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溺れるほどカプサイシンを求める日々の日録  作者: 夜霧ランプ
じういちくぎりめ:二月下旬
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百七十四話目「恋患うドバト」

 二千二十五年二月二十八日。

 朝、我は歩いてた。向かう先の道路の脇に、鳩が二羽いる。ドバトと呼ばれる類の鳩だ。一匹は大柄で、恐らく雄らしい。もう一匹はほっそりしていて、どうやら雌らしい。

 向こうから、ゆっくりと車が走ってくる。

 そしてドバトのカップルは、互いを慈しむ視線を交わしたままま道の真ん中に来て、「ああ。車が…」と思った俺の目の前で、脚をとめた。

 それは、車道の真ん中。ゆっくり走って来ていた車が停まった、真ん前。

「鳩男さん。車が停まったわね」

「鳩子さん。車が停まったね」

 って言う感じで、鳩達は互いを見つめあっている。

 自分達の愛の偉大さは、人間の扱う車さえも停めるのだと言う感じで、鳩達は道の真ん中で互いを見つめあっている。


 車の運転手さんは運転席を放棄するわけに行かないので、動けない。

 これは、おいどんがどうにかするしかない。

 まぁ、どうするって言っても、鳩達に近づいて行って、向こう側の脇まで追ってあげれば良いのだ。

 で、その通りにすると、まず、雄鳩が、「ああ。人間が来てしまった」と言う風に、道の脇に避けた。

 雌鳩も、こっちをちらっと見てから、「訳の分かってない人間が来てしまった」と言う風に、雄鳩の後を追って行った。

 おいどんは、黙って車の横を通り抜けた。

 車は、緩やかに発進して行った。


 恋患う者達は、自分達以外の周りが目に入らなくなると言うのは、人間だけじゃないんですね。鳩も恋をすると、「私達は世界の中心に居る!」って、なってしまうんですね。

 まぁ、おいどんは恋をしたことが無いから、聞き及んだ範囲の話だけど。

 人間と言うものも、恋をすると世界の中心で愛を叫ぶんやろ?

 愚かなドバトと同じく、車の前にひょこひょこ出て行って、「僕達の愛の力で、大いなる力を止めるんだ!」って成るんやろ?

 脳内伝達物質がドバーッて出ている状態って、怖いですね。

 そんな風に、朝から、春が近づいていること感じた。

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