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リオンの婚約者

作者: Oizu


「リオン改め勇者リオンハルトは我が王配になる事になりました。それに伴いあなたとの婚約は破棄させていただきたく•••」


急に王宮から呼び出されたと思ったら皇女フローレンスから笑顔で告げられた。


(リオンと婚約破棄?•••どういう事?そんなのいや!)


クロエは不敬になるのも構わずに顔を上げフローレンスの言葉を遮る。


「リオンとは婚約破棄しません!」


「貴様っ!皇女殿下に対して何と•••!」


側に控えていた騎士が怒鳴り、クロエの頭を押さえ付ける。

それをフローレンスが騎士を手で制す。

騎士は頭を下げ黙る。


「よいのです。彼女は平民•••所作が粗野なのはさもありなん。」


お付きの侍女が口の端だけを上げて嘲笑う。


「クロエ•••いきなりこんな事受け入れられないのも理解できます。」


フローレンスは悲痛な面持ちを浮かべ胸に手を当てる。


「しかし今や勇者となったリオンハルトと平民は釣り合いません。リオンハルトはこれから貴族籍を(たまわ)るでしょう。その時、隣に相応しいのは・・・残念ながら平民のクロエではなく皇女の(わたくし)だと皆が思っているのです。」


(下賎な平民の分際で高貴な私に口答えするなんて・・・破棄させた後は遠くの田舎に捨ててやるわ!)


「リオンハルトはこの国のみならず、全世界の人々から敬愛され崇拝されるようになりました。そして彼の功績や生涯は後世に語り継がれるのです。その時にあなたのような方が隣にいてはリオンハルトの汚点でしかありません・・・」


(魔法を使える者自体が少ない中、あれだけの魔力。絶対に王家に入れたい血だわ!)


フローレンスはおわかり? と隠しもせず侮蔑した視線を寄越す。


「新しく貴族になった事で古くからいる貴族の方々から様々な批判があるでしょう。しかし王配になるならそんな声も抑えられる・・・(わたくし)と結婚するのは彼のためなんですよ?」


(リオンのため?私はリオンにとって•••汚点なの?邪魔なの・・・?)


「彼が王になればより良い世界になることでしょう。」


私は……… … … .. .




数ヶ月後ーーー


リオンはクロエに会うために式典の前に抜け出し全速力で走る。


(クロエ、クロエ!ようやく会えるっ!!)


彼女が待ってる家へ行くと知らない人が出て来た。

聞くと一ヶ月ほど前から住んでいるらしい。クロエの事を聞いたが知らなかった。

どこへ行ったのか心配になったが式典の時間が迫っている。


(・・・きっとクロエも来てくれるはず!)


城に戻ると青い顔した侍女と騎士達が駆け寄ってきた。

その後ろから皇女がやってきたので急いで平伏する。


「リオンハルト!どこへ行ってたのですか?みな心配しましたよ。」


「申し訳ございません。クロエ・・・婚約者に会いたくて・・・」


皇女は口の端がピクつくのを隠すように扇子を広げた。


「あんな方はお忘れになった方が・・・」


リオンはバッと顔を上げる。


「あんな方?失礼ですが、皇女殿下はクロエの事を何もご存知ないですよね?」


少し殺気が出てしまい皇女が気圧されたようにたじろぐ。


「リオンハルトは長い間おられなかったのです•••女の心は変わるものです。」


「どういう事ですか?」


フローレンスは戸惑うような動きを見せたあと いつかは知る事になるでしょうから と話し始めた。


「婚約者のクロエ様は・・・他に好きな方が出来て・・・その男性と一緒にこの国から出て行かれました・・・何度も引き止めたのですが『リオンなんかよりあの人がいいの!』と聞き入れてもらえず・・・」


申し訳なさそうな視線を送る。


(ふふふ、これでこの後この男を慰め癒せば落ちるわね。男ってかんた〜ん。これで世界一の勇者は私のモノになるのよ。)


ニヤケそうになるのを扇子で隠す。


「クロエはそんな事を言う()じゃありません。」


リオンは胸元を握りしめる。


「受け入れられないのはわかります・・・でも真実なのです・・・」


(少し涙ぐんだ方が効果的かしら?)


伏せた瞳を潤ませてから見上げた。


(どう?私健気な女の子でしょ?好きになって良くってよ?)


