表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フォーシーズンズ  作者: まふみかん
2/7

3大女王

目を開けると窓から差し込む光の粒が目に入る。


「もう朝か...」


昨日夜遅くまで起きていたので今日朝からすごく眠い。どの授業で寝ようかな...


それはそうと今日帰ってきたら録音とmixをして動画投稿しようと思う。今日紅葉OKかな。


誰もいない家に足音が響き渡る。いつもこんなふとした瞬間に悲しくなるのだ。


早く登校する準備を済ませて朝からゆっくり音楽を聞く。歌を聞いている時は悲しい気持ちにならないし、なにより俺自身が歌が好きだ。


しばらく歌を聴いた後落ち着いた心で両親の仏壇の前に正座する。ここに座るとあの日のことを思い出してしまうが、歌を聴いた後だと気持ちが落ち着くのだ。


「いってきます」


俺は自覚がないうちに微笑んでいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そこから家を出ていつも通り登校していると、


「くらえーい!」


紅葉の声だ。だが鞄アタックは昨日食らっている。

二度も同じ手を食らうか!


「ふっ、甘い!」


俺は地を蹴り横にステップし、攻撃を避ける。

ブルース・リーのイメージね。


「っとみせかけて、フェイント!」


「ぐえっ」


紅葉の策にまんまとひっかかり、またもや背中に鞄がクリーンヒットした。なんか変な声出たけどそこは愛嬌。


俺が振り向くと紅葉が勝ち誇った笑みを浮かべていて、風に吹かれた綺麗な黒髪がなびく。俺が少しの間見とれていると紅葉が少し照れたような感じで、


「な、何?そ、そんなに見ないでよ、照れるじゃん...」


と言って顔をそむけてしまった。やだ、可愛い。

瑞希の顔がちょっと赤くなってる。暑いのかな?まだ春なんだけどな。


「あ、いや、かわいいなー、と思ってな」


と妹的な感覚で口に出したら次は紅葉の顔が赤くなっちゃった。勘違いされてるようで言った後でちょっと後悔した。


「ほ、ホント奈輝は卑怯だよね」


紅葉が赤くなった顔を隠して絞り出すようにして出した言葉の意味はよくわからなかった。


「え?卑怯って...?」


「も、もういいから学校行くよっ!」


紅葉が先に走っていってしまった。何だったんだろう。とりあえず追いかけて一緒に学校までいこう。


「ずりぃよな...」


後ろにいる瑞希の口から不意に溢れた言葉を聞くことは出来なかった。



学校に着くといつものように皆が口々に好きな話をする声が聞こえる。実は俺はこの光景が好きだ。周りにたくさんの人がいるという感覚がする。世界から一人にならないという安心感がある。


とそうなると当然俺も瑞希や紅葉と色々な話の一つもするもので、俺は瑞希と2人で話をしていた。


「おい奈輝、桜花学園1年の3大女王、知ってるか?」


「あぁ、知ってるよ」


知らないわけが無い。この学校には次元が違う美人が3人いるのだ。茶髪ロングのたちばな 真冬まふゆ、かわいい系黒髪ショートの月見つきみ 好春このは、美人系黒髪ロングの桜庭さくらば あおい

学年男子の高嶺の花的な存在で、俺は一生関わりがないであろう。


ちなみに葵様は生徒会長で成績も学年トップクラス、真冬様は女友達も多く、性格もいいからコミュニティがすごく広いらしい。好春様はすっごいかわいいけど人と話してるのあんま見たことないな。


と1人で考えていると瑞希の自慢が結構な声の大きさで始まったが、周りの声が大きく他の人には聞こえないレベルだった。


「さっき葵様に話しかけられたんだよ!マジ美人すぎるわ、結婚してくれないかな?」


「詳しく、はよ」


こんな話を学校の外でしていたらかわいそうなヤツだと冷たい目で見られるだろう。


しかしこの学校では違う。男子の9割半以上が3人のどれかのファンクラブに参加している上に、必要以上に話しかけると男子全員から「制裁」が下されるという暗黙の了解がある。まぁ俺は入ってないんだけど。ファンクラブ。


サッカー部のエース、野球部のキャプテン、バスケ部の天才イケメン、陸上部の全国常連の選手、モデル活動をしているイケメンなどなど、今までに様々な勇者が玉砕しているらしい。


ちなみにその勇者達は告白した翌日必ず休んでいるらしい。玉砕したショックやら、男子達の制裁やら、色々な噂が飛び交っている。


「それで、何て話しかけられたんだよ」


「生徒会の用があるからこの資料職員室まで運んでおいてくれないか、って頼まれたんだよ。クリスタルボイスで昇天するわ」


なんとも羨ましい。男子の目線が痛いだろう。まぁ俺は好春様派だから別にいいんだ。べ、別にう、羨ましくなんてないんだからねっ!


