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感染者の牙  作者: 岡田健八郎
36/40

決着

信二は目を覚ました。起き上がろうとしたが、後頭部に激痛が走る。

「っつう!」

 頭がクラクラする。何があったのだろう?

信二は左手で何か掴める物を探した。何か丸い物を掴んだ。

「何だこれ?」

信二の掴んだものは柔らかく、感触が良く、触り心地がいい。

だが、すぐに何かに叩かれた。その衝撃で視力が戻った。

「変態!」

ソフィーだった。鬼の形相をしている。

「ソフィー・・・なぜそんなに怒ってる?」

信二は理由を考えた。女があんなに怒るのは・・・もしや!

「まさか・・・<あそこ>を揉んじまったのか・・・俺?」

ソフィーはコクリとうなずいた。

なんて事だ・・・遂に俺の人生も汚れちまった・・・

「すまない。ソ・・・」

信二が言い終える前にソフィーが押した。押された信二は床に倒れた。

「何するんだ!?」

信二の居た床に何かが落ちた。

「何だ?」

信二は直視した。

「まさか!」

アイビだった。

「くそ!逃げるぞ!」

アイビの両腕を封じていた拘束具は無かった。つまり、アイビの両腕は自由になっていた。

アイビは四つん這いで信二に走ってきた。あまりの速さに信二は驚いた。

速過ぎだ!このままでは食われるか、噛まれる!

本能がそうしたのか解らなかったが、信二は無意識にしゃがんだ。

信二の頭上をアイビは通り過ぎた。アイビは飛び掛ったのだった。

「あっぶね~」

だが、アイビは再び飛び掛った。今度は避けられなかった。信二は床に倒れ、アイビがのしかかった。

アイビは牙を信二に向ける。

もう駄目だ・・・お終いだ・・・。そう思った矢先、アイビは突然信二から離れた。

信二はアイビを見た。

ソフィーが、バットくらいの大きさの鉄パイプでアイビを殴っていた。

「この!この!この!」

ソフィーはアイビの頭や背中を集中的に殴っていた。

アイビはソフィーを掴みかかった。

信二はアイビに向かって全力疾走した。そして力一杯タックルを繰り出した。

2度目の不意打ちを受けたアイビは、信二に狙いを定めた。

そして、信二が反応できないスピードで信二の目の前までジャンプした。

「まず・・・」

信二はアイビに両腕で首を摑まれ、持ち上げられた。

ソフィーは鉄パイプを拾い上げようと手を伸ばしたが、腹を右足で思いっきり蹴られた。そして、3メートル先の壁に叩きつけられた。ソフィーの口からうめき声が漏れた。

信二は右腕に力を溜めた。狙いはアイビの左頬。信二は思いっきり殴った。

パンチはアイビの左頬に命中したが、鉄パイプほどの威力が無かったため、アイビは怯みこそはしたが、両腕は離さなかった。

アイビが牙を剥き出しにした瞬間、信二は自分の短い人生に終わりを感じた。


 だが、アイビは信二を噛み付かなかった。信二の顔を見つめていた。信二はアイビの考えを推理した。

俺をどう殺そうとしてるのか考えているのか?

