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鴇色の王子  作者: 櫻塚森
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ボクと兄弟

目の前に出された図形の美しさにボクは目を奪われた。

いくつもの円が重なり、文字と紋様が施されたそれに。

「これは、以前殿下が魔法を暴発させた時に出現した魔法陣にアヤカ王妃殿下、ルキリオ殿下、国王陛下が魔力制御を使い暴発を抑えた魔法陣のいいとこ取りをしたものを掛け合わせた特別製の魔術陣です。行使されたのが魔法であっても人工的に作られたものなので魔術陣と言わせて頂きます。さて、特別と言うだけあってこの魔術陣は、タクリオ殿下にしか使えない魔術陣です。作成した私にも使えないでしょう。」

少し照れながら言う師匠。

「いつん間に……もしかしてあれか!」

数ヶ月前にボクが起こした魔力暴発は、たまたま側にいた母様とるっくん、そして、父上が暴発を止めてくれた。師匠は瞬時記憶魔法って言う固有魔法を持っていて、その時に母様達が出した魔法陣を覚えていたそうだ。

「私の記憶した魔法陣と実際に狂いはないか確認するために皆様には、水晶に閉じ込めた炎を数分間ですが、一定に保って頂きました。」

そんなことしたの?と母様を見上げる。

「水晶に閉じ込めた魔法灯の炎を蝋燭程に小さく一定に保たせろって言われてん。母様は魔法制御は苦手やから苦労したんよ。」

母様は、どっか~ん!って景気の良い攻撃魔法が得意だもんね。

「なんや、よう分からんけど、たっくんのためや言われたら、母様頑張るしかないやん?頑張ってん。」

ボクのため?嬉しいな。

「陛下やルキリオほどの根性は見受けられんしたけれどね。」

さらっと言うサヤカ母様を睨む母様。

「威力を、増大させる水晶の中に入れた魔法灯の灯りを一定に保たせるには、自身の属性魔法ではなく、純粋な魔力による制御が必要です。国王陛下は、釣りをご趣味になさって居られるので特に魔力制御が素晴らしかったです。ルキリオ殿下は、属性魔法に引っ張られ気味になるのを良く堪えてらしたと思います。」

改めて目の前の図形に目をやる。なんか、みんなの気持ちが隠ってて擽ったいや。

「その魔術陣を転写した魔石や布等を身に付けておくことで、殿下の魔力出力のバルブは一定に保たれるでしょう。いずれ、その魔力に相応しい肉体と精神力を得ることが出来れば、その魔法陣も不要となるかも知れません。」

ボクは世界が広がるのを感じた。


以後、ボクは魔術陣のお陰で魔力操作が得意になった。あれほど暴発していた魔法は過去の事になっていった。


変成期も過ぎてボクも弟達も見た目はすっかり人型となった。身体の成長が魔力の安定に繋がったようであの魔術陣は御守りを経てボク専属紋となった。


兄弟の中でボクとるっくんは、インドア派だ。運動とか武術が嫌いなわけないけど、暇があればるっくんは北の山に隠っている。静かで冷たい空間にいるとるっくんの魔力と精神が安定するみたいで凍えるような瀧の裏側で過ごしているんだって。炎龍の因子を持つボクには寒すぎる場所だけど魔力保有量が兄弟一多いるっくんは、変成期中から時々発散が必要だった。幼い頃のボクのように暴発することはなかったのがさすがだと思う。いつかそう言ったら、四歳の時に一度だけ暴発させて王都を凍らせたことがあるよと教えてくれた。

何が原因かは分からないけどるっくん曰く、初めて人の命を奪ったそうだ。魔物ではなく人の命を奪ってしまったと言うるっくんがかなり大人に見えたのを覚えている。

後で、母様が教えてくれたのは、東宮に忍び込んだ賊がるっくんの相手だと言うことだった。弟達に危害を加えようとした賊五人を一瞬にして凍らせたのだと言う。

「今思えば、黒幕を吐かせるために一人二人は生かしておくべきだったよね。そんな区別も出来てなかったから、あれは、暴発だよ。だからね、暴発してしまうのはタクリオだけじゃないってことだよ。たぶんショーくんやレンくんも暴発は経験あると思うよ。」

