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晩餐会①

「ご機嫌麗しゅうございます。ラウル殿下、兄上様」


「お目にかかれて光栄です、コーネリア殿下」


「うん、綺麗なドレスだねコーネリア。それからレティシア様もようこそ」


「お招きに預かりまして光栄でございますわ、アルフレッド殿下。それからラウル様もご機嫌麗しゅうございます」

 

 傍から見れば穏やかな雰囲気で挨拶を交わす四人。

 皇族、王族、そして勇者。

 やんごとなき身分の四人である。さすがに誰もが遠慮して近づいては来ない。周囲の者たちは興味津々ながらも、遠巻きにして談笑を続けながら、注意だけを四人へと向けていた。

 そのおかげか、レティシアの完璧な淑女然とした態度の微笑みと礼儀作法が、どことなくぎこちなさが混じっていることに気づかれることはなかった。


「いやあ、レティ。本当にそのドレス似合っているよ。やっぱりもっと社交界にも出るべきじゃないかな、君は」


 型通りの挨拶を交わした後、いつもの言葉遣いへと戻ったラウルはレティシアの服を誉めそやすが、ジーっと見上げてくるレティシアの視線に徐々に視線が泳ぎ始める。

 リヨン王国の王宮で初めてレティシアと対峙した時に、完膚無きまでな形で敗北し、そして以後一緒に旅した際の彼女の実力をはっきりと知ったことで、ラウルは彼女に対してすっかり頭が上がらない。


「ねえ、ラウル。お兄ちゃんは?」


 レティシアの声は小鳥のさえずりにも例えられるほど、美しく澄んで心地よく耳へと届くと言われていたが、いまの発言の声音はどこまでも冷たく暗いものだった。

 ラウルをしても怖かった。


「まあ、ウィン・バード従士はさすがにこの晩餐会には出席できないかなあ。宮廷序列が低すぎるからね」


「ウィン君は控室ですよ、レティシア様」


 帝国の皇族兄妹の言葉に軽く頷くレティシア。


「へえ、そうなんだ。勇者の師匠でも出られないんだな」


「あれ? ラウル君も分かってただろう? さすがに隣国王太子の君を国賓に迎えての皇帝陛下主催の晩餐会だ。出席が許されるはずもない」


「つまり、ラウルは知ってたのよね?」


「ま、待て、レティ! 確かに俺はウィン君も夜会へ来るんじゃないかとは言ったが、確実に来るとは言ってな……痛っ!」


 その顔に微笑みを浮かべたまま目にも止まらぬ素早さでラウルの足を素知らぬ顔で踏みつけるレティシア。そして思わず小さく悲鳴を上げつつも、何とかポーカーフェイスを保ってみせるラウル。

