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感染者の牙  作者: 岡田健八郎
31/40

<化け物>

これまでの登場人物

 生徒

相沢信二

ソフィー・ヴェルネ

立花裕香


 生徒(行方不明者)

山田太郎

竹田優


 生徒(感染者)

岡本紘輝:生死不明

栗山仁:撲殺

上田:生死不明

火野勇也:首の骨折

栗山の兄:生死不明

是田:射殺


 生徒(死亡者)


伊藤海咲:撲殺

和真鳥円:直接的な死因は銃撃

野田良助:誘拐


 SAT

相沢信一

水谷達也

石神哲也

木馬将也

瀬木一郎

 SAT(犠牲者)

火野勇也:自殺


 職員

黒木百合

中村大助

黒木大輝:行方不明

 職員(感染者)

川口:首の骨折


 自衛隊

前原健二

坂田龍

新田家摸


 その他

野村たけし:行方不明


 

追加登場人物

謎の男・・・27話にて鳥円を射殺|(この時点ではまだ生存していた)した人物

<化け物>・・・石神が2度遭遇した。他の感染者とは別物の正体不明の怪物



音楽室前の感染者の集団が過ぎて行った。

「あの化け物はなんだったんだ・・・」

水谷は、まだ信じられなかった。

「天井を這うなんて・・・」

木馬は震えていた。

「隊長、理科室へ行きましょう」

石神が提案する。

「一体何のために?」

「あそこは、ろくに調査してなかった。もしかしてあの化け物の事を記したファイルか何かあるのでは?」

「賭けてみる価値はありそうだな」

「生存者は音楽室で待機してもらいましょう」

水谷達が出撃準備した。

「待ってください」

信二が言った。

「何だ?少年?」

「何も。あなた達が行く必要は無い」

「どういう意味だ?」

「たぶん、あなた達はここの学校の事をよく知らない」

「確かに。そうだな」

「でも、俺はこの学校をよく知っている」

「そうだな」

「あなた達は感染者と遭遇したら、戦ってしまう」

「場合によっては」

「俺が行きます」

水谷は、驚いた。

「だめだ!危険だ」

「では、もしあなたが感染者と遭遇して逃げようとする」

「ああ」

「でも、重い装備で身軽に動けないし、速く走れない」

水谷は、信二の言い分が正しいことに気づいた。

「でも、俺は身軽だから、感染者から逃げ切れる自身はある。」

水谷は、考え込んだ。

「それに、俺はこの学校の事をよく知っている。いざとなれば教室に逃げ込めばいい。」

「だが・・・」

「それに、あなた達は大人だ。大人の体格では入れない場所もある。」

「だが、それでも危険すぎる」

「俺は大丈夫です」

水谷は、考え込んだ。こいつの勇気は認めよう。こいつの言い分も正しい。ここは・・・

「分かった、任せよう。無線と拳銃を渡す。何かあったら無線で連絡を取ってくれ。」

「分かりました」

「助けが必要になっやら、無線で位置を教えてくれ。助けに行く」

「分かりました」

「そういえば」

木馬が言い出した。

「そういえば?」

「あそこの部屋の資料は、確か全部外国語だった」

「英語か?」

「いいえ。たぶん、スペイン語かタガログ語か、分かりません」

困ったな。SAT全員、英語は分かるが、それ以外の言語は分からない。

「なら、私もついて行く」

ソフィーが、名乗りをあげた。

「ソフィー?」

「私は、親に外国語を勉強されました。英語、ドイツ語、ロシア語、イタリア語、タガログ語など」

「じゃあ」

「たぶん読める」

「よし。信二、ガールフレンドをちゃんと守れよ」

「無事に戻れよ」

バール、拳銃、無線を持った信二とソフィーは音楽室から出た。鍵が閉まる音がした。

信二とソフィーはまず、渡り廊下へ向かった。

半壊したバリケードを越え、理科室へ向かった。