「それは羨ましいこって。というか瑞希前に好きな人いるとか言ってなかったっけ?」


瑞希が「ま、まぁ俺には心に決めた人が...」とかブツブツ言っている。ちょっとかわいそうだったので放って置いてあげた。


「おーい2人、何の話してるのー?」


紅葉が遅れて到着。まさかこんな話をしているとは言うわけにはいかない。瑞希とアイコンタクトを取る。

俺に任せろの意だ。


「なーいしょっ!ヒミツだよ、ヒ、ミ、ツ!」


我ながらおかしいテンションだと思う。こういうのは可愛い女の子がするからいいのであっていい歳した男がしても誰得?って奴である。そしてしばらく間があってから、


「.....俺はお前がこんな奴だったとは知らなかった」


「同感」


親友2人に意外とマジで引かれた。その日は1日中冷たい目線を浴びることとなってしまった。



今日もやっと学校が終わった。家に帰って録音するんだったな。急いで帰るか。


そういえば俺、最近ツイスター始めたんだ。白い鳥のアイコンのSNSね。歌い手始めたんだからツイスターもやっといた方が知名度上がりやすいかなって。俺の動画を見てくれている希少な人達にフォローされてフォロワーがやっと300人超えたところだ。


家に帰って速攻鞄を雑に部屋に投げ捨てて、録音室に入る。そういえば今日なんの歌歌うか考えてなかった

な。ちょっと最新の人気ランキングから選ぼう。


色々な曲が並んでいる。コミカルなポップから綺麗なバラードまであって、ここから気に入った曲を探して歌うのだ。


...あった。すごく気に入った曲、「Artemis」という曲だ。少しテンポが早めなボーカロイドが歌っている恋の歌で、音が一気に上がる所が何ヶ所かある。俺はそういう曲が好きだ。


今出せる全力と感情を全て歌に乗せて...


ーこの地球を照らす太陽みたいな君に

ー大好きの4文字が言えなくて

ー伝えられないまま消え去った

ー消えそうな、すごく小さな恋


ー青く澄んでいた夜空が

ーガラガラと音を立て宇宙へと消えた


ー僕が生きていた証を心に刻んでくれないか

ーあぁアルテミス、僕を残してくれ。その月が沈みきる前に

ー僕がこの暗い夜を照らす月となる...




やりきった感で俺の心は満たされていた。


このなんていうか厨二っぽいけどかっこいいみたいな歌詞のフレーズが気に入ったんだよな。やっぱり歌は気持ちいい。


録音した歌をパソコンに保存して置く。今はまだ下手だから自分で聞くのも恥ずかしいけどね。


あと1番高い音、最高音がhiFだったので一オクターブ下げて歌えば丁度いい感じで歌いやすかった。後は紅葉に送ってmixしてもらうだけだ。


Lime、メッセージアプリを起動。


く 紅葉、今日mixおっけー?


と送ったら秒で既読がついた。......暇人なんだな。ちょっとだけかわいそうになったよ。


く おっけーだけど、店の手伝いしてからね

く 音源送っといて


紅葉は家で音楽関係の店をやっていて、俺もよくCDを買いに行ったりしてお世話になっている。 俺はありがとう、と一言送ってLimeを閉じた。


記念すべき3つ目の動画、楽しみだな。1人でも誰かに認められる様にがんばりたい。


今日はテンションが上がってしまってつい夕食を作りすぎた。ハンバーグにカレーってどんなバランスだよ。仕方ないな、カレーは明日に置いておこう。


「あ、おいし」


ハンバーグすげーうまい。我ながらうまく出来たな。びっくりド〇キーがびっくりするくらいうまいかも知れない。いや意外と俺センスあるかも。やっぱり歌い手より料理人.....にはならないけど。


夕食を食べ終わりお風呂に入ると紅葉からLimeが入ってきた。嘘だろ?まだ10時過ぎだぞ...


く mix終わったよ

く 音源送っといた


仕事早すぎですよ紅葉様、しかも前よりmix上手くなってるし。まぁとりあえず音源きたし動画投稿するか。えっとタイトルは「Artemis」歌ってみた [どーなつ]でいいか。


「ついに3作目です!まだまだ技術も全くで下手なんですが暖かい目で見守って頂ければ幸いです!


それとツイスター始めました。フォローお願いします。http://twister.com/donut song」


こんなもんだろう。んじゃま、投稿ボタンポチッとな。今回は伸びるかなー。未だ再生回数1000も行ってないからな。目標1000だ。


まぁ今日はもう寝よう。明日学校あるしな。



それから5日程が立った後の事だった。スマホを開けて戦慄した。再生回数1029...1000行ってる...!

やったー!やっと1000だ!100とかじゃないよね?いち、じゅう、ひゃく、せん。よし。1000ある。


喜びのあまりさっさと家を出て紅葉の家に行っちゃった。まぁよく考えればまだ1000なんだけどね。まだここは出発点だ。


「紅葉!いる?おはよー!奈輝だよ!」


紅葉は驚いたような顔で玄関にでてきた。いつもの時間よりまだ30分も早い。そりゃそうだ。


「ど、どうしたの?」


「やっと再生数1000いったよ!」


思わず近くにいた紅葉を抱きしめる。びっくりした紅葉は羞恥で顔を真っ赤に染めて、


「ちょっ、奈輝!?恥ずかしいよ...」


「あっ...」


やらかした。この須藤奈輝にあるまじきテンションでついやってしまった。でも紅葉はそんなこと気にもとめず、


「とりあえず、おめでとう奈輝!mix頑張ったかいがあったねー」


「あぁ、ありがとう。お前のお陰だよ!」


こんなテンション上がりまくりのまま早めに学校に行くことにした。そんでもってそのままのテンションで仲良く瑞希に会ったら何故かすごい目で睨まれた。


とにかく次は目指せ10000だな。



































読んでいただきありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

ちょっとずつ方向修正していかなくちゃな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