二話目「イギリスの料理は美味しくないらしいと言う話」
産業革命以後、イギリスの庶民の飯って美味しくなくなったんですって。
その原因の一つは、家族そろって工場勤務と言うのが普通になって、誰も飯を熱心に作ろうと思わなくなったからだそうです。
一例としては、鍋一杯のジャガイモに塩を一つまみ入れた物を食べるとか、パンの薄切りを夕食とするとかで食事を済ませていたらしい。
勿論、お金持ちの人はちゃんとした料理の作れるメイドとかコックを雇っていて、美食に興じていたのですが。
その代わりに、新鮮な食材はお金持ちの人が買い取ってしまって、庶民には安価ではあるが古びた食材しか回ってこなかったと言うのも原因だそうです。
そんな富の偏在もあり、イギリス庶民の料理はどんどん美味しくなくなって行った……と言う話です。
イギリスのテーブルマナーって、「食事は黙って黙々と食う」って言うのが一般で、ご飯が美味しくないとか文句を言うてはならないと言う。
僕も連載小説の中で「フィッシュアンドチップス」を登場させたことがありますが、現実世界の本場のそれは、他国の人にしてみると「味が無くて食べずらい」物だそうです。
油物なんだったら、もうちょっと塩味が欲しいなと思ってしまう味らしい。
僕も、その事は頭の中にちらっと掠めたのですけど、登場人物にはなるべく美味しいものを食べさせてあげたかったのです。
そこで、小説の中では、スパイスの利いているフィッシュアンドチップスと言うものにしました。
しかもそのチップスを売っている店が「トメィトガーデン」と言うので、たぶん西の大陸からの逆輸入店なんじゃないでしょうかね。
イギリスの家庭料理? か、何かで、「鰻のゼリー寄せ」と言うのがあるのです。
なんで、鰻を、ゼリーで寄せたよ? って思うのですが、味としては「味がついていなくて、何となく泥臭い」らしいです。
日本だと、鰻はタレにつけて焼きますよね。あのタレが美味しくないと、鰻は美味しくないのです。
何故なら鰻から血を抜くときに、本来の味なんてなくなるからです。
だけど、何故か鰻のゼリー寄せは、「血抜きをした食材本来の味」で勝負している。
その本来の味が、他の国の人にしてみるととても美味しくない……と言う事なのかな?
庶民に伝わった「鰻のゼリー寄せ」の調理法が間違っていて、本来はもっと美味しいものだったはずなのだろうかと想像してみています。