突破
2人は音楽室に戻った。
「大丈夫か?」
信一が真っ先に聞いた。
「化け物の正体が分かった」
「本当か?」
「アイビだ」
SATは信じられないと言う顔をした。
「つまり・・・あの化け物の血液を採取しない限り、ここから出られない」
水谷が冷静に言った。
すると、扉を誰かがノックした。
「助けて!」
山田の声だ!
信二は急いで扉を開いた。
山田、竹田が居た。
「大丈夫か!?」
山田は落ち着きを取り戻した。竹田は疲れて寝ていた。
「他に誰と来た?」
「途中まで大輝先生と居た」
水谷は質問した。
「今どこに!?」
「渡り廊下で、感染者と戦っている。」
「隊長!捕まえましょう!」
信一を残して、SATが廊下へ出た。
数分後
水谷達が大輝を連れて戻ってきた。
水谷は、大輝を椅子に座らせた。
「知っていることを全部話せ」
水谷が言った。
「何をだ?」
「とぼけるな!」
石神が銃で殴った。
「やめろ!石神!」
「でも隊長!」
「今はやめろ!」
水谷は聞きなおした。
「知っていることを全部話せ」
「お前達が知ることはない」
「あなた」
「百合・・・」
「話して。お願い」
大輝は深く息を吸った。
「分かった・・・何を話せばいい?」
「アイビの事。オリジナルタイプの事を」
「オリジナルタイプのデモーニョウイルスは、これまでのウイルスとは違った存在だった」
「どういう意味だ?」
「DVOは感染者と適合できれば、細胞、遺伝子、神経、身体能力など、全ての生体を突然変異・・・いや進化させるんだ。」
「そんな事が可能なのか?」
「今だ解明されてない部分が多い。つまり、謎だらけだ。自然発生したのか、人工的に開発されたのか、まったく不明だ。」
「まさに謎のウイルス」
「そもそもウイルスなのかも分からない」
「どういう意味ですか?」
「ウイルスは本来、細胞を持たない無生物だ。だが、DVOは細胞を持っている。」
「変異型は?」
「ない」
段々頭が混乱しそうだ。
「アイビは?」
「アイビは、DVOの唯一の適合者だ。猿で実験したが、全部適合せずに狂暴化か、適合してもウイルスの強制進化に耐えられずに死亡するかのどちらかだ。」
「つまりアイビは進化したと?」
「これからも進化する」
音楽室の扉に誰かノックした。
「誰か居ませんか?」
野村の声だ。
水谷達は、扉を開けて、野村を中に入れた。
「博士!今までどこに?」
「そんなことよりも、少年は?」
「見つかりません」
「なら、アイビを探しましょう。」
「アイビを居場所を?」
「アイビの棲家なら知っているぞ」
答えたのは大輝だった。
「この学校の地下に居る」
「行き方は?」
「エレベーター」
「エレベーターは北校舎にある」
「皆準備しろ!」
全員、準備し始めた。
信二は大輝に駆け寄った。
「先生・・・鳥円を撃ちましたか?」
「いや、会ってさえいない」
「しかし鳥円は撃たれて死にました」
大輝は深呼吸した。
「誓ってもいい。俺はだれも撃ってない」
「いいか?エレベーターまでつっ走る。遅れた奴は置いていく」
水谷達SATが先頭を立った。
「行くぞ!」
全員、廊下に出た。
階段の上と下から感染者の集団がやって来た。全員、目が真っ黒に染っていた。
「逃げろ!相手にするな!」
中村が転んだ。
「助けてくれええええええええ」
中村は、感染者達に飲み込まれた。
全方からも、感染者の集団が来た。全員、目が赤かった。
水谷、石神は短機関銃、信一は狙撃銃で攻撃した。
後方では、信二、山田、大輝、竹田、百合、ソフィー、立花が応戦していた。
「全滅したぞ!走れ!」
再び、全員走り出した。
渡り廊下に着いた
竹田の体力が無くなった。
竹田はポケットから何かを取り出した。
ダイナマイトだ。
「なぜ!それを」
「教材室にあった」
「そんな無茶苦茶な!」
竹田は、ダイナマイトを消火器に付けた。
信二と竹田以外は、エレベーターに向かった。
「僕は自爆する」
「よせ!やめろ!」
だが、竹田はマッチで点火した。
巻き添えを恐れた信二が走り出した。
「死んでいった友人達の仇だ!」
竹田はダイナマイトを付けた消火器で感染者の集団に立ち向かった。
信二は走っている最中に爆音を聞いた。
「早く!信二君」
全員、エレベーターに乗っていた。
信二はエレベーターに乗った。
大輝は、地下2階のボタンを押した。
エレベーターの扉が閉まり始めた。
大勢の感染者の腕がエレベーターの扉に挟まった。
「死にやがれ!」
石神が、扉の隙間に短機関銃で乱射した。
だが、1人の感染者の腕が信二の腕を掴み、引っ張った。
「「「信二君」」」
ソフィー、立花、百合が信二のもう片方の腕を掴み、引っ張った。
水谷、石神が短機関銃で、信一が狙撃銃で、大輝と野村が拳銃で扉の隙間を撃った。
だが、信二は感染者達に引っ張れれていた。
「踏ん張って!きっと助ける!」
ソフィーが叫んだ。
「くそ!駄目だ!持たない!」
信二は、感染者達に扉の向こうへと連れてかれた。
扉が閉まり、エレベーターが下り始めた。
「信二君!」
ソフィーは叫んだ。
だが、信二は感染者に連れて行かれた。その瞬間を見た。
ソフィーの悲しみが頂点に達した。
目から涙が流れ始めた。
「信二君・・・」
立花は、もう泣きたくても泣けなかった。
エレベーターは静かに、下った。