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第8話 未知との遭遇

 ドガンと火柱が高く空に伸び、打ち上げられた部品達が火の粉となって落下する。ガンモとデメタン(カエル)は慄き爆風により弾き飛ばされると、砂丘の傾斜を何かを叫びながらゴロゴロと連なり転がって行った。


「あひゃひゃひゃひゃっ、知ってるわよ傾蓋(けいがい)知己(ちき)ってヤツでしょ? やっぱ仲良しじゃん。一緒に死んどけッ」


≪マスター、使者殿に何かあれば紛争に成り兼ねませんよ‼ ≫


「あ~そっかぁ~、ごめ~んッ」


≪感情のブレ幅ゼロ…… 全く気にしてませんね? ≫


「悪かったわよ、死んでなんかいないから大丈夫よきっとッ」


 すると足元から何かが爆発に共鳴を起こし、ゴゴゴと唸りを上げる程の地響を起こすと、砂丘が割れた。その揺れは段々と激しさを増し、その場でミューに尻餅を()かせた―――


「ひゃっ――― 何コレ⁉ 」


≪告――― 巨大な生体反応が急接近中‼ 真下からです‼ ≫


「っ―――――⁉ 」


 まるで巨大な隕石が地中から飛び出して来たかの如く、ドガンと砂塵を高く吹き上げると到頭(とうとう)ソレは実体を表した。危機一髪で初動を何とか躱し吹き飛ばされながらもミューは砂丘に横たわる。


「なッ――― 」


≪マスター‼ ≫


 余りの巨大な生物の登場に茫然と意識を奪われ、踏み出す一歩に遅れが生じた。ミューらしからぬミスに、悪魔は躊躇わず命を奪いに僅かな隙に入り込む―――


 ―――しまっ―――


 天高く上がった不気味な頭らしき物が、無秩序に轟音を纏い頭上より振り下ろされた―――


 ―――クソッ―――


 時間にして僅か数秒。正にその刹那的状況下で突如背後から闇を切り裂き四連装レーザー速射砲が雄叫びを上げた―――


 ―――ドドンドンドンドンドンッ


 銃座のローターが絶叫を放ち爆音を生むと、砂埃を消魂(けたたま)しく巻き上げ(なが)ら、(もた)げた巨大な口だけの頭を強襲する。それは主を守るためのマザーの独断の判断であった。

 

 グギャアァァ―――


 空気を震撼させ映像が乱れる程の雄叫びが耳を劈くと、辺りは一瞬にしてミュー達を戦場へと誘う。


≪そのお方は私共の主人ですよ―― やらせる訳には行きません≫


 上下の銃座が烈火の如く閃光を吐き出し、連射の終わりが見えぬまま、船体上部の射出ハッチが開くと、数え切れぬ程の蝙蝠(こうもり)型ドローンが一斉に飛び立ち、夜空に光る陣形を(いろど)った。


 然しこの行動がマザー自らの首を絞める事となる。主の承諾を得る事をせずに独断で攻撃に出た事で、ハンザ―ヘッド船内にはレッドサイン(不遵守行動)の警告表示が溢れ各機能に制限(リミッター)が掛かる。


 ―――AI暴走制御装置である―――


 撃ち続ける銃座のローターの回転が徐々に弱まり、ドローンが次々失速すると、機能が停止状態に追い込まれた。此処で攻撃の手を緩めれば、弾幕が張れず相手に攻撃の機会を与えてしまう、そんな状況の中において、AIとしては有っては成らない事を主に願い出た。


≪マスターどうか権利を…… 今だけ私に―― ≫


 ミューはその問いにバケモノにブーツを投げつけながら立ち上がると、闇夜に光る牙を剥きだし、激情を言葉に乗せて吐き出した―――


「You have――― control‼ ぶっ殺せ‼ 」


 決定権が譲渡され四連装レーザーが息を吹き返す―――


 ドドンドンドンドンドンッ―――


「I have――― master‼ 」


 その合図を切っ掛けとし、ドローンのレーザーが攻撃に更に拍車(はくしゃ)を掛け、一斉に四方からバケモノを追い詰める。止む事を知らぬ怒濤のレーザー攻撃に一瞬怯む姿を見せると、その巨大な身体をジリジリと後退させた。


 銃を連射し(なが)ら走り出すミューに、マザーは非情な現実を報告をする―――


≪効果が与えられません、表皮が予想より分厚く、レザーが貫通しません、このままでは――― ≫


「チッ‼ 表面に火傷を負わせる位が関の山みたいね。 エンジン始動し空に距離を取れる? 」


≪危険です。始動には時間が掛かります。攻撃の手を緩めればきっと待ってはくれないでしょう≫


「どっちにしても上等よ――― 」


(しか)しこのままではジリ貧です≫


「格納庫の後部ハッチオープン―― (なだ)れ込むわよ」


 ≪了――― ≫


 ゴロゴロと格納庫内へと駆け込むと、使える武器を探し指示を出す。ジャンク屋のオヤジに廃棄寸前の武器を貰った事を思い出し、山積みされた鉄屑の山を渡り歩く―――


「銃座のレーザーはそのまま攻撃を維持して、機体正面下部の20mm機関砲を同時に連射。徹甲榴弾も落としてやれ‼ レーザーがダメなら実包(じっぽう)で行くしかないわよ」


≪了解です――― マスター ≫


 するとガラクタの中から一際(ひときわ)異彩を放ち、埋もれた逸品に辿り着く。


「これなら…… ガラクタでもまだやれるかも――― 」


 ゼネラル・エアロ社製のZNE-D134(ワンサーティフォー)プラズマ式ガトリングガン。その昔、銀河連邦軍の重装歩兵部隊が使用していたとされるハンドミニガン。旧モデルは総重量100㌔を越え、その重さ故に用途は限られていたが、度重なる見直しと改良により総重量を半分以下に抑える事に成功した。全長900mm/本体重量1100g/口径8.72mm/リンクレス給弾方式を備え、作動方式はプラズマ回転ドライブ方式を採用。6層の銃身を持ち、毎分6,000発と単銃身機関銃では考えられない発射速度を誇る。


≪マスター目標、機関砲によりダメージを確認‼ 効いてます‼ ≫


 此処ぞとばかりに小型の焼夷(しょうい)爆薬を内蔵した蝙蝠が、次々とバケモノを目指し特攻を開始する―――

 

 グギャアァァ―――







「さあ、一気に流れを変えるわよ――― 」

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