五十三話目「チョコレートクリームホットケーキタワー」
まず、家に帰って来て。
ホットケーキ作りを始める。
卵二つと、牛乳二百ミリリットルと、ホットケーキミックスを二袋。
合計六枚のホットケーキを焼く。
ちゃんとした物を作りたいと言う思いから、時計を見ながら焼き時間を測る。
俺の思って居る「中火」と「弱火」が、ホットケーキの作り方に書いてある「中火」と「弱火」で無かったらしく、途中で火力が弱すぎて生焼けになりそうになる。
焼き時間を伸ばし、火力を調節する事で対応する。
ホットケーキが出来上がった後は、間を止めるためのクリーム作りを始める。
予め砂糖が入っているチョコレートクリームを買ってあったのだが、此処でまた疑問が生まれる注意書きが。
「手で泡立てても、角が立つまで泡立てられないよ! 電動ハンドミキサーを使おうね!」みたいな内容の事が書かれている。
家電会社の回し者め。
と、ちょっと思ったが、何であれ「無理だよ!」と言われてもやるしかないので、手に泡だて器を持って泡立て始める。
氷水に付けながら…と言う、無茶なお願いも書いてあったが、冷やせば良いと言う事は…保冷材で行けるんじゃないか? と考え、冷凍庫で眠っていた保冷剤を、ボウルの下にあてる。
保冷剤がツルツルしないように、その下に布巾をあてる。
暫く、右手でガチャガチャ、左手でガチャガチャと、腕のだるさを分散しながら掻き混ぜる。
最初はぬるーり、くらいの質感だったが、途中で「泡だて器の通った跡」がクリームの表面に残るようになり、もしかしたらこれはいけるんじゃないかと思いつつ、ガチャガチャ。
ちゃんと角が立つくらいに泡立てられました。
何だ、出来るじゃないかと思ったが、季節が良かったからかも。
冷蔵庫で冷ましてあったホットケーキにクリームを塗りながらタワーを形成していき、一番天辺には余ったクリームの山と、一粒のサクランボを置く。
チョコレートシロップとケーキシロップをかけて、完成。
タワーの高さは、クリーム部分を合わせても牛乳パック(一リットル)の高さには及ばず。
それでも、食べる時には…幸せと言うより、クリームに殴られたくらいの暴力を受けた。
血糖値がぎゅーんって上がって、全部食べ切る時には…寒いわけでもないのに体が震えていた。
皿に残ったクリームを「食べ物だ」と見なす感覚も失い。
使った調理器具と一緒に綺麗に洗い流した。
目的は達成できたので、とても満足である。
予想以上にお腹がいっぱいで、しょっぱい物を食べている余裕もない。
満腹時の眠気が発生している。そうでなくてももう二十時だ。
だけど今風呂に入ったら…頭の血管が切れる気がする。
一時間くらい休もうか。