突入の決意
-学校グランド-
「中に入りたい気持ちは、解った。だが防護隊が来る。そいつらと行けばいい。」
野村はため息をついた。まったく理解してない。
「いいですか?校内は暗いと思います。彼女を発見できても、オリジナルの感染者はウイルスの影響で身体能力が上がっています。まともに戦闘すればこっちが危ない。それに、彼女を生け捕りにしたい。生きた生態サンプルが欲しい。自衛隊の迷彩服だは、暗闇でも目立つ。だがSATの黒服では、暗闇では目立ちづらい。彼女に気づかれないで、近づける。」
沈黙は続いた。
森泉が口を開いた。
「わかった。何人ほしい?」
野村は機嫌を良くした。やっと理解できたか・・・
「なるべく少人数がいい。4人くらいだ」
森泉はしばらく考えた。
「水谷。お前の部隊で行け」
水谷の部隊が指名された。
「了解しました。」
水谷が答えた。
「お前達。装備をまとめろ。」
水谷と部下3人が、装備を整え始めた。
「我々はどうすれば?」前田が聞いた。
「無線で、私の指示を待ってください。指示したら、武装した部隊を突入させて、感染者を全員射殺してください」
「射殺!?罪もない生徒達を射殺しろと?」
「生徒達は感染してるんです。全員、冷酷な殺人鬼となってます。」
「だが人権が・・・」
「感染者はもう人間じゃないです!怪物です!」
前田はしばらく悩んだ。何悩んでんだ!早くしろ!野村はそう思った。
「わかった・・・」前田は渋々了解した。
水谷の部隊は準備していた。
木馬は短機関銃をしっかり握った。手が震えていた。恐怖を感じていた。
「心配するな。俺が守ってやるよ」
火野が木馬の不安を察したか、そう言って安心させようとした。
「ありがとうございます。見返りに、息子さんを一緒に探しましょう」
「ありがとう。これで貸し借りなしだな。」
火野と木馬が手を握り合った。
「お互い、感染しないように」
「撃ち合いたくありません」
石神は、不安で一杯だった。はじめから全部知っていた。封鎖の理由、伝染病。上層部の漏れた情報から知った。正気なら、今頃逃げたい。だが、SATとして逃げられない。感染したくない!校内に入りたくない!SATに入隊した後悔の念が沸いてくる。
隊長水谷は、写真を見ていた。3歳になる息子と妻の写真だ。不安や心配な時はいつもこの写真を見て、自分を勇気付けていた。不思議に、この写真は、自分の恐怖をなくしてくれる。魔法のように。
だが今回は、圧倒的な恐怖を感じていて、この魔法の写真も対して効いてない。水谷は、しっかりと銃を握った。絶対に死なない。絶対の感染しない。絶対に無事で帰ってくる。絶対に、息子にクリスマスプレゼントをあげるんだ。いつもは神や悪魔は信じない水谷だったが、今回だけ。神を信じた。
「神よお願いします。私を、私の部下をお守りください」
野村を機嫌がいい。空の注射器と、麻酔薬が入った注射器を持った。ついに長年の夢が叶う。