待機
三題噺もどき―はっぴゃくにじゅうろく。
教室のドアを開くと、ヒヤリとした冷たい風が吹いてきた。
窓でも開けているのかと思ったが、そうではなく。
人が居なかったから、暖房がつけられていなかっただけのようだ。
「……」
誰もいない、暗い教室。
正確には、理科室だが。
あまり光の入らないこの教室は、電気をつけていないと薄暗くて少し不気味にさえ見える。そりゃ、学校の怪談に、理科室が必ずあるわけだ。日中でも、こんなに暗いのに、夜はさぞ恐ろしく映るだろう。
そうでなくても、色々な実験道具とかが置かれているから。未知のものは、何でも怖い。
「……」
まぁ、そんなことはさておき。
1週間ぶりの部活だ。
先週はテスト期間だったから、部活は休みだった。
「……」
この教室に来る途中、他の部員の教室の前を通ってきたが、まだホームルームが終わっていなかったようだった。まぁ、そのうち来るだろう。
あの子の教室もまだ終わっていないようだった。残念、今日はもう話せない。
……まぁ、チラ、と教室を見た瞬間、あの子と目があったので良しとしよう。運命の出会いか何か見たいに、ニコニコ笑ってくれた。可愛いと思う。昨日のクッキーは美味しかった。
「……」
1年生に関しては、残念ながら階数が違うので、どうなのかは分からない。
この学校は、学年ごとに階数が決まっているので、他の階に行くことは極力避けるようにと言われている。なぜかは知らない。どうせ面倒事を回避するためだろうけど。
「……」
とりあえず、重たい鞄を机の上に適当に置いておく。
リュックの中から、一応、カメラを取り出して置き、落ちない位置に置いておく。
古い型のものだが、まぁ、趣味の範囲で撮る分には何も困らないと思う。結局、カメラの性能云々ではなく、その人の腕次第みたいなところがあるからな。知らないけど。
「……」
電気をつける前に、少々小腹が空いたので。
鞄の中に忍ばせているキャンディの袋を取り出す。
今回は梅味のキャンディだ。あまり梅そのものは好きではないのだけど、キャンディに……というかお菓子になると途端に食べられるのだから不思議だ。梅味のポテチとか割と好きな部類にすら入る。
「……」
小さな袋の端を切り、中身を口の中に放り込む。
ころころと遊びながら、電気のスイッチを入れに向かう。
そういえば、顧問はまだ教室に居るのだろうか、それとももう隣の準備室に――
ガチャ―
「―!!」
びくりと体が跳ねた。
準備室に続くドアがいきなり開いたからだ。
電気のスイッチは、その扉の真横にある。
ギィ―と開かれた扉の先には。
「あ、来てたのね」
「っびっくりした……」
まぁ、顧問が居るのだけど。
全く人の気配がしなかったから、まだ教室に居るものだと思っていた。
「暖房付ける?」
「お願いします、寒いです」
「そうだよね」
スイッチを入れながら、まだ少しドキドキと言っている心臓を落ち着かせる。
暖房のスイッチは、準備室にあるので教師につけてもらわないといけない。
準備室の扉を開いたまま、顧問はまた中に戻る。
その後ろ姿を追いながら。
「今日何かするんですか」
「ん~」
部活と言っても、写真部なので。
やることが決まっているわけではない。
大会があれば、それの選定をしたり、写真を撮りに行ったり、体育祭とかクラスマッチとかの写真を撮って掲示したりもしているけれど。
「まぁ、皆が来たら考えよう」
「はぁい」
他が来るまでは、もうしばらく待つだろう。
適当にカメラでもいじりながら、教室内でも撮って遊んでおこうかな。
どうせなら、あの子を撮りたい気分だ。
美しいものは、誰だってカメラに収めたいものだろう。
お題:キャンディ・梅・運命




