遂行
―グランド現場司令部テント―
「それで、救出者の数は?」
前原は坂田に聞いた。
「5名です。生徒3名。SAT2名」
「そうか・・・」
テントに、ガスマスクをした自衛隊員が入ってきた。
「報告します。第1特殊武器防護隊は突入準備完了です」
「屋上の扉は?」
「SATが溶接しました。感染者は文字通り校内から出れません」
前原は、少し罪悪感を感じた。
「神様お許しください」
「一等陸佐殿?」
「なんでもない」
坂田は質問した。
「救出された人たちはどうします?」
「48時間隔離だ。定期的に血液検査と唾液検査をしろ。48時間何も異常がなければ、家に帰してやれ」
「了解」
前原は、近くの通信員に言った。
「部隊を突入させろ」
通信員は一瞬ためらったが、命令に従い、通信機具で指令を隊員に伝えた。
「第1特殊武器防護隊は校内に突入、感染者を全員<射殺>せよ。例外は無しだ。繰り返す、例外は無しだ」
『了解。部隊を突入させます』
前原は、今回の作戦ほど罪悪感を感じたことは無い。
信二は、グランドのテントで休まされていた。
職員玄関から、ガスマスクをした89式小銃を装備した自衛隊員が入るところを見た。
「何をするのですか?」
信二は水谷に聞いた。
「俺にもわからない」
信二は自衛隊員に聞くことにしたが、やめた。
校内に鳴り響く銃声が全てを物語っていた。