何も出会うことなく、理科室にたどり着いた。

「変だな・・・」

「何が?」

「感染者がまったくっていいほど居なかった。」

「こっちには都合がいいじゃない」

「まあな」

理科室は開いていた。

慎重に中を見たが、何も居なかった。

すぐに理科室に入り、ドアを閉め、鍵を掛けた。

理科室の奥にまたドアがあった。

2人は、マッドサイエンティストっぽい部屋に入った。

「うわ~・・・B級ホラーのマッドサイエンティストの部屋だよ」

ソフィーが言った。

確かに気味が悪い。

信二は、パソコンを乗っけた机を見つけた。

引き出しに、資料ファイルと書いてあった。

机の上には、沢山の資料が散らばっていた。

全部外国語で書かれている。英語じゃないのは確かだった。

「何語だ?」

「すごいよ!英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、タガログ語、とにかく色々!」

こいつ・・・本当に天才だな。

「この人は天才だよ!」

「ああ、大輝先生は天才だ。」

「え?何で分かった?」

「資料の最後には、ローマ字で大輝と書かれてる」

「本当だ」

「この資料には、ブラックツリーと書かれてる。ブラックは黒、ツリーは木。だから、黒い木・・・黒木」

「確かに・・・」

信二は引き出しを開けた。中には、ファイルが山のようにある。

全部取り出した。

「1つ1つのファイルの題名を見て、怪しいものがあったら言ってくれ」

ソフィーはファイルを確認し始めた。

引き出しの奥に、ディスクとテープがある。近くに録音機があった。

信二は録音機のテープを入れ替え、再生を押した。

『恐れていた事態が発生した。アイビが逃げ出した。学校内に居るのは確かだが、見つからない。

さらに、タイプ2とタイプ3の試験管が割れていて、ネズミがそれを食って逃げ出した。このウイルスは異種への感染は無いが、ネズミの体に付着したウイルスが、ネズミを通して霊長類に感染する恐れがある。近いうちに<バイオハザード>が発生する危険性がある。』

テープはまだ続いた。

『ネズミ達は、学校に巣を作っていることが判明した。バイオハザードを最小限に食い止められる。

 だが問題はアイビだ。彼女が消えて1週間が経つ。一体どこに居るんだ?』

信二は、自分の心から、怒りが溢れるのを感じた。

『・・・・・アイビだ!アイビが天井を這っている。ありえない!ゴキブリ並みの速さだ!麻酔銃で捕獲しようとしたが失敗した!彼女が今もこの学校に居る!』

しばらく雑音が続いた。

『・・・終わりだ。ついにバイオハザードが発生した。このことを予測して、情報を自衛隊と警察に漏らしたのは正解だった。もうすぐこの学校は特殊部隊封鎖される。この学校の生徒には悪いが、大流行パンデミックを防ぐための犠牲になってもらう。恐らく半日で生徒の大半は感染するだろう』

また雑音だ。

『もはや、この学校は絶望的だ。生徒の3分の1は感染した』

再び雑音

『・・・非感染者はもう少人数だ。しかも栗山という生徒が発症し、皆行方不明だ。もう誰も助からない。何もかも終わりだ。SATが突入したようだが、何もできずに死ぬだけさ』

そして、テープが止まった。

信二は最初まで巻き戻し、今までの記録を無線だ水谷達に聞かせた。


『まさかな・・・こんな事になるなんて』

全員動揺していた。

「信二君!あった!怪しい資料が!」

「読んでくれ!」

「で・・・デモーニョウイルスは・・・適合した感染者を・・・し・進化させる・・・それがオリジナル」

「続けて」

「たいがいの・・・え~と・・・たいがいの感染者は適合あるいは・・・えっと・・・ウイルスによる強制進化に耐えられずに・・・ただ狂暴化するか、死亡する。アイビは・・唯一の適合者だ」

適合者?

