表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感染者の牙  作者: 岡田健八郎
27/40

感染者の牙

鳥円は、2階校長室で隠れていた。

さっき6階で試験管を拾った。SAT達が持っていたものだ。銃が恐くて逃げ出してしまった。

隣から話し声が聞こえる。

校長室と職員室は直結しているから、職員室に入るドアがあった。一応鍵は閉めた。

「隊長。隣は校長室です。」

「入ってみよう」

やばい!鳥円は校長室の机に隠れた。校長は椅子に座ったまま死んでいる。

「駄目です。鍵が掛かっています」

「石神。できるか?」

「鍵が複雑です」

「仕方ない」

諦めてくれ。鳥円はそう願った。

ドアノブが壊れる音がした。

「隊長。男性が座ってます。」

「確認してこい」

誰かが机にやって来た。お願い。ばれないで!

「死んでます。机の上に睡眠薬があります。たぶん、睡眠薬の過剰摂取で自殺したと思います」

「よし。ここには何もない」

「隊長。博士を捜索しましょう」

隊員達が、廊下へのドアの鍵を開け、出て行くのを聞いた。

良かった。気づかれずに済んだ。

だが突然校長が立ち上がった。

いや、持ち上がったのだった。

鳥円は顔を出して確認しようかと考えた。

だが、何かが校長を食べる音がした。

血が天井から垂れてくる。天井に何か居るのか?

鳥円は天井を見てみた。


 美術室

信二と信一以外全員睡眠を取っていた。

「信二。お前も寝ろ」

「いいの?」

「今のうちに寝ておけ」

「やめとく」


信二は、はっと目を覚ました。美術室には信二以外誰も居なかった。

俺を置いて皆どこかへ行ったのか?

信二は美術室を出た。

生徒玄関に行ってみると、扉が開いていた。

外へ出た。

綺麗な青空が広がっていて、太陽が堂々と輝いていた。

だが、誰も居ない。

校門を出てどの家を訪ねても誰も居ない。

皆どこへ行った?

だが、気づいた時には大勢の感染者が自分を囲んでいた。

「誰か助けて!」


 信二は、はっと目を覚ました。

辺りを見渡した。ちゃんと全員居る。いつの間にか夢を見たんだ。

「大丈夫か?」

信一がいた。

「うなされていたぞ。悪夢を見たな?」

信二は、冬なのに汗をべったり掻いている自分に気づいた。

皆の顔を見た。

ソフィーは、無邪気な子供のような寝顔をしていた。

野田は、熱い寝顔をしていた。

山田は普通だ。

竹田は、ゲームをしているような寝顔をしていた。

海咲は難しい顔をしながら寝ていた。

紘輝は、十字架を握りながら寝ていた。

立花は、紘輝の肩に寄せて寝ていた。幸せそうな寝顔だ。

栗山は不安そうな寝顔だ。

皆それぞれだな。


鳥円は無我夢中で走っていた。

何だよ!あの<化け物>は!?

鳥円は天井を見た。

もう追ってない。大丈夫だ。

鳥円は試験管のラベルを見た。

「DVO?」

鳥円はノートパソコンを取ってインターネットで調べようとした。

「それを渡せ」

前方に拳銃を持った男が立っていた。顔全体を隠しているマスクを被っていた。声がおかしい。ボイスチェンジをしているな。

持っている拳銃はコルト・ガバメントだ。

「渡したら?」

「お前を助けてやる。」

鳥円は信じなかった。なら、わざわざ正体を隠す必要ないのに・・・

それに、引き金を引こうとしている。

助けてもらえない。そう思った。

逃げようと思った。

だが銃声がとどろき、腹に銃弾が突き刺さった瞬間、焼け付く熱さを感じた。

鳥円は床に倒れた。胃を撃たれた。腹腔へ漏れ出した胃酸によって、中から徐々に体が侵されていく。

鳥円の命も残り十数分だ。

鳥円は力を振り絞って試験管を割った。

「なんて事を!」

男が駆け寄っていく。

「苦しみながら死ね」

男が鳥円を蹴り飛ばし、去っていった。

鳥円は人生最後の十数分を無駄にしたくなかった。

パソコンで、ネット小説編集ページを開いた。

苦痛と闘いながら、タイピングした。


<あらすじ:この物語は真実です。大羽中学校封鎖の真実を書きます。>

<作者:和真鳥円>

鳥円は、題名を消し、新たな題名をうった。

<感染者の牙>

鳥円は咳き込んだ。投稿をクリックした。

<この小説は投稿されました。反映まで時間がかかります>

鳥円は安心した。これで真実は、ネットワークを通じて世に配信される。

意識が薄れてきた。死が迫っている。

「死にたくないよ・・・ママ・・・ママ・・・ママ・・・ママ・・・」

だが、瀕死の鳥円の横に、感染者が立っていた。

感染者は、牙を鳥円に向けた。

そして・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