?」


紅葉の声だ。


「私が奈輝を嫌うことなんてないに決まってんじゃん。ねー奈輝?あ、もちろん瑞希もだよ」


「え?あ、うん」


ちょっとだけ瑞希の顔が緩んだ。やっぱり友情って大事だと思う。うん。俺はこの2人がいなくなったら生きて行ける自信ないからね。


折角いい事があったんだから誰かひとりでも怒ってるままじゃダメだよな!


「やっぱりお前ら大好きだっ!」


「俺(私)もだ(だよ)!」


ふうっ、やっと収まったな。今日という日をもっといい日にしていきたいからな。


でも俺はこの後瑞希にもっとテンションを下げてもらえばよかったと後悔することになる。


次の休み時間。テンションが上がりきっていた俺はスマホの再生回数の所を見ながらニヤニヤして歩いていた。何故かスマホOKなんだよね。この学校。


「ちょっとツイスター開けてみよ」


おおっ、フォロワー400人突破!いいねいいね。そんなことを考えていたら、前からぶつかった衝撃が来た。痛いな、誰だと考えた次の瞬間。今日は色々なことをやらかして来たが、間違いなく1番にやらかした。目の前には超絶美少女、橘 真冬様がいたのだ。


周囲の人々に見詰められる中、今の俺が下した判断は、


「真冬様!すみませんごめんなさい許してください!殺さないでください!」


謝罪。限界までの謝罪。頭下げすぎて膝に当たりそう。頭疲れた。


でもこれ謝っているように見えて逆に失礼なんじゃないか?なんだよ殺さないで下さいって。


「いたたー、あはっ、殺さないよー。でもちゃんと前向いて歩かなきゃダメだよ。てゆーかスマホ落とした...あれ?」


真冬様が笑いを混ぜながら言った。うはー、超絶美少女眼福ですわー。じゃなくて!真冬様が俺のスマホの画面を見たまま固まっている。どうしたんだ...?


「ちょっと君、名前なんて言うんだっけ?」


「えっ?あ、須藤 奈輝ですけど...」


画面を見ながら納得したような顔で何度も頷いている。ぶつかった上に名前まで聞かれるってこれ明日には男子に血祭りにあげられるんじゃないか。


「あの...奈輝君、だよね?今日放課後用事ある?」


「特には無いですけど...」


やばい。背中が痛い。男子共見すぎだろっ!というか何だ?デートのお誘いか?いやそれはない。今日の俺!須藤奈輝!どうしちまったんだ!


「それじゃあ奈輝君、放課後私のところに来てね。来てくれるまで、待ってるから。」


何やら意味深なセリフを残して真冬様は去っていった。


「男、須藤奈輝!必ず行かせていただきます!」


.....そんなこと言わなければよかった。周りの刺すような視線が痛い痛い。さっきの殺さないでくださいは男子共に言うべきだったな。やべえ明日学校来れないわ。


真冬様、来てくれってどういう用事なんだろう。ま、まさか付き合って下さい的なアレでは...ないな。気になる。早く放課後来いや!いやマジ来てください!


教室に帰ると紅葉は暗い顔、瑞希はすごく明るい顔をしていた。両極端すぎだろこいつら...どうしたんだ。


「おいおい聞いたぞ奈輝、やらかしたな」


こいつ情報早すぎだろ。


「あぁ、やらかした。それと何か周りからチラチラ見られてるような気がするんだけど気のせいだよね?気のせいと言ってくれ」


「安心しろ、気のせいじゃない」


もう背中が冷や汗でグッショリ。これは比喩じゃなく汗が滝のように出る。


「あー、奈輝は真冬様派だったのかー!やっぱりアレか?真冬様と色々あって色々しちゃった☆みたいなやつ?」


「違うわっ!お前完全に遊んでるだろっ!なんでそんなに嬉しそうなんだよ!」


今シャーペンを折った音が聞こえたんだが。やめて下さい、俺には真冬様をどうこうする気は全くありません。そもそも話したのも今日が初めてです。信じてください!


