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感染者の牙  作者: 岡田健八郎
34/40

怪物との死闘

信二は、はっと目を覚ました。

 目覚めれば、ベッドの上だ。

「今までのは夢だったのか・・・」

信二は突然笑い出した。

「はは・・・おかしな夢だった・・・ははは!」

だが再びはっとした。

「俺の部屋じゃない!」

信二の寝ていたベッドは天蓋付きだった。よほどの金持ちでない限り普通はない。

それに部屋が、教室2つ分ある。暖炉もある。薪が新しい。

「どういうことだ?」

信二は記憶をたどった。

確か・・・最後の記憶は感染者に連れて行かれた・・・

「俺は死んだのか・・・」

じゃあ、ここは天国か?

「死ぬのも悪くない・・・」

信二は再び眠りについた。


 立花は、エレベーターまで走った。

「まさか!感染者がここまで来てたなんて!」

エレベーターの光が見えた。

「だが、ソフィーと山田は居なかった。

「なぜなの!?なぜ居ないの!」

感染者が近づいてくる足音が聞こえる。

「もう!」

また走り出した。

エレベーターで上に戻ろうと考えたが、もし大勢の感染者が扉の前で待ち構えていたら・・・

無我夢中で走っていた立花だが、壁にぶつかった。

「痛っ!行き止まり・・・?」

懐中電灯を照らしてみると、ドアだった。

「もしかして!」

ドアノブを捻ってみると、見事にドアが開いた。

「やった!」

だが、感染者が近くまで近づいていた。

立花は部屋に入り、ドアを閉めて鍵を掛けた。

部屋の電気が点いていた。

中は本屋のように広く、沢山の本棚と本があった。

「第2図書室かな?」

そう考えていると、ドアの叩く音が聞こえた。

「隠れなきゃ!」

立花は、第2図書室・・・だと思う部屋の隅へ行き、本棚に隠れた。

ドアの叩く音がなくなった。

「行ったかな?」

立花は目の前の本の題名を見た。

<人間が死ぬとき>

「縁起が悪い・・・」

立花は後ろを見た。

「またドアだ」

鍵は掛かっていない。開けてみると、長い1本通路があった。

「怖いけど行ってみよう・・・」


 「まだですか?」

水谷は大輝に質問した。

「目の前にドアがある。簡単な鍵だ。開けてくれ。」

「石神」

「分かってます」

石神はキーピックを出した。

「どれくらいかかる?」

「暗いので、相当」

「なるべく早く」

石神が作業している間、残りの全員は警戒態勢に入った。

「石神、まだか?」

「もう少し・・・」

カチッ

「開きました!」

「よし。突入!」

全員、部屋の中に入った。

中は明るかった。

「ここは?」

「実験室だ」

中は、実験用具ばかりあった。部屋の東側の壁がなく、手すりがあった。

「このさ・・・」

大輝が言い終える前に何者かに飛び乗られ、手すりを越えて転落した。

「大丈夫か!?」

水谷は手すから、下を見た。

下の空間は闇が広がっていて、何メートルあるか分からなかった。

「くそ!案内人ガイドが落っこちた」

だが、何かが壁を這ってあがってきた。

「まさか・・・!」

アイビだった。

「全員銃を構えろ!」

水谷は、手すりから離れ、短機関銃を構えた。

「隊長!何がいたんです?」

「あの<化け物>だ」

アイビは手すりを越えて、実験室に侵入した。

「全員撃て!」

水谷が言い終わる前に既に全員、撃っていた。

だが、アイビはジャンプをし、天井に張り付いて弾丸を避けた。

信一は狙撃銃で狙いを定めた。アイビの頭を正確に狙った。

「チェックメイトだ。糞デビルゾンビ!」

引き金を引いた。

「勝った」

カチッ

銃口から火花は出ず、弾丸も出なかった。

「くそったれ!弾詰まりだ!弾が詰まった!」

水谷と石神が銃を撃った。

だが、アイビは天井を這って避けた。

「逃げ切ると思うな!」

石神が短機関銃を乱射した。

アイビの背中から血が噴出した。

アイビは、人間離れした悲鳴を上げて床に倒れた。

石神は、アイビに近づいた。

「死んでます。13発の弾丸を食らいました」

石神は報告した。

「じゃあ、注射器を探して、血が固まる前に採取しよう」

「はいたい・・・うわああああああ」

石神が、何かに足を引っ張られた。

