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ヴェリスト家のシャーロット  作者: 水廉
第一章
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待っていましたよ

シャーロットが新たに使用人に出会います!


最後にはもう一人の主要人物が…

屋敷に入ると、天井の高い大広間が出迎えてくれた。


正面に赤紫色の絨毯が敷かれた大きな階段があり、左右には濃い茶色の扉が見える。


階段を上った先には廊下が前と左右に伸びており、たくさんの部屋が並んでいるようだ。


「すごい!やっぱり中も広い…」


「んー…そうか?大袈裟だぞ。とりあえず一階から回るか」


「よーし!んじゃまず俺たちの秘密基地に行こうぜ!」


ディムがそう言って走り出し、シャーロットもディルと共に追う。


秘密基地を案内してもいいのかとも思うが、楽しそうなので黙っておいた。



それから約二時間が過ぎたが、未だに案内は終わらない。


(広すぎる…)


使用人の部屋や厨房、客間や鍵のかかった倉庫や立ち入り禁止の区域。


二人は無計画にあちこちを案内しようとするため、尚更時間がかかっているのだろう。


動き回って二人とも疲れたのか、最初よりも言葉少なだ。ことあるごとに走り回り、騒がしかったのだが。


「ディル~…俺久々に走り回って疲れたんだけど」


「俺もだ」


シャーロットはそんな二人の背を半眼で見つめる。


「二人してそんなこと言わないでよ…余計疲れるじゃない」


「おまえの荷物が大きくて重いのが悪い」


「あなたが自分から持っていったんでしょう。というか今更だけど置く場所なかったのかしら…」


三人揃ってのろのろと歩いていると、正面を一人の女性が歩いているのが見えた。


その人は扉が半分開いたままの部屋に入って行く。


「あ、ミー(ねえ)だ!あそこ客間だよな?」


「ディル、もうあそこだけ案内して終わろうぜ。ユガンもいるかもしれないし、疲れた」


「賛成!それでいいか?」


「もう何でもいい…広すぎて一回じゃ覚えられないし、わたしも休みたい」


相変わらずゆっくり歩く二人についていき、客間の中を覗いてみると、そこは白いソファーとテーブルが設置された部屋だった。


落ち着いた色合いの花柄の絨毯に、薄茶色の壁。


奥の背の高い窓の前では、外を見ながら使用人らしき老人と先ほどの女性が話をしている。


「お、いたいた!あそこで話してるじいさんがユガン。シュラ様に一番信頼されてるんだ」


「で、もう一人はミータ。俺たちはミーねえって呼んでる。シュラ様の手伝いもしてるんだぜ」


「へえ…」


ユガンという人はとても優しそうだった。歳はカイムと同じか、少し若いかもしれない。


見事な銀髪にすらっとした立ち姿。完璧に黒の燕尾服を着こなしている。


そしてミータという女性は翡翠色の目を持つ、とても綺麗な人だった。


まだ若そうなのに大人びた雰囲気を纏っており、白い肌も後ろで束ねられた髪も艶がある。


佇まいや顔立ちを含めたすべてにおいて、まさしく美人と呼ぶのにふさわしいだろう。


彼女がいつも側にいるのだから、ディムに地味と言われても仕方がない気がする。


「ミーねえはああ見えて最強の武術家なんだ。武器も扱える」


つい見惚れていると、ディムが小声で驚愕の事実を告げた。


「うそ…!?」


(あんなに綺麗な人が…!?)


つい食い入るように見つめていると、その視線に気づき、ミータがユガンと共にこちらへ向かってきた。


ディルとディムが中に入り、シャーロットも慌てて中に入る。


「…あなたが、シャーロットさんね?」


ミータが微笑みながらシャーロットに声をかけた。


笑顔が眩しい。


「あの、は…はい!シャーロット・カルファです!よ、よろしくお願いします」


緊張しながら紹介を終えると、勢いよく頭をさげる。


「ふふふ…ミータ・ラルフディーンです。よろしくお願いしますね。こちらはユガンさん」


ミータが視線を向けると、今度はユガンが一歩前に出てきて軽く頭を下げた。


「ユガン・マルクシャンと申します。シャーロット様、どうぞよろしく」


「よろしくお願いします!」


シャーロットはもう一度、今度は丁寧に深々と頭を下げた。


「…私たちは、あなた様が来るのを待っていましたよ」


ユガンがそう言って微笑みかけてきた。白銀の瞳が、優しい光を帯びる。


大切な何かを見つめるときのような、そんな眼差しに似ている。


「ありがとうございます」


「さて…ディル、ディム。シャーロットさんをお部屋に案内して差し上げてください」


ミータが指示すると、二人は同時にはーいと手を挙げ、振り返った。


「行くぞ新入り」


「行くぞ地味女」


偉そうに言って歩き出す二人にため息をつくと、シャーロットは再度ミータたちに頭を下げて後を追った。


「あなたたち、いい加減に名前で呼んでくれない?新入りと地味女じゃ恰好がつかないじゃない」


「だって新入りだし」


「だって地味女だし」


シャーロットは二人の頭を同時にはたいた。


「しつこい!次言ったら蹴るから。特にディム」


「なんだと!?」


ぎゃあぎゃあ騒ぎながら出て行く三人を見送りながらミータは少し驚いていた。


「あの二人があんなに懐くなんて…」


わがままでうるさく、手に負えないステイン兄弟がああも他人と楽しげに騒ぐとは。


ユガンも同じことを思ったのか、さも楽しそうに言った。


「シャーロット様はやはり面白い方ですねぇ…もしかしたらシュラ様を…いえ、この組織を変えることができるかもしれませんよ」


ミータは頷いた。


「本当に、そうですね」


***


時を同じくして、一人の青年が従者を連れ港町を訪れていた。


その港は多くの商人の船が集まることで有名なのだが、その中に他大陸からの船があった。それも、見覚えのある。


「…何か、嫌な予感がするな」


「…と言いますと?」


青年はしばし船を見据えていたが、視線を逸らした。


「いや、何でもない」

次は『居場所』です!


部屋に案内されたシャーロット

そこはとても広く、居心地の良さそうな部屋だった

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