百三十話「太りました」
鏡を見る。色々考える。眉毛ちょっと太くないかとか、髪の毛の質が荒くないかとか、美顔体操しておこうとか。
顔の皮膚の張りがなくなっているので、頬っぺたの辺りがタフタフしている。皮膚が垂れていると言うわけではないが、弾力もない。
そもそも、頬っぺたの丸みがない。頬骨の位置から顎先にかけて、シュッとしている。面長さんである。
顔の体操が上手く行っていないせいか、下顎の周りの皮膚と筋肉が気持ち腫れていて、顔面がぼこぼこして見える。
頬骨から顎先にかけての筋肉のシュッとしたラインの下に、下顎周りの筋肉が不気味に張り付いているように見える。
この顔の凸凹は、皮膚を動かさないように、手の平でフェイスラインを押したりすると無くなるので、血液か分泌液の滞留なんだと思う。つまり、浮腫みだ。
下顎を意図的に動かしたりすると唾液がえらい出てくる。多分リンパの流れが悪いのだろう。
(無言でリンパマッサージを始める。唾液がどんどん出てきて、何度も飲み下す)
今見ていた鏡は、姿見であるが、俺宅には、風呂場の鏡と壁のフックに引っ掛ける鏡と、この姿見の三つの鏡がある。
何故姿見を置いているかと言ったら、第三者視点で自分の体型を見れないかと考えたからである。
それまでは、体重計がどれだけ「あんた痩せすぎ」って言う指数を示していても、納得していなかったのだ。
こんなに腹もでっぷりしているし、脚もぶよぶよだし、顔だって変に腫れ上がっている。やっぱり俺はデブ体型なんだ。
と、ずっと思って居て、実際鏡を買って、何処がどんな風にデブなのか見てみたのだ。
したらば、腹は少し丸みがあるけど、脚も腕もガリガリで、頬が削げている、醜悪な生物が映ったのだ。
そこで、何とか太ろうと努力して来たわけだが、朝ご飯が食パンとジャムとコーヒーだけで太るはずがないのだ。
昼ご飯はコンビニで良い物を食べていたが、夕飯は豆腐で終わり…とかだったし。
その当時から比べたら、もう、六キロも太った。よくやった俺。後は柔軟性と筋力を鍛えるのだ。
今の体重の平均値が五十五キロだって言っても、五十二キロだった当時から比べれば、三キロも太っている。
後は筋力がついて骨格が整えば、「普通の人間」っぽくなるだろう。