遭遇
美術室から出た信二達は、階段から降りてくる立花を見つけた。
立花は泣いていた。
「どうした?立花?」
「紘輝君が・・・」
まさか!
「彼が・・・」
「感染した?」
立花はうなずいた。
まさか・・・あいつが・・・俺の唯一の親友が・・・
「紘輝君・・・」
ソフィーはこの事実に大きなショックを受けた。
信二に限っては、事実を受け止められなかった。
「あいつが感染するはずない!」
「真実よ。受け止めなさい」
百合は言った。
「それに、一番つらいのは、あなたでなく、一緒にいた立花さんよ」
信二は、落ち着けと自分に言い聞かせた。
だが
「くそ!くそ!くそったれええええ!」
と言いながら、美術室の扉を蹴りまくった。
「鳥円、海咲に続いて今度は紘輝か!一体何人犠牲にする気だ!神は!」
「おーい」
中村が来た。
「おい!美術室に居た生存者は?」
「栗山のうんこったれのせいで行方不明」
「そうか・・・」
すると、階段から奇声が聞こえた。
栗山仁が、這いずりながら階段を降りてきた。
「あの、世界で最低の糞が!!」
信二は、這いずる栗山に駆け寄った。
「てめーのせいで!」
バールで背中を殴った。
「海咲が!」
もう一発殴った。
「紘輝が!」
さらに殴った。
「どうしてくれるんだ!!」
信二は無茶苦茶に殴った。
栗山は、殴られるたびに苦痛のわめき声をあげた。
気が付いたら、栗山の体は原型を留めてなかった。
「はあ・・・はあ・・・」
信二は怒りは沈まなかった。
渡り廊下から、走る足音がいた。
信二と中村は武器を構えた。
だが、ライトの光が3つ見えた。
「生存者か?」
光が近づいてくる。
「隊長!人です!」
3人の正体が分かった。
SATだ。信一とほぼ同じ格好をしている。
「君達、感染してないか?」
全員、うなずいた。
「よし・・・分かった」
3人は銃を下ろした。
階段の上から足音がした。
SAT3人は銃を構えた。
信一だった。
「お前は誰だ?」
「相沢信一。屋上狙撃手だ。」
「なぜ校内に居る?」
「ヘリコプターが墜落してきてな、危機感を感じてとっさに校内に避難した。」
4人とも銃を下ろした。
「まあいい。戦力になる」
すると、渡り廊下から、感染者の軍勢が来た。
「早く美術室の中へ!」
全員、美術室に入り扉を閉め、鍵を掛けた。
扉を叩く音がした。
「あ・・・あの・・・皆さんはなぜ校内に居るんですか?」
ソフィーが訊ねた。
「野村博士の護衛で来た。アイビという女性を探しに来た。もっとも博士は行方不明だが」
アイビ・・・やはり大輝の言っていたことは本当だったのか。
「俺は水谷、隊長だ。隣は石神、副隊長だ。その隣は木馬、新人だ」
新人とは頼りない。
「それより少年を探してる。」
「どんな特徴だ?」
「小柄で、めがねを掛けている、いかにもオタクって感じの少年だ」
鳥円か!
「その少年は試験管を持っている。その試験管はとても大事で、それがないと、外に出られない」
「じゃあ。捜索しよう。」
感染者はもう、扉を叩いてない。
扉を開けた瞬間、誰か立っていた。
「野田!」
「連中は突然北校舎へ走って行ったぞ」
急に?なぜだろう?
「とにかく、生存者は多いほうがいい。」
水谷はそう言った。
「体勢を整うよう。俺と石神は先頭に立つ。木馬と相沢は後尾に立て。」
SAT以外の人は、SATの真ん中に立った。
「まずはこの校舎を捜索しよう。」
信二達は、階段を駆け上がり始めた。
3階
3階の階段の手前にパソコン室があった。
「まずは、この部屋からだ」
石神がドアを開けようとした。
「鍵が掛かってます」
「できるか?」
「単純な鍵穴ですね。できます」
石神がキーピックで鍵を開け始めた。
「この間は警戒態勢だ。」
「もう開きました」
「早いな」
パソコン室に入った。
隊員達と中村が、ライトで部屋中を見渡した。
「パソコン以外何もありませんね」
その瞬間、上の階から音楽が鳴り響いた。
「あの曲は<エール>ですね」
「ああ。いきものがかりの・・・じゃなくて止めて来い」
「なぜです?」
「あの音楽を聴きつけて感染者が集まってくるかもしれん」
「俺が行きます」
石神が階段を駆け上がった。
「石神、どうだ?」
『音楽室があります。変ですね。扉が開いてます』
「音楽はどこからだ?」
『音楽室です』
「消せ」
『パーティーの最中かも』
音楽が止まった。
『ひき・・・』
「どうした?」
『またあの<化け物>だ!』
「今すぐに行く!」
水谷は、全員を連れて音楽室に向かった。
石神は、廊下に出ていて音楽室の扉を閉めた。
「石神!<化け物>は?」
「音楽室に閉じ込めた!」
「木馬、相沢来い!」
水谷、木馬が短機関銃で、信一が狙撃銃で扉の前で構えた。
「石神、開けろ」
石神はゆっくり扉を開けた。
「突入する!後に続け」
水谷、木馬、信一の順に音楽室に入った。
『石神、何も居ないぞ』
「そんな馬鹿な!」
石神も入った。
信二達も気になって入った。
「確かに中にいたはずだ!」
「でも居ないぞ」
信二は状況を掴めなかった。石神が音楽室で<化け物>を見つけて、音楽室に閉じ込めた。
だが、その<化け物>は居なかった。
「アレは幻覚じゃなった。」
「でも居ないぞ」
「じゃあ、幽霊を見たとでも言うのですか!?」
「もしくはゴキブリのように逃げたか」
野田は、質問した
「お兄さん達。その<化け物>は何なんだ?」
石神が説明した。
「顔は、分からん。布切れみたいなのを被っている。手は拘束具をつけていた。片足は鎖をつけていた」
「じゃあ、<化け物>はまだ教室内にいるじゃない」
言い終わると同時に野田が空中に浮かんだ。
野田が天井に居る<化け物>に連れ去られた。
「くそ!撃て!」
<化け物>は野田を連れて、天井を這いながら音楽室を出た。
「本当にゴキブリみたいな奴だ!!天井を這うなんて!」
信二は信じられなかった。
一瞬で野田を連れ去りやがった。しかも天井を這うなんて!
廊下から、感染者の軍団がやって来た。
「扉を閉めろ!」
木馬は扉を閉めて鍵を掛けた。
本当にこの学校に何が起きたんだ?