だが、アイビは信二を放した。信二は、床に倒れ、力が入らなかった。

アイビは、壁に叩きつけられ、倒れていたソフィーへと向かった。

「やめろ!」

信二は立ち上がろうとしたが、本当に悪いタイミングで右足が攣った。

「くそ!」

信二は右足を引きずりながらアイビに向かった。

だが、アイビはソフィーの首を両腕で締め上げた。

「畜生!間に合え!」

だが、ソフィーの悲鳴が聞こえた。

「ソフィー!」

1発の銃声が部屋に鳴り響いた。

アイビの右腕が吹き飛んだ。アイビは絶叫を上げながら床に倒れた。

信二はソフィーに駆け寄った。

ソフィーの右肩から大量の出血をしていた。アイビによって右肩を噛まれたのだ。

「感染したのか」

信二は後ろを振り向いた。

「大輝先生!」

大輝が散弾銃ショットガンを持って立っていた。

「その銃は?」

「ああ、ベネリだ。狩猟用の散弾銃をちょっと改造した。日本でも免許さえあれば購入できる・・・かも」

「かも?」

「狩猟友人から譲り貰った」

信二はソフィーを隠すように立った。

「その散弾銃でソフィーを撃つのですか?」

「そいつが感染・・・ぐあああ!」

言い終える前に、大輝が叫んだ。

アイビが後ろから大輝の左肩を噛み付いた。大輝は振りほどいた。

アイビは再び大輝に噛み付こうと口を大きく開けた。大輝を散弾銃の銃口をアイビの口に突っ込んだ。

「すまない・・・許せ!」

大輝は散弾銃の引き金を引いた。銃声と共にアイビの頭はバラバラに飛び散った。沢山の頭蓋骨の欠片や脳みそが飛び散った。

「先生も・・・感染したのですか?」

ソフィーは痛々しい声で聞いた。

「ああ。遅かれ早かれ発症する。だが・・・」

大輝はポケットから注射器を出した。

「お前は発症しない」

大輝はソフィーの右腕を掴んで、注射するポイントを探した。

「それは何ですか?」

「抗ウイルス剤・・・いやワクチンかな。どっちでもがな」

「完成・・・してたんですか・・?」

「ああ。だが1本しかない。製造方法を記したファイルも燃えたからな。もう製造できない」

大輝はソフィーに針を向けた。

「ちょっと痛いぞ」

大輝はソフィーの腕を消毒し、針を刺した。

「いいんですか?・・・貴重な1本を私に使って?」

「いいさ。事の発展を作ったのは俺だ。俺は死ぬべき人間だ」

大輝は注射を終えた。

「ワクチンができたなら、なぜアイビにしなかった?」

大輝は、アイビの頭の無い死体に駆け寄って、注射器で血液を採取し始めた。

「ソフィーに刺した薬は感染した人の発症を止めるものだ。発症した人間を元には戻せない」

大輝はアイビの血液を信二に渡した。

「君達は生きろ」

信二とソフィーは大輝の左目を見た。黒目の部分が赤くなり、白目の部分が黒くなっていた。

「発症してるのか?」

2人は黙ってうなずいた。

「そうか・・・」

大輝は信二に散弾銃を渡した。

「どうするんですか?」

「自殺するに決まってる。だが、俺は弾1発の価値もない人間だ。自殺に銃を使ったら弾がもったいない」

「どうする・・・」

信二が質問を終える前に、大輝は自身の首を折って自殺した。

「先生・・・!」

階段から誰かが降りてきた。

水谷達だった。

「信二!大丈夫か!?」

信一は信二達に駆け寄った。

「感染したのか?」

信一はソフィーに聞いた。

「ああ。だがワクチンを打った。発祥することは無い」代わりに信二が答えた。

水谷は大輝の死体に寄った。

「首が折れてるな。即死だな」

「水谷さん。これ」

信二は血液を水谷に渡した。

「これは?」

「アイビの血液です」

水谷は、無線機を取り出した。

「こちら水谷隊長。任務を成功した。目標の血液を採取した」

返事が返ってきた。

『生け捕りではないのか?』

「専門家野村博士が生け捕りが不可能なら血液採取で十分だと言った」

『野村博士は?』

「感染、矢も得ず射殺した」

『了解。職員玄関へ向かえ。着いたら連絡を取れ』

「了解。交信終了アウト

水谷は信二達に向いた。

「さあ、転校の時間だ」

 グランド

また水谷から連絡が来た。

森泉は出た。

「何だ?」

『言い忘れましたが、非感染者生徒を4名を確保しました。この子達も連れて行きます』

「了解」

森泉は、部下のSAT隊員1人から報告を受けた。

「報告します。自衛隊第1特殊武器防護隊が到着しました。全員武装してます」

「では、やはり奴らは実行するのだな?」

「・・・はい」


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