突入
水谷部隊が北校舎の玄関前に立っていた。他の隊員2名が職員玄関を開けた。水谷部隊と野村が中に入ると同時に、扉が閉まった。
中は完全に真っ暗だ。
水谷部隊は、胸に装着しているフラッシュライトを点けた。野村は持参の懐中電灯を点けた。
「いいですか?感染者との接触は極力避けてください。」
野村は注意した。
「よし!俺と石神は、先頭に立って前方を警戒する。火野と木馬は後尾に立って後方を警戒しろ。野村博士は真ん中に居てください。」
水谷の部隊は階段をゆっくりと上がった。
2階に着いた。
「職員室です。隊長」
石神が小声で囁いた。
「俺が職員室の中を見てくる。お前達は、ここで待機しろ」
水谷は、職員室に入っていった。何かにつまずいた。
死体だった。大勢の死体が職員室にたまっていた。
「吐き気がしそうだ・・・」
職員室を見渡したが、死体以外何も無い。
すると、廊下の奥から叫び声がした。
水谷が、すぐに職員室を出た。
「どこからだ!」
「廊下の奥の図書室です。」
「火野!お前が行け!無線はオンにしておけ!」
火野が、図書室まで慎重に歩いていった。
火野の声が、無線から聞こえる。
『隊長!今図書室の扉の前に居ます』
「入れ」
『見渡しても、誰も居ません』
「よく調べろ。叫び声は図書室から聞こえたんだ。油断するな!」
『少年だ!少年が少女を食っている!』
野村は水谷の無線を奪った。
「感染者だ!射殺しろ!」
『自分には無理です!撃てません!わあ!こっちに来るな!わああああああああああああ』
水谷達は全力で図書室に向かって走った。
「火野!今行くからな!」
図書室に入ると、少女が火野に掴み掛かり、火野が必死で抵抗していた。
「隊長!こいつをどうにかしてください!」
水谷は少女を後ろから抱きつく要素で拘束した。そして少女を床に叩きつけて、足で少女を押さえつけた。
「何してる!?撃つんだ!早く!」
全員、銃こそ向けているが、引き金を引けなかった。
「撃つ必要ないでしょ!まだ少女だ!生徒なんだぞ!」木馬が反論した。
「違う!怪物だ!」
野村は、水谷のホルスターから自動拳銃を奪った。それで、少女の頭を撃ちぬいた。
全員、言葉が出なかった。野村は拳銃を黙って水谷に返した。
だが、廊下から恐ろしい奇声が聞こえた。
木馬が廊下を見てみると、大勢の生徒が奇声を上げながら、図書室に走ってきた。
木馬は反射的に扉を閉め、鍵を掛けた。
扉の叩く音が、聞こえたがいつの間にか止んだ。
「博士!これは一体何なんです!?」
水谷が怒鳴って質問した。
「外で説明した通りだ。」
「確かに狂犬病みたいだとは聞いた。だが、あそこまで狂暴だなんて!人を食ってたぞ!」
「君らは、与えられた任務は遂行すればいい」
「あんなのが相手だとあんたの身は守れない!俺達の身も!」
「銃で撃ち殺せばいい」
水谷は、冷静を取り戻した。
「いいか?博士。俺達SATが、学校を封鎖するなんて普通はありえない。さらに、テログループでもない生徒、職員に対する射殺許可なんて、前例にない。リアリティーが無さ過ぎる出来事が起きている。
任務は遂行していい。だが、知っている事を全部話せ。全部な!」
野村は、しばらく考え込んだ。
「アイビの事は話したな?」
「オリジナル型の感染者だろ」
「実は、彼女には、免疫がある。変異型も含めて」
「だから、彼女が欲しいだろ」
「ある科学者が、彼女を独占し、ここに連れてきた。」
「少女の事は探す。だが、感染者について教えてくれ」
「感染者は、体の全箇所が活発化している。心臓を撃っても、約5分間は活動する。一発で沈めたいなら、頭を撃て」
「少女の居場所は?」
「それを探す」
水谷は舌打ちした。
「隊長、感染者がいなくなりました」
木馬が報告する。
「彼女を見つけたら、ここから出れるんだな?」
「私が任務終了を外に伝えない限り、誰も出られない」
水谷部隊は体制を立て直した。
「教室1つ1つ確認しよう。」
図書室の扉を開けた。
その時、職員と思われしき感染者が立っていた。
水谷達は銃を反射的に撃った。
5発の弾丸が、感染者の腹部と頭部を貫いた。
「今の銃声でやって来るかも。早く移動しよう」
水谷達は走り出した。