ふにゃ様
「勝ったんでしょ?」
レイラはアシャの家で診療をしながら帰って来たアシャを見かけるとたずねた。
「ん、うん、勝ったよ。ふにゃ、の無敗記録はまだ続いてる」
「そうなんだ・・・あーーーーーーーーーーー私も行きたかったな」
「そうだったんだ、それは悪いことをしたね」
「アシャがいない間にアシャの患者をちゃんと診といたからね、アシャ」
「うん、ありがとう。
今度は誘うから」
「当然でしょ」
「はい、すみませんでした」
遅れて入って来たアンとレイは状況がわからず。
「ドライバーフルスイング解放!300ヤード越え!」
「そこで国王が、意味は分からんがすごい飛距離だ」
「国王うける、キャハハハハ。
ゴルフ苦愛面白かったね」
二人の会話を聞いてレイラは低い声で言った。
「患者さんがいますから静かに」
「はい」
二人はそそくさと奥の部屋に消えた。
さらに遅れて部屋に入って来たリュウはというと、棒を振りながら・・・
「秘儀ローリングこん棒!
ふにゃああああああああ!
ふにゃああああああああ!
キャハハハハハハ!キャハハハハハハ!キャハハハハハハハハハハハハ!」
ドラがリュウの口を押さえて外に連れて行った。
「まったく、お祭りにでも行ったかのようにはしゃいで。戦争ですよ、戦争」
「ふにゃ、が転生勇者を集めて圧倒して勝ったからしょうがないよ。しかも帝国の元拳闘士も来ていたから、危なげも無く見ていられた」
「元拳闘士って、アダマンタイトナックル皇帝と曙光聖女?」
「ああ、そういうんだ、そんな感じだったよ」
「くっそ!みたかったよ、伝説の破壊神じゃん」
「レイラ、患者さん」
「・・・それではヒールしますね」
ようやく日常に戻ったのだが。
しばらく食事の時はその話題でもちきりであった。
「転生勇者っていろんな所にいるんですか?」
「いるね、ふにゃ、は片っ端からケンカ売って配下にしてる。
はじめは、うちにもケンカ売ってきたんだよね」
「えっ、ここの転生勇者って?」
「ほら、そこにある。薄いやつ」
「えっ?どれです」
「ほらこれ」
「貝印両刃カミソリ!」
「アンは本当に詳しいな。うちでは傷口の毛を剃ったりいろいろ使ってるやつな」
「アシャさんの?」
「所有者ってこと?いや、どっちってこともないけど、レイラが指にはさんで遊んでたかな」
「武器ですよね?聖剣に分類される所の」
「そだね」
「いいんですか?そんな神聖なもので毛を剃ったりして」
「もともと毛を剃るものだしかまわないよ」
二人でマジマジと見ながらさらに質問をした。
「それで、ふにゃ、さんとのケンカの結果は?」
「引き分けだな。
カミソリは転移して相手の体に入って分裂するんだけどこん棒が転移を阻止して膠着状態になって引き分け」
「強いんだ」
「ここだけの勝負で見たらそうだね」
レイがぶつぶつと独り言のようにつぶやいたのでアシャは適当に答えた。
「異世界には貝印両刃カミソリ人の国があるのか」
「よく知らんけどそうかもしれないね」
しばらくするとアンとレイにも診療をまかせてくれた。もちろんアシャの監視付きだが。
「まずアンがやってみて」
「これはヒールですよね?」
「うん、ヒール」
「これもヒールですよね?」
「ああ、ヒール」
「まあ、これもヒールで・・・すよね?」
「ヒールなんだけどさ、どこに重点的にヒールするか、とか考えないと」
「はあ、じゃあこの人は・・・心臓ですね」
「そう、それで?」
「それで・・・って・・・心房?」
「心房の・・・?」
「不整脈ですよね、さっき調べた」
「だから?」
「そこに重点的にヒールをかけますね」
「でもそれだけじゃないでしょ」
「そのまわりもヒールしますか」
「うん」
「じゃあ心臓全部で」
「なんだけどさ、日常生活でも注意点とかあるでしょ」
「あぁ、運動してなさそうだな、脂肪も沢山ついているし」
「だとどうする」
「代謝があがるようなヒールを」
「だね」
「つまり全身ですね」
「そうなるね」
「結局全身ですよね」
「だからなに?
さっきのヒールと今のヒールじゃヒールの質がまるで違うでしょ」
「・・・」
「なにムスッとしてるんだ」
「ムスッとしてません」
「じゃあブスっとか?」
患者の老人は口を開いた。
「病状が良く分かってよかった、はやくヒールしてくれ」
アンは涙目になりながら老人にヒールをかけた。
「ヒールはちゃんとかかってますから、お大事に。
じゃあレイ行くか」
「はい!
この患者さんは脚の関節部分がおかしいのでおそらくリュウマチかと思われます。右が主に悪いように思われますが、それではバランスが悪いので両足にヒールをかけて、経過観察しながら気長に改善を待ちます」
「うんいいぞ、アンも見習え。
アン、何泣いているんだ」
「泣いてません」
「泣いてるだろ」
「泣いてません」
「すみません早くやってくれませんか」
「レイ、ヒールを」
「ハイ」
「アン泣くのをやめなさい」
「泣いてません」
「泣いてるだろ」
「泣いてません」
「とにかく控室に行きなさい」
「行きません」
患者さんのおばあさんが。
「先生、もう少し優しくしてあげて下さい」
「この子はヒールが強いから雑になりがちなので厳しくしつけないといけません。
はい、ヒールはちゃんとかかってますから、また来週いらしてください。
おいアン、患者さんに気を使わせてどういうつもりだ、おわびしろ」
「くうううう、ごめんなさい、あああああああっ!」
「おいどこに行くんだ、夕飯までに帰って来いよ」