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第32話 勇者は1番

 何故かソイツは短い腕を勇者の様に高々と突き上げていた……。


「ゲイコガネゲロって何だよ。只の飲み過ぎじゃあねぇか」


「飲みすぎ? 」


 ノンが目をまん丸に耳をピンと立て不思議そうな顔をする。


「ごめんッ、独り言…… 」


 完全に包囲された状況ではあるが、獲物がデカいせいか向こうは簡単に手が出せないでいるようだ。きっとこいつの甲羅の上に乗っている限りは安心だろう。


「ノンは魔力(オーラ)持ちなのッ? 」


「何でなのですかっ? 」


「アタシの銃なんだけどねッ、魔力拳銃(オーラバトラー)だから魔力が無いと扱えないのよッ、アンタ今武器持って無いでしょ? 使えるなら2丁有るから1丁渡しておこうと思ってね」


魔法(センス)は使え無いですけどっ、じいじが昔、ノンにゎ魔力(オーラ)が少し有るって言って居ました。魔力(オーラ)測定した事無いので詳しくは分からないのですっ」


「んじゃ使えるかもね、1発でも撃てれば上等よ。身を守る時に使うのよ? 間違っても連射しないようにッ、ほらッ、使い方は分かる? 」


「大丈夫なのですっ、ライフルゎ撃った事あるのですっ」


「そりゃあ頼もしいわねッ、それとコレねッ、投げ爆薬も何個か渡しておくから」


「あのっ、さっきから思ってたのですっ、おねいちゃんの次元収納ゎ凄いのです。武器も入れられるなんて初めて見たのですっ」


「次元収納? アタシのは無限収納だけど? 」


「えっ? 無限収納って何ですかっ? 魔導具(オーラツール)屋で買ったやつぢゃないのですかっ? 」


「えッ⁉ あぁうん、これはそのぉ…… おっ、オリジナルなんだッ」


「オリジナルを魔導具(オーラツール)屋さんで作ったですか⁉ 凄いお金持ちなのですっ。お家(シェルター)が買えちゃう位高いのですっ。ノンのゎじいじのお下がりでちょこっとしか入らないし、武器も入らないのですっ」


「あはは、まっ、まあねッ」


 ―――元々持ってたなんて言えないわねッ……

(コレって何も疑わずに使ってたけどッ女神の力の一環なのかしら)

 

 ―――目立つ様なら人前では控えておくか……


「因みに月の女神の加護ってさぁ、何が貰えたか知ってる? 」


「月の女神様からの加護ゎ知らないのですっ。地球(グローブ)ゎ試験場だったのでわざわざ移住する人ゎ居なかったってじいじが言ってたのですっ」


「そっかッ…… 月の女神は住人に加護を授けたりしなかったのかしらね? 」


「さぁ地球(グローブ)の事ゎ、余り聞いたことがないのですっ」


 ―――アタシももしかしたら……

(誰かに加護を与えたり出来るのかしらねッ? )


 ―――まさかね……


「ゲロッコ ゲゲゲ ゲレーロ ゲロチ」


「勇者 は1番 電話は2番」


「ん? 何てッ? 」


「彼奴がしゃべってるのですっ」


「えッ? カエルの言葉解るの? 」


「解るです。小さい時に翻訳チップ入れたのです。」


「マジかよ…… 」


「ゲーコ ゲロンパ ゲイコ ゲロッコ」


「3時のおやつゎ分相応。ガンモと食べるぞ分相応って言ってるのですっ」


「はッ? 今ガンモって言ったの? 」


 カエルは股がった魚の頭の向きを変え背を向けた。


「ヤバい逃げられる。ノン彼奴を追うわよッ! 」


「えっ? 折角どっか行ってくれるのに、今度ゎ追っかけるですか? 」


「彼奴ガンモって言ってたでしょ? それってアタシの眷属…… えぇと…‥ 兎に角あいつらを追って‼ 」


 ノンは急いで餌の付いた長い釣り竿を古代生物の鼻先に吊るすと、ゆっくりと鼻先からずらし、移動方向へと導く。大きな生物がゆっくりと野菜類に惹起(じゃっき)されると、待ってましたとばかりに泳遊砂魚(デルサクス)が砂の中から高く飛び跳ね、釣り竿の餌に食らい付いてきた。


「うわぁぁ――― ひっ引っ張られるぅ」


 曲面の甲羅の上では踏ん張りが効かずにノンは勢いよく引っ張られるままに滑り落ちて行く。


「のわぁぁぁ――― なのですっ」


「ノンッ‼ 釣り竿から手を離すのッ――― 」


 手を離した瞬間に釣り竿は、暫く砂の上を右往左往した後に、砂煙を上げたまま遥か彼方に遠ざかって行った。


「仕方がない…… 逃がした魚はデカかった」


「でっかかったのですっ」






 古代生物と別れたのは、夕闇に迫る街の明かりが遠くに見えた頃だった。知性が乏しいコノ生き物は、放っておくと街の中までズンズンとお構いなしに入り込んでしまうらしい。


 そんな事になれば住居や店は粉々に踏み潰されてしまう。それどころか怒った住民達により、あわや討伐なんて事にもなりかねない。


「ばいば~いっ。ありがとうなのですっ」


 ここはお互い危機を回避する為にも、少し街から離れた所で別れを告げる。ノンはゆっくりと立ち去る巨大な生物にピョンピョン跳ねながら手を振り見送った。

 

 砂漠を小一時間程歩き、街の入り口に着いたのはそれからすっかり日が落ちてからの事だった。街は高い重厚な鋼材の外壁で囲まれ、一見すると冷たい印象をミューに与える。


 巨大な鉄門の横には、大きな石造りの門衛(もんえい)達の詰所の様な建物が存在し、入場する為の受付をする必要があるらしい。


 ―――何だかめんどくせぇなッ

根掘り葉掘り聞かれなきゃいいけどッ―――


 扉の前に立つとキュインと鼓膜を疎密波(そみつは)(くすぐ)り中心部に小さな穴が開く。回転する程に段々と穴が口を開く様になると人が通れる穴となった。


 室内に入ると無機質な白い壁が出迎えてくれたが、人の気配は無い。暫くすると床が光り出し、矢印で派手に導いてくれたお蔭で、受付迄は迷う事は無く進む事が出来た。


「ねぇノンッ アンタこの街に来た事あるのッ? 」


「何度もあるですよっ、心配ないでのですっ」


「あっあのね…… 言い(づら)いんだけど…… アタシ身分証とか無いっスけどッ」


「ええええええええええっ―――‼ 」

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