その思考も一瞬で砕かれた。()

リオンは冷ややかな目でフローレンスを見ている。

先程より殺気が増したような・・・

顔が引き攣る。


「クロエは好きな人が出来ても俺の事を『リオンなんて』とは絶対言いません。・・・と言うか好きな人が出来たら面と向かって言いにくるでしょう。そう言う()なんです。」


「女は変わるのです。(わたくし)がお会いした時にはすでにひどい方でしたわ。男を取っ替え引っ替えして!」


「皇女殿下の嘘にはウンザリです。」


リオンの殺気が増し、息苦しくなりフローレンスは座り込んでしまう。


「ぅ、嘘じゃないわ!その証拠にあの女はこの国にいないじゃないっ!」


リオンの眉毛がピクリと動く。


「そうですか、クロエはもうこの国にいないのですね・・・では俺も国を出ます。」


リオンは失礼しますと背を向ける。


「ちょ!嘘でしょ?!式典もあるのよ?!そんな勝手は許されないわ!」


殺気が収まった事で勢いを取り戻し叫ぶ。


「あなた貴族になるのよ。あんな女なんかより良い女はいっぱい居るわ!良い暮らしも出来るのよ!」


「俺がこの世界を救ったのはクロエとの未来のためだ。俺は地位も名誉もいらない。クロエ以外いらない!」


リオンは走り出す。

後ろでフローレンスの叫ぶ声が聞こえる。


「リオンハルトを何としてでも捕まえるのよーっっ!!」


さすがの勇者リオンでも数に押し切られそうになる。


(俺の力じゃ城が吹っ飛んでしまう・・・)


