表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感染者の牙  作者: 岡田健八郎
37/40

悪霊(レギオン)の猛攻

そこで、イエスが、「名はなんと言うか」とお尋ねになると、「我が名はレギオン。我々は大勢であるが故に」と言った。

新約聖書マルコによる福音書5章9節

「あ、そうだ」

水谷は、信二に何かを投げた。信二は右手で受け取った。

「止血剤だ。その子に使っておけ」

信二はソフィーに止血剤を飲ませた。

「じゃあ、職員玄関へ行くぞ。準備しろ」

水谷は短機関銃を調節し始めた。信二は大輝の死体に駆け寄った。大輝が他に何か無いか調べた。

包帯があった。信二はソフィーへ駆け寄った。

「包帯を巻くぞ」

ソフィーはコクリとうなずいた。信二はソフィーの右肩を巻き始めた。

 山田と立花は一緒に座っていた。

「立花さん。なんでそんなに落ち込んでいるの?」

立花には答えたくない質問だ。ずっと好意を抱いていた相手を殺したのだからだ。

「・・・大切な友人をこの手で殺した・・・」

「そうか・・・」


 水谷は自分の銃に異状が無いことを確認した。

「よし。皆行くぞ」

水谷と信一が先頭に立った。一同は来た道を引き返し、エレベーターまで着いた。信二はソフィーに肩を貸しながら連れてきた。

全員、エレベーターに乗り、1階へ向かった。

「やっと、外へ出れる」

信二はそう呟いた。

 エレベーターの扉が開き、一同はエレベーターから出た。

だが、再び絶望が一同を襲った。

職員玄関の前に大勢の感染者が立っていた。全員、目は赤かった。

「それは無いだろ」信二は小声で言った。

感染者達は赤い目で、信二達を睨んだ。うなり声を上げていた。まるで悪霊のようだった。

悪霊レギオン

信二は新約聖書に出てくる悪霊の名前を思い出し、呟いてしまった。

「いいえ・・・悪霊デモーニョよ」

ソフィーは訂正した。

「でもレギオンのほうが今の状況に相応しい名前よ」

立花はそう言った。

「どうでもいいよ!」

山田は怒鳴った。

山田の怒鳴り声が合図のか、感染者達レギオンが奇声を上げながら一斉に走り出した。

「撃て!相沢!」

「分かってる!」

水谷と信一は短機関銃を一斉乱射した。弾丸は感染者達の体を次々と貫いた。だが、数は減るどころか逆に増えていた。

「エレベーターに乗って!」

立花は怒鳴った。全員エレベーターに乗ると同時に立花は扉を閉めるボタンを押した。

扉は閉まった。

『階を指定してください』

エレベーターのスピーカーから女性の声が出た。

「おい・・・誰か足りないか?」

水谷は言った。信二は入ってる人の名前を確認した。

「水谷、相沢、俺、ソフィー、立花・・・山田は!?」

エレベーターの扉の向こう側から声がした。

「開けて!お願い!開けて!」

山田の声だった。山田が外に取り残された。立花は開けようとした。

「よせ!今あけたら感染者が入ってくる!」

水谷は止めた。

「じゃあ、どうすればいいのですか?」

「山田君!聞こえるか!エレベーターを4階まで上げる!4階で待っている!」

「分かった!絶対4階まで来て!」

山田が走っていった・・・気がした。

立花は4階を押した。

「こちら水谷。職員玄関前で感染者が待ち伏せしていた。脱出は不可能だ」

『了解。こちらで何か考える。それまで耐えてくれ』

「耐えろって・・・こちらはもう弾丸が少ないんだぞ!」

『繰り返す。こちらで何か考える。それまで耐えてくれ』

水谷は舌打ちした。

エレベーターは4階に着き、扉が開いた。山田が立っていた。

「さあ!早く入れ!」

だが、山田は奇声を上げながら襲い掛かってきた。良く見れば、目が赤かった。

「畜生!山田が感染した!」信二は叫んだ。

信一は山田を蹴り、外へ突き飛ばした。立花はエレベーターの扉を閉めた。

山田が扉を叩いていた。

『こちら、陸上自衛隊前原一等陸佐だ』

「前原陸佐!職員玄関は駄目です!」

『なら南校舎の屋上へ向かえ』

「了解。交信終了アウト。立花さん、3階を押せ」

立花は言われた通り3階を押した。


 エレベーターの扉が開く。水谷と信一が外に出て、ルートを確保した。

「よし。行こう」

だが、階段から何かが上がって来た。黒目の感染者達だ。

「構うな!屋上まで行け!」

水谷は感染者を撃ちまくった。

「俺が時間を稼ぐ!相沢は連れて行け!」

信一は信二たちを連れて行った。渡り廊下を渡りきったが、2年生の教室から赤目の感染者達が出てきた。

「糞!」

信一は短機関銃で感染者の頭を次々と撃ち抜いた。だが、信二達にも襲い掛かってきた。

「くたばれ!」

信二は大輝のものだった散弾銃で感染者を撃った。反動が強く、腰だめでは撃てなかった。感染者の1人が立花に掴みかかった。

「立花!」

信二は慣れない銃で立花を助けようとしたが、信二にも感染者が掴みかかった。

立花はネックレスの十字架を握った。

「大輝君・・・ごめん!」

十字架を感染者の右目に突き刺した。感染者は苦しみながら、右目に刺さった十字架を抜いた。立花は感染者から十字架を奪い、今度は左目に刺した。感染者は完全に盲目になった。

信二は散弾銃を落とした。ソフィーは散弾銃を拾い、感染者の頭を狙った。

「撃て!」

ソフィーは散弾銃を撃った。反動で倒れたが、感染者の頭は吹き飛んだ。

「全員無事か!?」

水谷が走ってきた。後ろには大勢の感染者が。

「逃げろ!早く!」

信二は、ソフィーに肩を貸しながら、立花を連れて屋上へ向かった。

屋上へ向かう階段を駆け上がった。

「早く!こっちに来なさい!」

階段から瀬木が降りてきて、ソフィーを抱きかかえ、信二達を屋上へ誘導した。

「信一と水谷は!?」

「感染者と戦ってます」

屋上へ着いた。

屋上では、大勢のSATが待機していた。

「この子達を頼む」

瀬木はソフィーを近くの隊員に渡した。

「中にいる相沢たちを救助に向かうぞ!」

SAT達は次々と校内に入った。

信二は、外の世界を久しぶりに体験してる気分だった。

「今何時ですか?」

信二は近くの隊員に聞いた。

「夜中の2時過ぎだよ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