アイビだった。

アイビは石神を引きずってダクトに入った。

「石神!」

水谷は、石神の腕を掴んで引っ張り出そうとした。

アイビは凄まじい力で引っ張っていた。

「隊長!俺は死にたくない!」

「大丈夫だ!死なない!」

「隊長!!早く引っ張ってください!お願いだ!死にたくない!」

水谷は必死に引っ張った。信一も手伝った。

「ぐあああ!糞!足を噛まれた!感染した!」

「大丈夫だ!ワク・・・」

石神の手が、水谷から滑り抜けた。

「隊長おおおおお」

「石神!」

水谷はダクトを覗いた。

「生きて食われるよりはマシだ!」

水谷はダクトに短機関銃を乱射した。石神に当たったかは不明だ。

「木馬!なぜ手伝わなかった!」

水谷は木馬に怒鳴った。

「隊長が命令しなかったから・・・」

水谷は一喝した。

「お前は小学生か!命令しなくても見れば助けが必要だと解るはずだ!!」

木馬は下を向いて黙り込んだ。

「人が話してるときは目を見ろ!!それでも特殊部隊隊員か!?」

水谷はヘルメットを脱いだ。

「これが現実か!?」

水谷は、近くの椅子を蹴り飛ばした。

信一は、水谷の肩を叩いた。

「今日1日で部下を2人も失って取り乱す気持ちは分かる。だが取り乱すな。今すべきことを考えろ」

水谷は、少し落ち着いた。

「・・・そうだな・・・」

「それに俺は弟を失った。気持ちはお前と同じだ」

水谷は冷静を取り戻した。

そうだ。こいつは家族を失った。俺よりもつらいはずだ。

「悪かった。取り乱して」

信一は注射器を持ち出した。

「奥に扉がある。あの糞を探し出そう」

信一は短機関銃を構えた。

「狙撃銃は?」

「壊れた」

水谷は装填した。

「木馬!今度は命令が無くても独断で判断しろ!」

「は、はい!了解!」

3人のSATは奥のドアを開けようとした。

「鍵が掛かってる。」

「どけ」

水谷は拳銃で鍵を撃ち壊した。

中はまた闇の空間だった。

「今度こそは」


 立花は1本道を歩き終え、奥の扉にたどり着いた。

「大丈夫よね」

扉を開いた。

部屋は何も無い広々とした空間だった。

部屋の中心に何か倒れている。

「あの人は!」

石神だった。

立花は石神に駆け寄った。あちこちに食いちぎられた痕があった。

「しっかりしてください!」

立花は体を揺らした。

「だ・・・誰・・だ。隊長か?」

「違います」

「この甘い声・・・ああ・・・立花・・だっけ?」

「はい」

石神は顔を上げようとしたが、力が入らなかった。

「何も・・・見えないな・・・」

「喋らないでください」

「た・・・頼みが・・あ・る」

「何ですか?」

「ほ・・ホルスターから・・拳銃を・・出してくれ・・手に・・感覚が無い」

「わ・・私には無理です」

「お前には撃たせない・・・そんな重荷を・・」

「どういうことですか?」

「お・・俺は感染してる。このままくたばればいいが・・その前に発症しそうだ・・」

「自殺する気ですか!?」

「ほ・・本来自殺はいけないが・・神様も赦してくれるさ・・」

石神は黙り込んだ。

「大丈夫ですか?」

「お・・おかしいな・・左目が見えるぞ・・」

立花は、石神の左目を見た。

瞳が真っ赤に光っていた。

「は・・発症して・・るか?」

嘘をついてもしかたない・・・・

「はい・・・」

「そうか・・だから見えてるんだ。」

石神は立花の顔を見た。

「可愛い顔してるな・・俺の妹みたいだ・・・」

「妹さんは?」

「死んだよ・・・中学生の頃に無差別殺人に巻き込まれて・・・」

立花は同情した。

「頼む・・人間として死にたい・・・拳銃をくれ・・」

立花は拳銃をホルスターから抜いて、石神の左手に握らせた。

石神は最後の力を振り絞って拳銃を自分の頭に向けた。

「見るな・・・あっち向け・・15歳以下鑑賞禁止だ・・・」

立花は後ろを向いた。

「ありがとう・・・立花ちゃん・・・」

石神は実の妹に話しかけるような愛想の良い声でお礼を言った。

「頭痛がする・・・死ぬのが怖い・・・日名子ひなこ・・そばにいてくれ・・・」


一瞬沈黙が続き、そして銃声がなった。


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