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感染者の牙  作者: 岡田健八郎
12/40

再開

 大輝は、職員室の自分の席から小さな箱を出した。鍵を開け、中から何かを出した。拳銃だった。

PIG/ザウアーP220だった。感染者は殺すしかない。<あれ>は一本しかない。誰に使うかが問題だ。



3年2組では、まだ乱闘が起きていた。もはや、数ではタイプ3の感染者が上回った。信二たちや他の非感染者は感染者に囲まれた。

紘輝は、廊下の隅で立花を守りながら、金属バットで襲ってくる感染者を殴り続けた。紘輝達を襲う感染者はいなくなった。代わりに、信二達に集中した。

「立花、すぐに教室に戻れ。」

「でも、あなたは?」

「信二達を助けに行く…」

「でも、感染者がお…」

話が終わる前に、1人の感染者が襲ってきた。

「くそ!」

紘輝を力一杯バットを横に振った。バットは感染者の頭に直撃したが、勢いよく振ったためか、そのまま壁にぶつかり、壊れた。

「くそ!バットが壊れた!」

だが、また1人感染者が襲ってきた。紘輝は、素手で対応するしかなかった。気づけば、立花がいない。教室に戻ったな。紘輝は力一杯感染者の頭を殴った。だが、バットより威力は、遥かに劣っていた。感染者は、紘輝の顔を両手でつかんで、噛み付こうとした。紘輝も感染者の頭を両手でつかんで、遠ざけようとした。だが、ずっとバットで戦って体力を消耗しきっていたため、段々、感染者の顔が近づいてきた。このままでは噛み付かれる。もう駄目だ!もたない!

「神よ、ご慈悲を…」

 

 何かが刺さる音がした。噛み付かれたのか…いや痛みはない。ゆっくり目を開けた。

感染者の背中に包丁が刺さっていた。その後ろには立花が居た。立花か!立花が感染者を包丁で刺したのか。

「どこで、その包丁を?」

「後ろをみて…」

言われた通りに、後ろを見た。家庭科調理室だ。調理室から包丁を取ったのか。

「でも、ドアには錠前がかかっているはずだが?」

「消火器で壊した…」

さすがは生徒会長。頭が働くな。よく見れば、立花の足元に消火器があった。

「これを」

そう言って、もう一本の包丁を渡してきた。俺の分も取っててくれたのか。気前がいい。

「だが、包丁は予備にしとくよ」

そう言って、紘輝は包丁をベルトに挟んだ。

「こいつをメインにしよう」

消火器を拾った。すると、階段の上から誰かが降りてくる音がする。

 紘輝は消火器を、立花は包丁を構えた。音の主が姿を現した。


 信二達は囲まれていた。もはややばいな。感染者が信二に全力で走ってきた。

 だが、銃声と共に、感染者の頭に直撃した。全員、銃声の方に向いた。SAT隊員が、狙撃銃で感染者を撃ったのだ。信二は、隊員の顔を見て驚いた。

「兄さん!」

感染者のほとんどが、信一の方へ走った。信一は、狙撃銃から、短機関銃に切り替えて、乱射した。

「逃げろ!」

信一はそう言って短機関銃で次々と感染者を撃ち続けた。

「信二!良かったな!兄さんが来てくれて」

紘輝と立花が来た。感染者は今信一に夢中だ。チャンスは今しかない。信二は、他の人を連れて、階段まで逃げた。信二の友人以外は、職員6人と生徒4人しかいなかった。残りは感染者になった。階段の下は感染者だらけだ。上に行くしかない。上は確か屋上だったな。


 学校の周りには、大勢の野次馬と報道陣に埋め尽くされた。上空には、報道陣のヘリコプターが飛んでいた。

「今、警察と特殊部隊が学校を封鎖。校内の大勢の生徒が閉じ込めらています。」レポーターが解説し、カメラマンがカメラで学校を写した。


ヘリのパイロットはマスコミが大嫌いだった。事件の被害者や加害者の気持ちも理解せず、ネタになる事件は、自分達の意見も含めて、ショーのように放送する。この学校の封鎖も生徒の気持ちを理解しないで「悲劇の生徒達」だの言って、本当にむかつく。仕事だから仕方ないか。その瞬間、パイロットの全身に激痛が走った。

「パイロットさん。少し運転荒くないですか?」

レポーターが話しかける。パイロットは振り返った。眼が真っ黒だった。パイロットは、運転を手放して、レポーター達に襲い掛かった。制御不能のヘリコプターは、そのまま回転しながら、墜落した。墜落先は・・・


 信二達は、階段を上がって、屋上を目指していた。屋上の入り口が見えた。ドアが開いている!3年生5人が信二を追い越して、先に屋上に出ようとした。その時、ヘリコプターのプロペラ音がした。段々近づいてくる。屋上の入り口に、何か衝突した。入り口近くの3年生生徒4人は、巻き添えを食らった。

 ヘリコプターだ!ヘリコプターが屋上入り口に墜落したんだ!ヘリコプターが屋上への入り口をふさいでいた。

「くそったれのパイロットめ!!」信二は悪態ついた。3年生3人がヘリコプターの下敷きになったが、一人だけは無事だった。ヘリコプターの中から誰かが出てきた。格好からしてパイロットぽいな。

信二はパイロットに文句を言おうとしたが、パイロットを見て驚いた。眼が真っ黒で牙が生えてた。タイプ2の感染者だ。

パイロットは恐ろしい奇声を上げながら、信二に襲ってきた。まずい!信二がそう思うと、1発の銃声が鳴り響いた。パイロットの額にドングリほどの穴が開いた。

 大輝だった。拳銃を持っていた。

「向こうの校舎に逃げるぞ!」

大輝がそう言って、信二達を先導した。階段の下から。信一が上がってきた。

「なぜ、下がる!?屋上へ逃げろ!感染者が来ているぞ!」信一が怒鳴った

「屋上の入り口には、ヘリコプターが墜落した!あのでかい音で気づかないのか!」

大輝の先導のもと、向こうの校舎と、こちらの校舎をつなぐ渡り廊下へ向かった。もうすぐ渡り廊下だ!だが、信二は転んでしまった。

信二の足を、誰かが引っ張った。タイプ2の感染者だった。それも大勢だった。いつの間に!

「信二!」全員がそう叫んだ

「うわああああああああああああああああああ」

信二は叫びながら、死を覚悟した。だが、感染者達の動きが止まった。信一は狙撃銃を構えたが、

「待て!」

と言われて、大輝に銃を降ろされた。

「様子が変だ」

確かに感染者達の様子がおかしい。突然、全員が大人しくなった。信二は、奥から、どの感染者よりも、恐ろしい奇声が聞こえた。聞き取れたのは信二だけだった。

 突然、感染者が信二の足を放した。

「お…おい、何が起きている?」野田が質問した。

感染者達は、信二達を置いて、どこかに向かった。

「わけがわからないがチャンスだ!全員向こうの校舎に行け!」信一の掛け声と共に全員渡り廊下を渡った。だが、信二は感染者達の後を追おうとした。

「何をしてる?」大輝は、信二の腕を引っ張った。

「先生。今は、襲ってこないような気がします…」

「何を言ってる?奴等は危険だ」

信二は大輝に連れてかれた。

 不思議だった。俺だけが聞き取った、あの恐ろしい奇声に、どこか哀しさを感じた。


学校のどこか。

 ある人物が、写真を見ていた。


その写真に写っているのは、信二だった。

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