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狂想曲シリーズ

その後の狂想曲

作者: 堀井 未咲

ブックマーク登録評価ありがとうございます。

読者様のお陰でジャンル別、総合ランキングに入り、驚きました。

ありがとうございます。


「「ふえ~~ん」」


 おおぅ。今日も元気な我が子の泣き声ですな。

 息子と娘の二重奏がよく響くこと。

 山奥の田舎でなかったら、近所迷惑まちがいなし。

 先輩の実家に嫁いで良かったと実感する毎日である。


 皆様お久しぶりです。

 武藤琴子改め、篠宮琴子23才です。

 私にとって衝撃的なお見合いからトントン拍子に事が進み、高校卒業後に正式に婚約、短大卒業後に入籍いたしました。

 篠宮和威先輩は学生結婚に迷いはなかったのですか、やはり速すぎだとお義兄さん方に諭されて踏み留まってくれた。

 そのお義兄さん方も20代前半で結婚しているので、あまり説得力はないのだけども。

 そんなこんなで気づけば2児の母となっております。

 先に言っておきますが、けっしてデキ婚ではありません。

 何故に結婚が速いとそう聴かれるのが多いのだろうか。

 あれか、私の火傷跡が好奇心を刺激するのか。

 傷有りだとまともな結婚ができないと馬鹿にされていたし、その類いだろうかな。

 結納時に先輩のご両親は注視はしても、火傷跡の事情は前もって知らされていたので、話題にもされなかった。

 結婚後に良く温泉に連れていかれるは、火傷跡に効く軟膏を塗られたりして、大分目立たなくなってきたのは驚かされた。

 先輩、じゃない和威さんによると、若い義娘が薄着が出来ないほどの跡に苦心しているのを見ていられなく、口ではなく行動で起こしたらしい。

 いやぁ、本人はあまり気にならないのだけど。

 お姑さんとは仲良しでいたいから、世間体を気にしてだと思って大人しく追従してただけなんだけど。

 猫は被るな、自然体でいろよ。

 と、兄に忠告されていたのは記憶に新しい。

 兄、正しかったよ。

 いらない気遣いされてたよ。

 何で学習しないかな、私。


「琴子、怒ってないで助けてくれ」

「「パパ、わりゅいの~。もぅたんのにゅうにゅうのんだぁ」」


 うん、自己反省してる場合じゃなかった。

 2才の双子が大泣きしてたのだった。

 二卵性の息子と娘はわたしの幼児期そっくりな顔を、盛大に歪めパパをぼかぼか叩いている。

 発端は、和威さんが娘もえお気に入りのフルーツ牛乳を飲んだことにある。

 もえは3時のおやつには、これがないと大号泣する。

 息子のなぎはいたって好き嫌いはなく何でもこいだけど、今日は牛乳が飲みたい気分だったか。

 双子はフルーツ牛乳をもうちゃんの牛乳と呼ぶ。

 もえちゃんの好きな牛乳という意味である。

 生憎と冷蔵庫にあるのは、和威さんが飲み間違えたコーヒー牛乳と普通の牛乳各一本。

 牛乳は地元の牛屋さんが配達してくれて、次回配達時間は明日の昼だ。

 幼い娘が我慢できる訳がない。


「もえちゃん、なぎ君。ママのところにおいで。パパにお買い物して貰おうね」

「「ママぁ。にゅうにゅう~ないにょう」」

「うん、ないね。パパが酔っぱらいになって間違えたんだって」

「「うぇっ⁉」」


 両手を広げて双子を招く。

 牛乳がないと訴える以心伝心な息子と娘。

 事実を告げると涙がピタッと止まった。

 叩く手もとまり、パパの顔を凝視する。


「ちょっと待て、琴子……」


 慌て出す和威さんだが、助けろといったのは貴方です。

 言葉の意味を理解できたのか、大きく見開くお目々と青くなる表情の我が子達。

 ちょっと耳栓しますかね。


「酔っぱらい、いやぁ~~」

「酔っぱらい、きりゃい~」


 大音声で叫び逃げ出す、なぎともえ。

 目についたクッションやらティッシュボックスを投げるのも忘れないとは、どれだけ酔ったパパが嫌なんだか。

 和威さん、自業自得です。

 彼はザルなのだが、お祖母様(双子の曾祖母)お手製の梅酒では、何故か酔っぱらいとかす。

 そして、色々問題を起こしてくれる。

 お盆に帰省したお義兄さん方と飲み比べて酔っぱらい、眠気に襲われぐずつく娘を高い高いを連発して、別の意味で酔わせたのだ。

 1週間は寝込んだ娘は食欲が失せ体重が落ちた。

 息子は毎日娘の横で絵本を読み聞かせたり、汗を拭いたりして常に傍らにいた。

 パパが近寄ろうとすると、両手を広げて通せんぼだ。

 同い年なはずが大したお兄ちゃん振りである。


「「ママぁ」」

「はい、もう泣かないの。お顔拭こうね」


 涙等で汚れた酷い顔を塗れタオルで拭いてあげると、叫んで疲れたのかぐったりと抱きついてくる。

 正直重いし、苦しいけど我慢我慢。

 愛しい我が子に苦情は言えない。

 和威さんが、凹み倒れ伏しているけど、ここは無視する。

 私は双子のご機嫌回復に努めるから、お買い物よろしく頼みますよ。

 えっ、禁句は止めてくれ、ですか。

 耳が死んだ、ですと。

 琴子の愛が軽い、ですと。

 失礼な。

 貴方が稼いだお金で新たな指環受け取ったではありませんか。

 婚約指環は2つもいらなかったのに。

 文句は後で聞いてあげるから、早く牛屋さんに行ってらっしゃいな。

 売り切れてもしりませんよ。

 非情にも夫を追い出す私である。






「「にゅうにゅう、にゅうにゅう♪」」

「じぃじに後で、ありがとうしましょうね」

「「はぁい」」


 好物のフルーツ牛乳にご満悦ですねぇ。