 その二人の様子を間近で見せられたアルフレッドは、クククッと笑いを必死に堪えようと前かがみになっていた。


「おお、何か良い雰囲気ですな」


「リヨン王国の次代の王となられるラウル殿下と、アルフレッド皇太子殿下の仲が良いことは我が国にとっても喜ばしい。将来、良き関係を結ぶことが出来ますな」


 真実は子どもの喧嘩にも等しい会話なのだが、傍から見れば自国の皇族と英雄たちが、友誼を深めているように映ったようだ。

 遠くから様子を伺う貴族たちの間からこのような声がそこかしこから漏れ聞こえてきた。


「レティだって、よく考えればそれくらいわかるだろう?」


「もう、こんなとこ来るんじゃ無かった……」


「まあまあ、レティシア様。確かにウィン君はこの晩餐会に出席することは出来ませんけど、私たちのほうから控室へと訪ねて行くことは出来ますよ」


「そっか」


 レティシアは頷く。

 晩餐会の会場。

 この大広間の真ん中で宮廷楽士の優雅な調べの中をウィンとダンスを踊ることは出来ないが、ドレスで着飾った自分を彼に見せることは出来る。


「とは言っても、コーネリアもレティシア様も入場されてすぐに退場というのは、僕の立場からしてもラウル君の立場からしても困るんだよね」


 ようやく笑いの発作を抑えきったのか、アルフレッドが口を挟んだ。

 コーネリアは皇女という立場上、国賓であるラウルを饗す側である。

 それは公爵令嬢であるレティシアも同様だ。

 神権を持つ皇帝と同格とされる勇者とはいえ、さすがに皇族の顔を潰すわけにはいかない。


 折しも宮廷楽士が演奏を開始した。

 談笑しつつも四人の様子を伺っていた貴族たちが、ダンスを踊る場所として中央部を空けた。

 若い独身の男性貴族が、意中の女性の下へと歩み寄るとその手を取りダンスパートナーを申し込むと、女性たちは頬を赤らめてその手に応える光景が至るところで見られた。

 だが、すぐには中央へと進まずに手に手を取ったまま、この晩餐会の主賓である四人へと目を移す。


「さて、僕たちもご期待に沿わなければならないかな。せっかく勇気を出して踊ろうとしている恋人たちの邪魔にもなりたくない。

 と言う訳でレティシア様と一曲と言いたいとこだけど、ここはラウル殿から踊るべきだろう。

 コーネリアは残念ながら僕とだ。君は婚約者が決まるまで異性に触れることはできないからね。それとも、誰か好きな人でもいればその限りじゃないけど」


「いいえ。残念ですけどよろしくお願いしますわ、お兄様」


 跪き手を差し伸べるアルフレッドの手を取ると、兄妹はスイスイと人の輪の中心へと歩いて行く。

 その光景を見て、若い貴族の男性たちからため息が聞こえてきた。


 レムルシル帝国の皇族の女性は伴侶となる男性にしか触れることを許さない。

 つまりコーネリアにダンスを申し込み、皇女がそれを了承すればそれは皇女の伴侶となることを許されたことになる。

 ゆえに曲が始まった時、コーネリアの動向には大きな関心が寄せられていたのだ。


 今日の晩餐会におけるダンスで誰がコーネリアのパートナーを務めるのだろうかと。


 そのためコーネリアがさっさとアルフレッドの手を取ったことで、落胆のため息が漏れることになったのだ。


 だが、まだ一曲目である。

 アルフレッドと踊り終わった後のダンスパートナーを、誰が申し込むのか――その順番を互いに牽制し合いながらも、貴族たちの興味は次へと移る。


 皇族にも匹敵する公爵家の姫君と、隣国の王太子。

 勇者と剣聖。


「ええっと……じゃあ、レティシア嬢。私と一緒に踊っていただけますか?」


 こうなっては仕方が無い。

 レティシアはその手を取った。

 本意ではなかったが、ここでラウルを断ったとしても誰か別の者が申し込んでくるだけだからだ。

 

 ラウルに手を引かれながら、レティシアも人の輪の中へと入って行った。

 

「そういえば、ラウルと初めて会った時もこうして広間の真ん中に連れて行かれた覚えがあるわ」


「手に持っていたのはお互いの手じゃなくて、無骨な剣だったけどな」


 二人が進んでいくと、スッと人の輪が崩れ中央に空間ができる。

 そこでは先に歩み出たアルフレッドとコーネリアの二人が先にいて、アルフレッドが二人にニヤリと笑ってみせた。


 四人が中央へと進み出ると、宮廷楽士が新たな曲を奏で始めた。


(お兄ちゃんと踊りたかったな……)


 ラウルのリードに身を任せながら、レティシアは心の中でそう思う。

 さすがに王族と言うべきか。

 手慣れた様子でリードするラウルに何となくレティシアは腹が立ってきた。


(本当はお兄ちゃんと踊るはずだったのに!)


