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暗い  作者: 小林希生
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1 面接(1)

 どうやら問題は解決したようだ。一時はどうなることだろうかと心配で仕様がながったが解決したのなら良かった。


 ペットボトルを手に舞子はドアを開けた。




 ドアを開けると色黒の男達が3人、田舎の商工会議所にあるような安物の長机に座っていた。エアコンはあまり効いていないらしく、少し、というか舞子にとってはすごく寒かった。

 男達は書類に目を通している。きっとあれは履歴書だろう。でも何故3部あるのだろうか、そうか、きっとコピーしたんだろう。

 男の1人が舞子に質問した。


「あんまり面白くない仕事だけどいいかな」

「ハイ、大丈夫です。とゆうか面白くない仕事とは考えていません、仕事なんて、、仕事なんていったらアレですけど。最初から面白い仕事なんてないと思うんですよ、御社のホームページを見させていただきました。仕事の内容ですか、経理。私経験が無いので良くわからないのですが、裏方ですか、裏方で支える、、縁の下の力もちっていうか、そういう仕事をしたいなぁと」


 本当はそんな仕事にはまったく興味が無かった。でもここで正直に「仕事したいだけ」などといっても何の得にもならない。

 学生時代、講義もまともに出席せずバイトとサークル活動に明け暮れた舞子は、周りが就職活動で騒々しくなっても特に何もせず、遊び友達が徐々に少なくなってとうとう1人だけになっても就職活動をしなかった。留年ぎりぎりの成績で短大を卒業する頃にはもはや時すでに遅し、新卒求人は無くなっていた。

 舞子は新卒で就職することが社会人生活にとって有利なことを知っていたので、中途入社する気は無かった。かといって具体的に何か行動したかというと何もしていなかった。


 卒業後逃げるように地元に帰ってきた舞子は実家からすぐ近くのコンビ二で週四日のアルバイトを始めた、そのコンビニのオーナーは舞子が小さい時からの顔なじみであり、就職しあぐねた舞子を歓迎してくれた。もともとこの田舎町で酒屋をやっていたのだが、一昨年コンビ二オーナーに転向した。オーナーの娘は舞子と同い年で、小学校、中学校と同じクラスで育った。彼女は今関東の国立大学三年生だ。


 そういうわけで舞子はここ一年フリーターとして日銭を得て暮らしていた。といっても実家暮らしで別に貧しいわけではなく。だらだらと過ごしていた。舞子自身は記者や○○コンサルタント、広告業界など、おおよそ大半の、自分をそれなりだと認めたくない学生があこがれる職業に就きたいと考えていた。が、現実就職となると求人数が極端に少ないばかりか、休みがないとか、将来性が無いとか、どんな職業にも当てはまるような抽象的で漠然とした不安で舞子はそういった求人に応募するのをためらってばかりいたので現実は何も変わらなかった。

 半年が過ぎたあたりから、舞子に対して両親が冷たくなった。ちゃんとした仕事、正社員になってない舞子に苛立ちを覚えていたのだろう。場の悪さに耐えられなくなった舞子が応募したのが、山田運送株式会社の経理職員であった。結局彼女は、表舞台に上がれる職業に挑戦する勇気も無かったのだ。


「小山さんのような方だったらこの職種にぴったりだと思いますね。ところで小山さん、短大を卒業されたのが去年ですね、何か他の仕事なんかされていたのですか」


「どうしても自分が希望する職種が無くて、色々な説明会にも参加してお話を聞いては見たのですが、やはり就職となると今後の人生にも大きくかかわってくるものですし。妥協はしたくなかったので就職は見送りました。この一年間は、サービスや流通の事を少し勉強してみようと、アルバイトですがコンビ二で働かせていただきました。あと地元に貢献したいと考えていましたので、今回御社が求人を出されているということで早速応募させていただいたんです」


 明らかに言いすぎだった、山田運送はそんなご大層な会社ではない。建物も薄汚いらくだ色で窓枠から黒いシミが壁に伝っている。社内も薄暗く、活気も無いが、選考を受けるのだから仕方の無いことである。




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