 大泣きしたのが嘘のよう。

 眠気も吹き飛びましたか。

 まぁ、こういうのが幼児です。

 泣き声を聞き付けたお義父さん(双子にとってはお祖父さん)が、母屋からご機嫌伺いに手土産と共に来てくれたので、和威さんはお買い物に行かなくて良くなりました。

 我が家は山奥の中腹にある人口600人に満たない村にある。

 都内と違いコンビニ等ありはしないから、お買い物には一苦労するのが当たり前。

 週末になれは近隣のお家の分も若い衆がお買い物にいく。

 有難いことに名家の篠宮家となれば、分家からの住み込みで働く家人がお買い物を担当してくれる。

 我が家は和威さんが在宅で仕事をしているので、お買い物には苦労してはいない。

 珠に酔っぱらいと化した和威さんがやらかして、子供たちの好物を飲食して泣かすけど。

 和威さんが俺の遺伝子は何処にいった、と嘆く程になぎともえは二卵性なのに私に瓜二つだ。

 なので、溺愛体質の和威さんは滅多な事では怒るに怒れない。

 専ら躾に厳しくなるのは私だ。

 なぎともえの行儀作法は2才児にしたら大人しい方である。

 というよりは、余り我儘を言わないから逆に困っていた。

 譲り合いっこ、半分っこ。

 お腹にいた時からそう言い聞かせていたからなのか、物に執着がないようにみえる。

 今もお互いにお菓子を食べさしあっている。


「もぅたん、あーん」

「なぁくん、あーん」

「「あーん」」

「今日も仲良しね」

「いや、これは琴子の真似だろ」


 はい?

 なんですと。


「気遣いてなかったか。なぎともえのおままごとを見てると、琴子そっくりな仕草をするぞ」


 あー、それは思っていた。

 誰かに似てるなと前から思い良く観察してると、舌足らずだけど私が言ったことを喋っていたから。

 そんなところにリモコン置かないでとか、飲み会で飲み過ぎないでとか。

 和威さんにお小言をした内容だった。

 子供は親の知らない処で見ていると痛感させられた。


「「う? 」」

「ママ、たべりゅ」

「パパも、あーんしゅりゅ」


 子供用のカステラを惜しみなく差し出してくる、なぎともえ。

 独り占めしない良い子に育ってくれてママは充分ですな。

 和威さんは一口かじりお礼を言う。

 私も真似をすると、満足して笑顔全開である。

 可愛いなあ。

 産んで良かった。

 実は男女の双子だと判ると篠宮の分家は、女の子は外に養子にやれと煩かった。

 なんでも、篠宮家の双子は丈夫に育たないらしい。

 和威さんは言葉を濁して説明してくれたけど、要するに男女の双子は妹が兄を害するということだ。

 我が家の双子はママが将来を心配する程に仲良しです。

 今は仲良しでも、成長すると不仲になるのかしら。

 今一ピンとこない。

 お互いにあーんしあっている姿を見てると、このままシスコンブラコンに育ちそうだけど。

 私もブラコンだけど。

 和威さんは養子話に、自分が武藤家か朝霧家に行くと宣言した。

 長男がお家を継ぐから五男の自分は邪魔者だ、との持論で分家を切り捨てた。

 お産で実家にいた私は慣れない育児と闘う最中だった為、その話をつい最近まで知らなかった。

 教えてくれたのは、長男のお嫁さん付き家人からだ。

 なんでも、祖父の後ろ楯がある私が篠宮家の実権を握るのを危惧してだと言う。

 そんなのいりません。

 害が双子に向かうなら容赦はせぬが。

 母は強し遣り返すぞ。

 けれども、家事育児でてんてこ舞いなのに、篠宮家の内向きの仕事はたいしてしてはいないけども、これ以上は勘弁してくださいが本音である。

 切り盛りするお義母さん、お義姉さんを尊敬します。

 五男家の家人は和威さんが、四六時中側にいられるのを拒否した為、必要がない限り離れにはいない。

 育児に専念する私の代わりに、母屋で仕事をしていただいている。

 有難や有難や。

 足を向けて眠れません。

 和威さんは、いずれ引っ越しする気でいる。

 都内の本社に転勤を打診されているからだ。

 相談された私は初めは単身赴任を押した。

 だって、山の中でのんびりと育つ双子が、コンクリートジャングルな都会の環境に適応するとは思えないから。

 結果、泣きつかれた。

 いい年した男がマジで泣きましたよ。

 イケメンは泣いても格好良しだ。

 つられて双子もギャン泣きしたけど。

 ドン引きした私を余所に、三人で泣き落しです。

 本当に篠宮家の血はどんだけ溺愛体質なのか思い知らされた。

 世間には連絡ツールがありふれているのに、毎日のハグがないととか、四人じゃないとご飯が美味しくないとか、入れ知恵された双子が泣きわめく。

 その日は、一日中息子と娘にくっつかれていた。

 不安気に見上げてくるなぎともえ。

 挙げ句、根負けした私が折れた。

 次回打診されたら、東京にお引っ越しです。


 兄よ貴方の妹夫婦との再会は案外時期早そうです。

 決して、出戻りではないからな。

 家族一同だからな。

 そこの処は間違えてくれるな。

シリーズ化するか、連載するか悩んでおります。

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[良い点] 久々に読んでみた。 琴子の口調ちがくね? [気になる点] >なんでも、祖父の後ろ楯がある私が篠宮家の実権を握るの【が】危惧してだと言う。 【を】? >害が双子に向かうなら容赦は【】ぬが…
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