真実
「皆に真実を話そう。」
大輝の言う真実に、信二は理解しにくかった。ただの社会の先生が一体何を話そうと言うんだ。
「先生・・・真実って、何を話すんですか?」
ソフィーが質問した。
「全部だ。なぜSAT部隊が学校を封鎖するのか。なぜ変貌する生徒がいるか。七不思議の8番目もだ」
信二は耳を疑った。七不思議の8番目については、さっき鳥円から聞いたばかりだが、明らかに先生とは無関係だ。頭がおかしくなったのか!?
クラスメート全員、七不思議の8番目と今回の事件がどう関与するか疑問に抱いた。
「SATがこの学校を封鎖するには理由がある。それは未知のウイルスがこの学校を汚染しているからだ。」
この言葉に半信半疑の者もいれば、あざ笑う者もいる。鳥円だけがこの言葉を信じたようだ。
「未知のウイルスって・・・一体何のウイルスだよ!!」怒りがこみ上げた生徒が反発した。
「そうですよ!感染者はどういう症状が出るんですか!」
「単純な感染とは違う」
違うって、どう違うんだ!信二はそう思った。
「じゃあ証拠を見せろよ!感染者と症状を!」
「<感染者>ならすでに見ているはずだ」大輝はそう答えた。
信二には該当する人物がいた。
「それって、上田と川口先生ですか?」信二は質問してみた。
「そうだ。上田と川口・・・彼らが<感染者>だ」
信二以外の生徒は全員、ショックが大きかった。
「上田と川口先生は昨日まで何ともなかった。なのに、なぜ」立花の冷静な声が響いた。
「言っただろ。単純な感染とは違う」
「じゃあ・・・い・・・一体なんのウイルスですか?」ソフィーが怯えた声で質問した。
「それを説明するには、12年前にさかのぼる必要がある。俺の過去をな」
信二は、大輝の過去には興味ないが、ウィルスの正体には、興味があった。
「当時俺は教師ではなく、生物学者だった。相棒に、野村たけしって同じ生物学者がいた。俺と野村はフィリピンに滞在中だった。その時、ある少女の噂を耳にした。<本物の悪魔>に取り付かれた少女の噂を」
悪魔と来ましたか。
「これが、その少女だ。当時は7歳か8歳だった」
先生は写真を見せた。信二はフィリピン系の女性は嫌いだが、見せられた写真の人物は思わず見とれてしまう美しさがあった。
「だが、取り付かれた後はこれだ」
信二は目を疑った。少女の眼は真っ黒に染っていて、瞳の部分は真っ赤だった。歯は、猛獣のようで、手足の爪も獣のようだった。血管も出ていて、背中から、骨らしき鋭い突起が4本出ていた。
「当然、少女は悪魔祓いを受けたが、効果は無かった。俺達も少女を実際見たときは驚きを隠せなかった。だが、そこで野村は思いついた。少女は、未知のウイルスに感染していて、体の細胞が変異し、ああなったと。俺達はすぐに日本にいる研究チームを呼び、フィリピンの研究所で少女を研究した。」
「それで・・・」
「少女の血液と唾液から、未知のウイルスが検出された。」
「ど・・・どんなウイルスですか・・・」
「RNAウイルス、<DemonyoVirusa>。感染者のDNAと細胞を変異させ、身体能力を野生の動物レベル以上に進化させる。代償として、知能が急激に低下する。」
「デモーニョ?」信二はデモーニョの意味が分からなかった。
「タガログ語で<悪霊>という意味だ」
「俺は一刻も早く抗ウイルス剤を開発し、少女を治してあげたかった。だが、そんな時だった。事件が発生したのは」