「アイビは・・・最初こそは、理性を保ったが・・・時間が経つのつれ・・・知能が低下した」

なるほど。

「分かりましたか?水谷さん」

『ああ。もう戻れ』

言われなくても。だが、理科室を何者かが開けようとしている。

「隠れろ!」

信二は小声で言った。

「でもどこに?」

「エアダクトがある。そこに入ろう」

信二はソフィーにエアダクトを最初に入らせた。信二が入ると同時に、理科室の扉が開いた。

信二は、エアダクトの入り口から部屋を見渡した。

顔を覆い隠すマスクを付けた自動拳銃を持つ男が、部屋に入ってきた。

男は資料を荒らし始めた。

信二は、拳銃を構えた。

男が、机や椅子などを蹴って苛立ちを見せる。

部屋にはお求めの物が無かったらしく、すぐに出て行った。

信二は、男が出て行った数分後にエアダクトから出た。

「あいつは何を探してるんだ?」

「これじゃない?」

ソフィーは分厚いファイルを見せた。

「何だそれ?」

「デモーニョウイルス・オリジナルタイプって書いてある」

なるほどね

「とにかく、そのファイルを持って音楽室に行こう」

2人は理科室から出た・・・瞬間にソフィーが天井から首を絞められる。

「うっぐ!」

<化け物>だった。

「くそ!」

<化け物>は凄まじい握力でソフィーの首を絞めていた。

信二はバールで<化け物>の右腕を殴った。

<化け物>はうめき声を出してソフィーを放した。

<化け物>は、天井から降りて、二本足で立った。信二と<化け物>が対峙した。

信二は、改めて恐怖を感じた。

<化け物>の姿は異様だった。顔には布切れ・・・ではなく、人の顔の皮を沢山顔につけていた。素顔はできないが、人の顔の皮で作られたマスクに裂け目ができていて、その裂け目から左目が見える。

目は、本来白い部分は黒く、瞳は赤かった。青い服を着ていて、所々破れていた。両腕は拘束具を付けており、左足は足枷あしかせを付けていた。まるで囚人だ。左肩は露出していた。

本来なら、肩の露出は嬉しいことだが、この<化け物>の左肩は、大量の目玉が、ぎょろりとしていた。両手両足は猛獣のような爪が生えていた。


 「本物の化け物だ・・・」

信二は今日見てきたどの感染者よりも恐ろしく感じた。

<化け物>は本当に恐ろしい奇声を上げた。

「怪物め!」

信二がそう言うと、左肩の目玉達が、信二を直視した。

気持ち悪い。信二はそう思った。

<化け物>は信二に走りかかった。

信二はバールで殴ろうとしたが、向こうは両手の拘束具で跳ね返した。

バールは信二の手から滑り落ちた。

信二は拳銃を構えた。

だが<化け物>は、ジャンプして天井に張り付いた。

「くそ」

信二は狙いを定め、引き金を引いた。

だが、思ったより反動が強く、1発目は、目標を大きくはずした。

<化け物>は天井を這い、信二の目の前で降りた。

信二は拳銃で応戦しようとしたが、向こうは拘束具で、信二の頭を殴った。

殴られた信二の意識が飛んだ。

化け物は、信二の右足を掴み、どこかへ引きずり連れて行こうとした。

信二は意識を取り戻したが、体が思うように動かなかった。

もう駄目だ!信二はそう思った。


 だが、<化け物>は突然信二を放し、苦しみだした。

良く見れば、背中から煙が揚がっていた。

「大丈夫!?」

ソフィーが駆け寄った。

「お前、一体何をした?」

「理科室の薬品の1つ、硫酸を投げてやったの」

「ナイス・・・拳銃を拾ってくれ」

ソフィーは信二に拳銃を渡した。

背中の服が溶け落ちて、背中が露出した。背骨がむき出しになっていた。

<化け物>は信二達に向いた。

首にドッグタグらしい物が付いていた。信二はその名前を確かに見た。

<化け物>は天井に張り付いて、這って逃げて行った。

「あの化け物は一体何?」

信二は立ち上がり、答えた。

「あれが<アイビ>だ」


 グランド

自衛隊員が、テントに入った。

「報告します。前原一等陸佐殿」

「報告しろ」

「心臓麻痺で新田が死んだ」

「!?」


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