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感染者の牙  作者: 岡田健八郎
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面会

追加最終登場人物

面会者・・・信二と面会する人物

 ―2日後―

信二は電車に乗っていた。満員になっており、席に座るのは困難を極める。

信二は、目的の駅に降り、そのまま目的地に向かった。

道の途中で本屋と玩具屋があった。

「買ってくるか」

信二は、寄り道をしたため、予定より時間が遅れた。


―横浜市立市民病院―

信二は入り口に入り受付に向かった。

「面会です」

信二は、受付での職員に指定された病室へと向かった。

相変わらず病院の匂いは嫌いだな。そう思いながら、個室に着いた。ドアをノックし、病室に入った。


 「お兄ちゃん」

出迎えたのは、今年で7歳になる妹の相沢茜あいざわあかねだった。

「よう。小さな天使」

茜は長い間外出してないためか、肌は真っ白だったが、しっとりした滑らかな髪が無造作に肩に落ち、やさしい愛らしい顔を引き立てている。声はまだ幼いが、大体の人は小さな天使と呼ぶ。

「次の面会はクリスマスじゃなかったけ?」

信二は忘れたふりをした。

「そうだっけ?忘れたな」

突然、茜の目に自信が溢れた。

「お兄ちゃん嘘ついてる」

信二は一瞬驚いた。俺の嘘を見抜いた?こいつは読心術に堪えてるのか?

「嘘だと思う?」

「絶対嘘。正直に言わないともう話さないよ」

嘘はやめよう・・・

「本当のことを言うと、お前に会いたくなった」

「よろしい」

茜は勝ち誇った顔をした。

「何で会いたくなったの?」

信二は何て答えようか迷った。

「ええ~と・・・そうだ!忘れる前にこれ」

信二は、袋から物を取り出した。熊のぬいぐるみだ。

「可愛い!」

茜は喜んで受け取った。

「それと、お前の呼んでいた少女漫画の最新刊だ」

そう言って漫画を渡した。

「ありがとう。もしかしてクリスマスプレゼント?」

「いいや。クリスマスプレゼントはクリスマスで渡す」

茜は、とびっきりの笑顔を見せた。

「ありがとう♪兄ちゃん♪」

信二はその笑顔で思わず恋心に似た感情を抱いた。

「それより兄ちゃん?何で突然会いたくなったの?」

やはり答えないと駄目か・・・

「・・・お前入院して何年になる?」

「えっと・・・2~3年かな。何で?」

「実は、俺転校することになった」

茜は、心配な顔で信二を見つめた。

「昨日、大勢の友人と別れた。長い間仲良くした友人と・・・一瞬だったな・・・」

「友達・・・残念だったね・・・死んじゃって」

信二は、驚いた。

「何で死んだと思ってるんだ」

茜は肩をすくめた。

「昨日、テレビのニュースでやってたの。兄ちゃんの学校が封鎖されて、沢山の生徒が射殺されったって」

信二は、報道陣が学校の封鎖を報道していたことをすっかり忘れていた。

「ああ・・・皆死んじゃったよ・・・友人作らなきゃ良かった・・・そう後悔してる」

茜は、寂しそうな声で話しかけた。

「どうして皆死んだの?」

「未知の病気が学校で流行ってね、病気にかかった人は皆狂暴になったんだよ。俺は必死で逃げたり戦ったり。気が付いたら、皆死んじまった・・・」

茜は切ない声で信二に話しかけた。

「もう我慢しなくていいよ」

その瞬間、信二の悲しみが一気にこみ上げた。自然と沢山の涙が流れ始めた。

「畜生!皆死んじまったよ!」

信二は頭を下げた。自分の泣き顔を妹に見られたくなかった。

「畜生!畜生!」

茜は、信二の頭を黙ってなでた。

「そうだよ。思いっきり泣いていいよ」

茜は悲しそうな目で信二を見つめた。

「皆兄ちゃんを恨んでないよ」

茜は、信二の頭をなで続けた。

病室は、信二の泣き声以外、何も音がしなかった。


【次回予告】

新たな舞台で、新たな人物達で、新たな感染が始まる。

次作「感染者の沈黙」連載予定

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