友人達の夢
信二は、廊下を歩いていると、竹田優に会った。
「信二!教室待機だろ!」
丁度いい。こいつと話をしよう。
「優。ちょっと話をしよう」
「え!?」
信二と優は階段に座った。
「優。お前何か夢はあるか?」
「え?何?どういうこと!?」
「だから、将来の夢はあるか?」
「何だよ。突然。気持ち悪いな。」
気持ち悪い。当然だよな。今まで他人に興味が無かったからな。
「あるよ。今までは2つだったけど、今は1つ。」
信二は黙って聞くことにした。
「1つ目の夢は、自衛隊に入りたかったんだ。でも諦めた。だって、僕心臓病になって、体がとても弱いんだ。だから、厳しい訓練に耐えられそうにない。」
なるほど。
「2つ目は・・・」
「2つ目は?」
「親孝行することなんだ。今まで、頑張って育ててくれた親に、とても感謝してるんだ。だから、親孝行がしたかった。」
したかった?
「母さんは、言ってくれた。「一生懸命生きて、一生懸命働いて。家族をつくって。それが、子を持つ親の最高の親孝行だから」てね」
最高の親孝行。
「でも、僕は人の役に立ちたい。だから、今の夢は医者になること」
医者か
「でも僕馬鹿だから。」
「馬鹿でも、医者にはなれるぜ」
「えっ?」
「お前は<アドルフ。ヒトラー>を知ってるか?」
「20世紀最悪の独裁者だろ?」
「確かに最悪の独裁者だ。だが、お前は彼の人生の前半部分、つまり、首相になる前の事を知ってるか?」
「知らない」
「彼は、きちんとした教育を受けたことがなかった。2、3年の実業学校では、悪い点数しかもらわなっかた。そんな彼だが、なんだかんだで首相になった。だからお前だって、医者になれるはずだ。努力だよ。世の中努力だ。」
「信二…」
「勉強ができなかったら、俺が教えてやる。だから諦めるな」
優は少し泣き目になった。
「ありがとう・・・」
優の事は分かった。あいつも苦労人だったな。教室に入ると山田が目に入った。
「山田、話をしよう。」
そう言って、山田を階段に連れて行き、座った。
「山田、何か夢はないか?」
山田は即答えた
「ある!」
いつもの山田じゃない・・・
「それは、何だ?」
「サラリーマンになって、家族をつくりたい。4人家族がいいな。会社では進級して部長になりたい」
・・・
「普通すぎる!!」
「何で怒るの!?」
「普通すぎるからだ!スケール小さいんだよ!」
沈黙が続く。
「実はもう1つ夢がある!」
「何だ?」
「個性豊かになること。僕は成績、運動神経、成績、体重、身長、座高、全て平均なんだ。顔も髪型も普通すぎる。誰も僕なんか印象に残んないよ。「オール平均君」としか覚えてくれないよ」
さすがの同情してしまう。
「俺は友人を滅多に作らない。俺の友人でいられることを誇っていいぜ。結構気に入ってるぜ。お前の事」
「おりがとう!君の事が大好きだよ!」
大好き?
「まさか・・・お前!」
「しまった!僕が<同性愛者>だってことがばれた!」
「ホモかよ!」
さすがに引くぞ。これ。
再び沈黙が続く
「そうなんだ。僕はホモなんだ。君に初めて会った時から一目ぼれしたんだ。」
「ま・・・まあ、アレだ。お前も個性がついた。めでたいな!これからもよろしく!ホモ君」
「うん。よろしく♪これは秘密でね」
俺達は握手した。
「野田ああああ!男なら見張りに付け!」
野田が来た。丁度いい。話をするか。
「野田。話がある」
「信二!男なら拳で語り合うんだ!」
しょうがない。今回は野田のノリに付き合うか。
「食らえ!野田!!」そう怒鳴って、野田の顔を拳で殴った
「いいぞ!その調子だ!だがその程度は効かん!」
殴り返された。
「野田!お前の夢は何だ!!」そう怒鳴って、さっきより強く殴った。
「ボクシングだ!」そう怒鳴られて殴りかえされた
「熱いな!」と言って殴った。
「ロッキーのように熱くなる!」殴られた。
「何でそんなに熱いんだ!」と言って殴った。
だが、殴り返されなかった。
「そうか、お前は知らないのか。ちょっと座って話そう」
いつもの野田らしくない。俺は黙って言う事を聞いた。
「俺が熱血男になったのは、中学に入ってからだ。」
意外だな。
「小学校の頃はどちらかと言うと地味だった。熱血なんか嫌いなほうだった。」
ますます意外。
「だが、ある一言が俺の性格を変えた。当時、俺には4歳年下の妹がいた。妹は体が弱く、入院していた。いつも妹は病室のテレビで映画を見ていた。その時はまっていたのが<ロッキー>だ」
「ある日、妹は俺に言った。「兄さん性格暗くしちゃ駄目。ロッキーみたいに熱くなって」俺は本気にしなかった。だがある日、演習中の戦闘機が制御不能になって、妹の病室に墜落した。俺はその日以来、性格を熱くなるよう努力した。そして今の俺が生まれたんだ。」