 ウィンの腕の中で、彼の温もりを感じながら、クルクルとターンを繰り返し、ステップを踏みながら軽やかに踊る。

 レティシアはステップを踏みながら、ウィンよりも高い位置にあるラウルの顔を見上げる。


 ――はあ。


「?」


 疑問符を浮かべて見下ろしてくるラウルににっこりと微笑むと、レティシアは彼の足を思い切り踏んづけてやった。



 ◇◆◇◆◇ 



 大広間の隣にある広間。

 そこには今日の晩餐会に招かれた貴族や高官たちの従者が控えていた。


 いや、人数から言えばむしろここに控えている者たちのほうが多いかもしれない。

 高位貴族の上級従者ともなれば、その辺の下級貴族よりもよほど大きな権力を持つ。

 従者たちの控えの間には、貴族の夜会と比べてもまるで遜色のない食べ物と酒精の含まれていない飲み物がふんだんに並べられており、彼らはそれらを手にしつつ彼らにとっての晩餐会へと挑んでいた。

 

 従者同士による政治活動である。

 領地の経営トップはもちろん領主である貴族である。


 しかし、面倒なやりとりのほとんどは彼ら側近である上級従者によって行われる。

 主である領主の仕事のほとんどは、従者たちが交渉、調整を終えた最終案に目を通し判を押すだけだ。

 互いの腹を探りあい、相手の弱みを知り付け込み、そして自分の主にとっての最大限の利益を引き出す。


 隣接しあう領地であれば顔を合わせての交渉、取引は簡単であるが、北方と南方のように離れた土地の領主であれば交流する機会は限られてくる。


 対立する派閥の者には話しかけ、派閥の中で疑心暗鬼を増幅させる。

 派閥に属さないか、もしくは小さな派閥には自分たちの派閥へと就けばどのような利にありつけるか説得する。

 場合によってはこの場にいる有能な従者そのものを引き抜こうとするといったことが行われる。


 この場は従者たちにとっては戦場なのだ。



 

(そろそろダンスが始まったのかな?)


 大広間のほうから聞こえてくる美しい調べが、隣室に控えているウィンの耳にも聞こえてきた。

 広間ではウィンと同様に主人である貴族についてきた従者たちがお互いに挨拶を交わし、食べ物を口にしながらも様々な交渉が行われていた。

 中には主人に案件を伺いに行くのであろう、忙しなく入退室を繰り返している者もいた。


 そんな中でウィンは一人蚊帳の外に置かれたような状態だった。

 ウィンの立場はコーネリア皇女の従士。

 コーネリア皇女の命にのみ従う騎士である。

 しかし、晩餐会の警護は皇室警護全般を担う近衛騎士団が主となるため、この控室に案内されていた。


 晩餐会が始まった時には次々と他貴族の私設騎士団の騎士や、従卒から挨拶をしていたのだが、その後はウィンは誰と口を交わすこともなく一人所在なげに時間を潰していた。


 別に無視をされているわけではない。

 どちらかというと、周囲の者たちがどう扱えばいいのか決めかねているという印象だった

 挨拶を交わしていた時も、興味を持たれている印象。

 

 皇女に最も近い騎士である。

 そして忘れてはならないのが『勇者の師匠』という肩書き。

 政治的にもこれから力をつけてくるかもしれない騎士。


 彼らの主である貴族の多くが、彼が平民の血筋ということから軽視する傾向にあったが、仕えている彼らにとっては、あらゆる可能性を検討しなければならない。

 つまりウィンは彼らにとってそれなりに要注意人物だったのだが、互いが互いを牽制し合い、また彼のことよりも先に片付けておかねばならない事案も山ほどあったため、それらを優先させてウィンの事を後回しとしていった結果、彼の周囲は見事なまでに無風状態が作り上げられていた。

 

(うーん……居場所がない)

 

 使用人たち用の控えの間とはいえ豪勢な料理も出されていたが、コーネリアの従士という立場上、がっつくのも皇女の評判に関わりかねない。

 料理には少し手を付けただけで、後は飲み物でも飲みながら時間を潰すしか無い。


 すると、


「あの……もしかして、ウィン・バード殿ではありませんか?」


 声を掛けられた。

 