「この話は終わりっ!...それで、なんで紅葉はあんな暗いの?好きな人にでもフラれちゃったの?」


「奈輝、お前的確な射撃入れすぎだろ」


紅葉のビクッていう反応が少し面白かった。俺が紅葉に「この頼りになる奈輝さんに全部話してみな?」とか冗談混じりに話したら、


「...奈輝が、真冬様に取られる...遊んでくれなくなる...話してくれなくなる...」


お前もかーっ!?やめろ、俺が制裁される火種を撒くなーっ!そこのお前っ!シャーペン何本折るんだっ!変な勘違いしてんじゃねぇよ!


しかしこのままじゃ寂しん坊の紅葉が泣いてしまう。クソッ、こうなったらアレをやるしかないか。いつも紅葉が泣きそうになった時にやっていたアレ。学校ではやりたくなかったが仕方ない。


「俺はずっとお前ら2人のものだよ」


と紅葉の頭を撫でてやる。こうすると紅葉は基本元気を取り戻す。少し顔を紅くし、見る見るうちに元気を取り戻したが、恥ずかしくなったのかすぐに瑞希の方に行ってしまった。よくこの3人の中の誰かが暗く沈むことはあるが、


「...奈輝は...私のもの...!」


「お前ら2人って聞こえたか?」


「「「あはははっ」」」


最後には3人で笑いあえた。紅葉は本当に俺らのことが好きだな、それだから他の友達が出来ないんだけど、俺はずっとこの3人でいられたら、と思う。


そして俺は窓の淵に「リア充爆発しろっ!」と書かれているのを見逃さなかった。かわいい幼馴染うらやましいだろっ!残念ながら俺のモノにはならなさそうだけどな!


そして放課後になると、案の定「そういう方々」に呼び止められ、教室の端に連れていかれた。やっぱ放課後来なくてよかった。もう一回帰れ。


「おい、須藤奈輝。我が部下達に聞かせて貰ったぞ。どういうことか説明してもらおうか。」


正直、めんどくせぇーっ...早く真冬様のところに行きたいのに!


「どういうことか、というと...?」


こうなったら言葉を慎重に選んで適当に切り抜けるしかないな。相手が1人だったら速攻逃げられたのに...っ!何で5人もいるんだよ!チキンか!


「お前、とぼけるな!我らが真冬様の神聖なる柔肌に全身でぶつかった上に放課後の時間を貰うだと?貴様どんなことをしたんだ!羨ましい!」


おーい、最後本音出てますよー。というかこれなんだ、変な宗教みたいだな。このレベルになってくると。


「俺は別に何もしてないよ。それより逆に考えてみたら?俺にできるのなら君達にもできるだろ?一つのことに向けて全力を向けられるのは凄いと思うよ、俺」


「そ、そうか?そうだな、そんな気もしてきたぞ」


行けるっ、これは行ける!あと出来れば早く退場して欲しいのですが...


「え、えと、俺真冬様に呼ばれているからもう行くよ?」


「あ、そうだった!何をしたんだお前は!」


しまったーっ!焦った...!くそっ、折角丸く収まろうとしていたのに...!こうなったらヤケクソだ!


「なんもしてねぇよ!大体お前ら何もしてねぇじゃねぇか!何もしてない癖に行動したやつの結果に愚痴言ってんじゃねぇよ!」


全く行動も何もしてないし、ぶつかっただけなんだけどね。かっこつけたいお年頃なの。


「な、なんだと?てめぇ言わせておけば!」


リーダー的なやつから胸倉を掴まれた。胸倉掴まれんの結構苦しいからやめてくれ、とか考えていたとき、


「ちょっと、なにしてるんだよー」


ちょっとだけ無気力そうだけど、ちゃんとしっかり芯が通っている声。その方向に顔を向けると、眩しいほどに美人な、


「真冬様...?」


「待っていてもこなかったから来ちゃった、まさかこんなことになっていたとはね」


ちなみに5人はと言うと、そこだけ時が止まったかのように固まっていた。そんなやつらに真冬様がクリスタルボイスをかけた。


「そこの5人、私の時間を奪ったんだから覚悟は出来てるよね?」


「は、はい...」


それから俺達は教室を移動した。あいつら5人は真冬様に近づくのを禁止にされたとか。


「あ、それとさっきの、ちょっとかっこよかったよ」


不意に真冬様がそんなこと言うもんだから、不覚にも赤面してしまった。こんなところ見られてたら人生終わってたな。なんていうか、美人ってすごい。


真冬様から、どんな話をされるんだろう。


読んでいただきありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

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