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第11話 ワンサーティフォー

「こちらシルミド。全員に通達。これより他の賞金稼ぎ(ハンター)達が次々と合流する。オープンチャンネルでの交信になる為、我々の識別名称(コールネーム)を《《コヨーテ》》とする。ファーストコールの後に所属班No,を付けろ」


「コヨーテ(ワン)了解―― 」


「コヨーテ2わかったぜ」


コヨーテ(醜い女)だなんて酷いCN(コールネーム)だね全く。まさかアチキに喧嘩売ってんのかいシルミド⁉ 」


別嬪(べっぴん)さんのお前には関係ねぇと思って付けたんだが、気に食わなかったか?ジュレーヌ」


「チッ――― 全く嫌になるね。何人それで泣かせて来たんだかウチのリーダーは」


 頬を染めたジュレーヌが機体を砂丘に着地させる。バイザーゴーグルを装着するとフルスクリーンの映像が視界に飛び込んで来た。急に熱を()びた身体に耐え切れず、はち切れんばかりの胸のジッパーを谷間まで下げると、精一杯の虚勢を張った。


「この仕事が終わったらベッドでアチキと勝負しようじゃないかリーダー」


「ほう⁉ 光栄なこった。勝気なジュレーヌに半べそ掻かせてやるぜ? 」


「チッ、言ってろ――― 色事師(いろごとし)め‼ 」


「あぁ~お楽しみ中邪魔するぜ。CN(コールネーム)風見鶏(かざみどり)だ、メットと機体に《《屋根に乗った鶏》》のマークを刻んでる。12人で参戦、IM(アイエム)はアーマードを1機投入する。リーダーは俺フテマだ宜しく頼む」


「コヨーテの頭を張ってるシルミドだ。狼のマークがウチ等だ。こっちからも宜しく頼むぜフテマ」


「じゃあ早速相談なんだがシルミド。このまま行けばウチかオタク等が一番槍(初撃権利)を取る事になるがどうするよ? 」


「そうだな討伐隊の名乗りを挙げる一番の理由はこの報酬権利だからな。チャンスが有るなら狙わねぇ理由は無いだろう。それが大物の狂獣(インセイン)なら(なお)の事。軽く一財産になるからな、2チームで取り合おう」


「へへっ、そう来なくっちゃ‼ 他の部隊の奴等にゃ申し訳ねぇが、出撃が遅ぇのが悪いんだもんな」


「こちらシルミド。チャッピー聞いての通りだ、お前達は後方支援(コヨーテ3)だが初撃が欲しけりゃ前に出て構わねぇぞ? 一発ぶちこんで離脱すりゃあいい。それまでこっちが援護する。初撃判定(ルール)は分かってると思うが近接武器のみだからな? 依頼者(クライアント)の判定ドローンが到着次第突撃だ。勇者に成りたきゃ死ぬ気で行ってこい」


「ありがてぇマジでアンタの隣に船を降ろして正解だったよ感謝する。死んで来るぜ」


「それと再度確認だ。風見鶏とは指揮系統は別だからな、コヨーテの指揮は俺が取る。フテマ達が突っ込んでも釣られて一緒に突っ込むなよ? 必ず俺の指揮を待て、いいな野郎共」


「「「Hoo'up(了解)――― 」」」






「さあ、一気に流れを変えるわよッ――― 」


 ―――直後……


≪マスター‼ 衝撃に備えてください――― ≫


「 ―――――⁉ 」


 バケモノの口の周りに生えている髭の様な触手が一斉に伸びると、四方から船体に襲い掛かる。激しい揺れが格納庫を襲い天井がガシャンと崩れ落ちると剥き出しの配線がショートを起こし天井に稲妻が(はし)る―――


≪マスター‼ ≫


「クソッ、アタシは大丈夫。シールド圧を上げて防御ッ――― 」


≪エンジンを始動しなければこれ以上は防圧を上げれません≫


「チッ――― 」


 幾度も激しく叩きつけられる触手の数々に、銃座が事も無げに破壊され弾幕が脆弱さを見せると、敵の攻撃は一層激しさを増す。


≪シールド圧68%低下―― 耐えられません、破られます‼ ≫


 巨大な頭が船体を襲う。天空よりドゴンと船首が叩きつけられると、船を中心点に砂が波紋を打ち上げる。その猛烈な力により機体は傾き砂地へと押し込まれた。美しかった外装は激震に(ひしゃ)げると弾け飛び、操舵室のシールドが砕け、砂の流入がその攻撃の激しさを物語る。


 ―――グハッ―――


 余りの烈震に小柄なミューは簡単に床に叩きつけられた―――


≪フロント防御壁シールド停止。銃座破損及び操舵室損壊。キャノピー並びにランディングギアも破壊されました。機体平衡(へいこう)不能≫


「クソッこのままじゃ船がやられるッ、アタシが囮になるッ‼ マジぶっ殺してやる――― 」


≪そんな無茶ですマスター‼ ≫


 船内の天井からは切れたケーブル類が(こうべ)を垂れ火花を散らし暴れまわり、張り巡らされた配管はその亀裂からガスを噴き出している。何時火災が発生してもおかしくない状況に、ミューは額からの出血もそのままにホバーサイクルで飛び出すと、脚でハンドルを操作しガトリングガンを唸らせた―――


「てっめえぇッ‼ この船は未だローン山積みなんだっつうのッ‼ 」


 ガララと6本の銃身が動き出し、ヒューンと周りの空気を掻き混ぜ(なが)(うめ)き声を上げ高速回転を始める。(やが)てその声は(ゆず)る事の出来ない雄叫びへと変わり、銃口は激しい火炎を一気に吹き上げた。


「叫べッ‼ おらぁッ――― 」

 

 鳴り止む事を知らぬ雷鳴の如くブロロロロロと薬莢(やっきょう)が派手に夜空を駆け巡り、視界の片隅をスローモーションで(かす)めて行く。毎分6000発の弾丸を吐き出す化け物(ワンサーティフォー)がバケモノの表皮を容赦なく削る。狙われた箇所はスポンジ状の蜂の巣のように(さら)され、不気味な紫色の体液を不様(ぶざま)に撒き散らした―――


 ―――アギャァァァァ―――


 砂地が暴れる程の悲鳴が響き渡り、映像が縦に揺れ視界が途切れる。その叫びにミューは舌嘗(したな)めずりを見せると、ニヤリを牙を忍ばせた。


 ―――狂気対狂気―――

激しい攻防は今正に幕を開ける―――


「てめぇの相手はこっちじゃあッ」


「どっりゃあぁぁぁぁッ――― 死ね死ね死ね死ねぇ――― 」


 吹き上がる怒濤の火炎に照らされバケモノがフラッシュを受け暗闇に浮かび上がる。ここでミューは暴力的に暴れまわる弾丸に対し少し違和感を覚えた……

 

 ―――弾丸が貫通しない?……

(それどころか傷口から白い煙が立ち込めてる)


 ―――なんだ?……

(まさか――― )

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