七不思議と8番目
自分達の教室に戻った信二は、射殺された生徒の事が、頭から離れなかった。
なぜ、次々と人が異変するのだろう。隣のソフィーはフランス語で何か言っている。後ろの紘輝は、ネックレスの十字架を握って祈りの言葉を呟いている。山田は何かゲームをしている。鳥円は最新型のノートパソコンで、自分のブログを更新している。野田は腕立て伏せをしている。立花は読書をしている。皆それぞれ、何かに夢中になることで、今朝の出来事を忘れようとしている。なら俺も何かしよう。大羽中学校の七不思議は確か
1:トイレの次郎さん
2:変態チカン幽霊
3:同性愛者の呪い
4:恐怖の追跡者
5:ゴジラの逆襲
6:悪魔の叫び声
7:7月7日7時の幸福
だったな。
うちの学校の七不思議、ろくなのがない。1:トイレの次郎さんって何だよ。花子さんじゃないの?著作権にかかったのか?
2:変態チカン幽霊て何だよ?チカンは怖いけど、チカンの幽霊って・・・
3:同性愛者の呪い。呪いは怖いけど同性愛者はいらないな。
4:恐怖の追跡者って昔のB級映画の題名っぽい
5:ゴジラの逆襲って、七不思議でも何でもねーよ!
6:悪魔の叫び声。一番まともだな。
7:7月7日7時の幸福・・・幸福ねぇ~
6の悪魔の叫び声って何だろう?鳥円に聞いてみるか。
信二は席を立ち、鳥円の席に向かった。
「なあ。悪魔の叫び声って何だ?」
鳥円はタイピングをやめ、信二の顔を見た。
「信二君。君の知っている七不思議はデマだよ」
デマだって!?おかしいとは思ったけど、まさかデマだったとは・・・
「これが本物。」
そういって、パソコンの画面を見せてきた。
1:傲慢の悲劇
2:嫉妬の不幸
3:憤怒の恐怖
4:怠惰の後悔
5:強欲の結末
6:暴食の結果
7:色欲の惨劇
さっきと格が違うな。
「これって、何だ?」
鳥円が説明を始めた。
「この学校で、この7つの感情や行動をしてしまうと、それぞれの悪魔に魂を持ってかれるというものです。キリスト教の<7つの大罪>と酷似してますね」
本当にこいつ物知りだな。
信二がそう関心していると、突然鳥円が、クリックをした。
「実はこの学校の七不思議はこれだけではないんです」
どういう意味だ?七番目で終わりじゃないのか?
「うちの学校の七不思議には<8番目>があるんです」
その言葉を聞いたとき、背筋が凍りついたような感覚に襲われた。
「これが8番目です」
8:アイビの呪い
アイビの呪い?
「アイビって何だ?」
「この学校にもともと住み着く怪物の名前と言われています。」
学校に住み着く魔物?
「もともと、この学校には校則違反した生徒を罰するための部屋があったんです。その罰とは、その部屋に生徒を1時間以上閉じ込めるんです。」
酷い部屋だ。
「しかし、ある時その部屋で、生徒が1人心臓発作で無くなったそうです。その部屋は、しばらく物置として使われたんですが、ある日、少女が苦しむ声が、その部屋から聞こえると生徒の間で噂になり、職員の何人かも、その声が聞こえたと。そこで、若い職員がその部屋を調査しました。」
信二は息を飲んだ。
「それで・・・」
「1時間以上その職員が戻って来ないので、別の職員がその部屋に入りました。また30分以上戻って来ないから、職員全員がその部屋に入りました。その部屋では、最初に入った職員が虐殺死体で発見されました。2番目に入った職員は、行方不明になってので職員達はその部屋を封印しました。この時の職員全員、別の学校に転勤したのでその部屋の場所を知る人は居なくなりました。」
怖い話だ
「数年後、ある職員が、深夜のパトロールでこの学校中を徘徊しました。翌日、その職員は、別の職員に職員室の隅っこで怯えている姿で発見されました。その職員は「鎖の化け物」としか呟かず、精神病院行きになりました。以後、生徒達はこの事をアイビの呪いと噂され、全員鎖の怪物を恐れました」
なるほど、そういう伝説があったのか
「で、アイビはどこから来た?」
「心臓発作で亡くなった生徒の名前のあだ名が愛美だったそうです」
そういうことか。信二が何かを言おうと思った瞬間、扉が開いた。
黒木大輝が戻ってきた
「全員聞いてくれ。大事な話がある。」
大輝の深刻そうな顔が、生徒の不安をより高める。
話って何だろう・・・信二はそう思った。
「ここで何が起きてるか話そう。」
大輝の口から、真実が語られようとしていた。