何となく釈然としないけど、るっくんはストレス発散のたに瞑想するんだと教えてくれた。見た目が真っ白で瞳は灰青色のるっくんは、所作も雰囲気も王族然としていて、本人の意思はともかく王家の広報大使として成人前から働いている。外面を保たせるのはかなりのストレスだと言った。

王太子のショーくんは、釣り好きで何かとサボり気味の陛下に代わって公務をせざる負えないみたいだし、次男のレンくんもショーくんを手伝っている。るっくんと同じ学園の級友でもある四男のジュンリ(ジュンリル)くんは人と接することが好きだから外交の方面の仕事を頑張るんだって張り切ってる。ボクの一つ上の兄ケイゴ(ケイリル)くんは魔道具に御執心で日々研究所に籠ってる。魔道具の動作確認とかで忙しそうだ。引き籠りとか言われてるケイゴくんだけど、しょっちゅう実証実験とやらでを不在がちだ。

一つ下のショーヤは、物心ついた時からの食欲魔人だ。

ミライア母様が何でも食べようとするから困ったと言っていた。それはショーヤの因子がスライムだったから。妖精族の血を引いている子供は、七割方妖精族の因子が強く出てくるらしいけど、魔族や獣人族何かの血が混ざると妖精族以外の因子が芽生えていても何の因子持ちか分かりにくいんだって。だから、ショーヤがスライムの因子を持ってるって分かった時、皆納得したんだ。そんなショーヤは食への興味を拗らせて、薬学の方面に力を入れている。ショーヤの双子の弟ショーセは色合いも顔の作りも父陛下にそっくりなライトエルフの見た目をしている。使い魔の卵がショーセの所にくるまでは人の考えとか気持ちが頭に流れ込んでくるって言う固有魔法(ショーセに言わせたら呪いらしい)に苦しめられて一時的に妖精界にあるユグドラシルの長老の下に庇護されていた。ショーセが淋しくないようにボク達兄弟は何回も妖精界に遊びに行った。でも、妖精界と魔界がちょっと気まずい関係らしくてミライア母様の子供であるショーくんとショーヤが中心でボクやるっくんは遠見鏡での面会だった。今は使い魔も得て固有魔法のコントロール方法も身に付けたみたい。ケイゴくんが開発した魔道具も一役かったみたい。

マルティナ母様の実子であるスカイは物凄く稀少な蟲人(インセクター)って因子を持ってて使い魔も珍しい双子だったりする。スカイは面白いけど慣れるまでは人見知りが激しくて無口。将来は兄様達を守る騎士になると言っている。スカイの双子の弟であるジオンはマルティナ母様に似た顔付きに獣人らしい逞しい身体をしている。いつもふざけてる破天荒な言動が多いけど、本当は優しい気遣い獣人で良く兄様達に弄られてる。で末っ子のイッセは皆のアイドルだ。本当に可愛い。けど、案外皆の事とかを俯瞰で見てるしっかり者だったりする。

兄弟が多いこと、生まれたのが全員男だったことは、母様から言わせれば兎に角大変だったらしい。やんちゃが過ぎると言うか。壊れた国宝級な壺や壁画の修復にかなりの人数が動員されたらしい。

父陛下は一人だけでも“姫”が欲しかったみたいだけど、イッセが生まれた時に母様達に諭されて諦めたらしい。

そんな経緯もあって兄上達の婚約者には甘い。

あ、ボクには、まだ婚約者はいないよ。たぶん、第六王子以下は成人と言われる十六歳前後に自分達で見つけるか、宛がわれるかするんじゃないかな。

出来たら、兄上達の婚約者である姉様達みたいに優しくて一緒に魔法や魔術を研究してくれる子がいいなぁ。



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