「はい。そうですが」


「うわ! マジだ!」


「ほら見ろ、私が言ったとおりだ」


 ウィンに声をかけてきたのは、黒髪黒目で浅黒い肌が艶めかしい、どこか猫を思わせる顔立ちをした女性の騎士だった。

 そしてもう一人は金髪を短く刈り上げ、身長はウィンよりも拳一つ分高いくらいか。精悍な顔つきで、身体つきも筋肉質でがっちりとしている。

 二十代前半くらいの二人組みの若者。

 リヨン王国の騎士礼装を身に着けている。


「申し遅れました。私はリヨン王国軍近衛騎士団所属のマヌエラ。そして――」


「ティエリです。よろしく」


「レムルシル帝国第一皇女付き従士ウィン・バードです」


 帝国公用語を流暢に話しながら手を差し出してきた二人と握手を交わす。


「やったぜ! あの勇者様の師匠と言葉を交わせるなんて、故郷に帰ったら自慢できるぜ」


 思わずといった感じで大きな声を出し、子供のように目を輝かせてウィンの手を強く握るティエリに、マヌエラが右足で軽くティエリの向こう脛を蹴った。


「声が大きい! それといつまで握ってるの、このバカ。失礼よ」


「いえ、私は別にいいんですが……」


「イテテ……いいじゃないか。マヌエラだって会ってみたいって言ってただろう?」


「それはそうなんだけど……」


 蹴られたティエリは情けない顔で同輩のマヌエラを見る。


「場所を弁えるべきよ。見なさい、注目を集めてるじゃないの」


 ティエリの大声は会場中に聞こえたのか、談笑中だった人々が会話を止めてウィンたち三人へと視線が集まっていた。


「私たちはリヨン王国の代表でもあるんだから、立場も考えなさいよね!」


「立場も何も、ここでの俺たちは誰からも相手にされないただの若僧だよ」


「誰にも相手にされなくても、ラウル様のお立場を考えなさいと言ってるのよ! 私たちの失態はラウル様の評判にもつながるのよ!? 少しはその筋肉で出来た脳みそも使いなさい!」


 マヌエラは愛想笑いを浮かべながら、小声でティエリを叱るともう一度向こう脛を蹴り飛ばした。


「ティエリが失礼しました。」


 二人のやりとりに思わず笑ってしまいそうになるところだが、近衛騎士団に所属するというだけあって身のこなしに隙が無い。

 その一方でマヌエラとティエリもウィンの立つ姿勢に感心していた。

 幼い頃から相当な修練を積んだのだろう。

 力むこと無い自然体。不意打ちを仕掛けたとしても恐らく気づかれてしまうだろう。


 マヌエラとティエリは、リヨン王国王太子ラウル・オルト・リヨンと年齢が近いことから近衛騎士団の中より近侍に選ばれたのだが、ラウルの行動力に振り回されながらも、それでも最も近くで現【剣聖】を見てきた。

 そのため目が肥えている自信がある。


 二人は共に剣聖の強さに憧れを感じ、剣の腕を磨いてきた。

 憧れのラウルへと近づくために。

 それは丁度、ウィンが騎士への道を切り拓くために剣の腕を磨き続けてきたのと同じようなもの。

 更に、ウィンはレムルシル帝国皇女の従士、マヌエラとティエリはリヨン王国王太子の近侍と、お互いに似たような立場。


 共通する点が多ければ打ち解けるのも早い。


 ウィンも彼ら二人も、この場で政治ゲームに加わるにはまだ若く力は無い。

 互いに暇を持て余していたこともあって話も弾んだ。

 