被害を考え本気が出せずにいる。


「よう、リオン。これはどういう状況だ?」


旅の仲間のジャックとダリルが加勢に入る。


「クロエがこの国にいない!俺はこの国を出るっ!」


「愛しのクロエちゃんが?」


「ヒュー。愛だね〜」


ダリルが揶揄う。


「そういう事なら任せとけ!」


足元に風が集まってくる。

マティアスの風魔法だ。


「これで飛び上がらせるからその後は自分で頑張って。」


「恩に着るマティアス!」


浮かび上がると火魔法を噴射し空を移動して行く。


「リオンの魔法の使い方の柔軟さにはいつも驚かされるね〜」


ダリルがそう言うとジャックが口を挟む。


「あんな馬鹿な使い方をしようと思わんだろ、普通。」


「しようと思わないんじゃなくて出来ないんだよ。リオンの魔力って底無しだからね。」


マティアスが近くの騎士達を眠らせる魔法をかけながら言う。


「・・・おい、ダリルも寝ちまったぞ?」


「ごめん。ダリルも範囲に入ってたけどかけちゃった。」


マティアスは悪気なさそうに謝る。


「・・・お前が担げよ。」


そういうと仲間たちもこの国を出るために走り出す。




フローレンスは父である陛下の元へ連行されると真っ青な顔をした陛下が駆け寄ってきた。


「フロォォォーレンス!!!これはいったいどう言う事だっ!」


「ぉ、お父様、こ・・・これは、あの、、、」


フローレンスは上手い言い訳も思い付かず言い詰められる。


ーーーーーーーーーー


リオンはクロエの住む国を突き止め探し出した。


「クロエ!!!」


リオンはクロエの背後から抱き締める。

きゃあ!とクロエは驚く。

その瞬間、懐かしい匂いがして誰だか気付く。


「リオン?」


「そうだよ。俺のクロエ・・・」


グスっと鼻を啜る音がしたあと腕をつねられる。


「リオン、顔を見せてよ!」


「・・・もう少し待って。」


「・・・5、4、3、、」


クロエがカウントダウンをし始めたので急いで腕を緩める。


「ふふ、泣き顔見られたくなかったのね。」


「クロエだって泣いてるくせに。」


涙を流しながら微笑み合う。


「リオン・・・じゃなくてリオンハルトって呼んだ方がいいかしら?」


「やめてよ!俺はリオンだよ。君のリオンだ。」


「リオン、会いたかった・・・」


「俺の方が会いたかった。」


クロエをぎゅうっと抱きしめる。


「帰って一番に会いに行ったらクロエいないんだもん。」


甘えたように拗ねる。

私にしか見せないリオンの可愛い表情だ。

愛しさが込み上げてくる。


「リオンったらか〜わ〜い〜い〜!」


リオンの頭や顔をこれでもかと撫で回す。


「何で俺たちの家で待っててくれなかったの?」


「皇女に婚約破棄しろって言われて断ったらこの国まで連れ去られたの。」


ものすごい皇女よね〜っとクロエはのほほんと言う。


「何のほほんとしてんの?・・・殺されたかもしれないんだよ?」


「まあ、この村良い村だし?生きてるし?」


「君・・・そういうとこあるよね・・・」


リオンは呆れたように言う。


「あ!リオン!」


急にクロエがリオンの両頬を手のひらで挟む。


「おかえりなさい、リオン。」


満面の笑みでクロエが言う。


「ただいま、クロエ。」


微笑み合うとどちらともなく近づき口付けを交わす。


ーーーーーーーーーー


式典は騎士を勇者一行に変装させたが顔を知る者たちから声が上がりすぐにバレた。

特にマティアスの美貌は有名でファンクラブもある。その子達が騒ぎ出し暴動が起こったくらいだ。


「フローレンス、お前は王族から廃籍し、この国からも追放する。」


陛下は力無く言い渡す。


「お父様!そんな!!」


「フローレンス、おぬしがいては何かあった時この国を勇者が守ってくれんかもしれん・・・」


項垂れる陛下に代わり宰相が前へ出る。


「フローレンス様の移住先を探しましたがどの国も勇者の怒りをかった者を受け入れられないと拒否されました。」


(なによ。国から追放って言っても住む所も手配してくれるのね。そうよね、私に甘いお父様ですもの。それならしばらくすれば戻って来れそうね・・・)


フローレンスは密かにほくそ笑む。


「・・・が、一つだけ受け入れていただける所が見つかりました。」


「そう、どこなの?」


フローレンスは違う国の観光に思いを馳せながら聞く。

宰相からとんでもない事が告げられた。


「バルリンバリ国です。」


「はあ??!!!!」


バルリンバリ国はここ数年で建国した国だ。

村を追い出された荒くれ者や行き場のない者たちが建ち上げた国で王族がおらず、族の長が国を治める。

それ故に争いが絶えない。

建国したばかりなのに治める者は六度かわった。


「バルリンバリ国の長がフローレンス様を自身の妻として受け入れてくださるそうです。」


「ぅ、う、嘘でしょ?お父様?私に平民に嫁げとおっしゃるの?」


陛下は目を合わせずに頷いた。


「あんな国に行くなんて死にに行くようなものじゃないっ!いやよっ!絶対に行かないからっっ!」


フローレンスの抵抗も虚しく犯罪者のように手枷と足枷をされバルリンバリ国へと送られた。

フローレンスが長に嫁いでから数ヶ月後、バルリンバリ国の長が交代した。


ーーーーーーーーーー


よく晴れた日、リオンとクロエの結婚式が行われる。

無事に国から脱出したジャックとダリルとマティアスも出席してくれてる。

結婚式が始まる前にクロエは疑問に思っていたことを聞いた。


「そう言えばどうして皇女の言う事が嘘だってわかったの?」


「ん?それはね、これさ。」


そう言って首にかけてるネックレスを見せる。


「?」


わからないと言う顔をしているとリオンが説明してくれた。

ネックレスの飾りの石は想い人を思い浮かべながら握ると色が変わるらしい。


「黒い石が変わるの?」


「そうだよ。見てて。」


リオンはそう言うと石を握りしめる。


「ほら。」


握りしめていた手をリオンが開くと石が赤く光っている。


「・・・わぁ。すごい綺麗。」


「でしょ?これを見たらクロエのこと疑ったり出来ないよ。」


うっとりと石を撫でる。


「そう。・・・ん?なんで?」


「この色はクロエから俺への愛の色だからね。辛い時もクロエに会いたくてしょうがない時もこの石に勇気を貰って頑張れたんだ。」


リオンはクロエを見つめると蕩けそうな笑顔で言う。


「クロエが俺のこと愛してくれてるってわかってたから戦いに勝てたんだ。」


クロエは顔を真っ赤にしながら何か恥ずかしいと顔を隠す。


「クロエ、可愛い顔を見せて。」


リオンがクロエを抱きしめながら頭にキスをする。


「頑張ったご褒美にクロエのキスが欲しいな。」


「あなた帰って来てから毎日それ言ってるわよ。」


クロエは呆れながら顔を上げる。


「毎日貰っても足りないもん。」


「ふふ、リオンったら可愛い。」


顔を寄せキスをしようとすると


「お〜い!客待たしていちゃついてんなよ〜。」


とダリルの揶揄う声がする。

リオンと見つめ合い笑い合う。


「行こう、クロエ。」


「うん!」


読んでいただきありがとうございます!長編にも挑戦したいです!

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― 新着の感想 ―
[一言] 人の恋路を邪魔する雌豚は、人扱いすら烏滸がましいわ。オークのなんちゃらケースがお似合い
2024/04/07 13:56 退会済み
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