 ウィンはマヌエラとティエリに、ラウルが打ち立てた武勇伝について聞き、マヌエラとティエリはレティシアの事について知りたがり話は盛り上がる。 

 そのうちに幼い頃のウィンとレティシアが行っていた鍛錬の量を聞くと、次第に二人の表情は引き攣っていったが――。


「そうやってレティシア様を教えられてきたのですね」


「そう言われるのはちょっと面映いですが」


 マヌエラの言葉にウィンは照れたように小鼻を掻いた。

 マヌエラとティエリの二人は、ウィンとレティシアの鍛錬内容を話すといちいち大げさに頷くのだ。

 しかもそれがご愛相では無いことが目を見ればわかる。

 二人ともまるで何か英雄譚を聞かされているかのような態度で、食い入るように聞いてくるのだ。

 ウィンに対してこういう態度を取る者は珍しく、また二人は歳上な上に、若いとはいえ見るからに立派な騎士なので、ウィンとしては照れ笑いを浮かべるしか無い。


「今思うと、確かにレティシア様は天才でしたよ。私のことを彼女は師匠って呼んでくれていますが――」


 むしろ、ウィンよりももっとしっかりとした指導者がレティシアを教えていれば、彼女はより早く、より強く才能を発揮できたのかもしれないと考えることはあった。

 

「レティシア様は私が教えなくても、きっとすぐに才能を表していたと思いますよ」


 ウィンはたまたま傍にいただけだと思う。


 だが――。


「そんなこと無いよ」


 マヌエラとティエリの動きが急に硬くなった。

 そして背後から聞こえた声。

 振り向くとレティシアが立っていた。


「そんなこと無いんだよ」


「あ、あれ? 何でレティ……レティシア様がこっちに?」


 いつもどおりにレティと呼びかけようとして、慌てて言い直したウィンにレティシアはちょっと不服そうな表情を浮かべたが、ウィンの横でカチコチに固まっている二人へと目を向けた。


「こちらは?」


「リヨン王国近衛騎士団の、ティエリ殿とマヌエラ殿です」


 マヌエラとティエリの二人が、レティシアに対してぎこちない動きで一礼した。


「お二人とも、私の師をお借りしてもよろしいでしょうか?」


「は、はい!」


 カチンコチンに固まってしまった二人に微笑むと、レティシアはウィンの腕に腕を絡めて歩き出す。


「レティシア様?」


「ラウルが来て欲しいって。あと、お兄ちゃんは私に敬語禁止!」


 ウィンにだけ聞こえるような小さな声で囁くと、レティシアはぷいっと前を向く。


「え、ええっと。俺は公務でここにいるんだから、レティと腕を組むのはマズイんじゃないかなと思うんだけど」


「男避け」


 ちょっとぶっきらぼうにレティシア。


「ああ、そっか。レティは可愛いからな。そりゃ言い寄る人もいるよね」


 リヨン王国の若き近衛騎士二人も、レティシアが近づいてきただけで緊張していた。

 特にティエリにいたっては、見惚れでもしたのか顔を赤くしていたぐらいだ。

 

「言い寄る人が多いんだよ。お兄ちゃんはそれでもいいの?」


「え、あ、いや……」


「うふふ」


 いいよどむウィンにレティシアは嬉しそうに笑顔を浮かべた。


「男避けも本当。でも私とお兄ちゃんが師弟関係で親しい間であることを、周囲にわからせるためでもあるんだよ」


「そうなのか」


「うん」


 弾むような声でレティシアは頷く。


「……それと、お兄ちゃんと出会ってなかったら、私は多分何もしようとしなかったと思うよ」


「え? なんだって?」


 レティシアが会場に到着した時よりも上機嫌に笑顔を浮かべているせいで、ウィンは突き刺さりそうな視線が気になってしまい、その小さな声を聞き逃してしまった。

 それにレティシアが身を包んでいる薄いピンクのドレス。

 少し胸元が強調されているデザインで、ウィンはどこか視線が泳いでいた。

 その様子が愛おしく、レティシアはウィンに悪戯っぽく微笑むと、しっかりと身体を寄せた。


「なんでもないよ。ほらお兄ちゃん、もっとしっかり私をエスコートしてね」


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