番外編
「ハアハア、我々は魔王信長の家臣から迫害を受け、隠れて生きていた。
それもこれも悪魔と戦うその日まで耐えることが神から与えられた試練と考えてのこと。
在野に眠る聖剣を刈るための刀狩りにも隠れて所持してきた「村正」を今日使わずにいつ使うのか」
年老いた枢機卿は刀を毛布にくるんでその重さに背を丸めて修道院にむけて急ぎ足で歩いていた。
「この刀は、魔物に会えば魔物を切り神に会えば神を切る。
下位の魔物と神が通じていることは先祖から言い伝えられて来たのだが・・・
剣道でもやっておけ良かった」
ぶつぶつと独り言を呟きながら歩いているうちに前方に内に神々しい光を宿す白人の若者達を見つけた。
「神なのか、堕神に取りつかれているのか?
ここで私の勇気は命と共に潰えるかもしれないが、今やらずして何が信仰心なのか」
枢機卿は修道院長の笑顔を思い出して呟いた。
「あなたが少しでも長生きできますように」
古くからの知人として、いやそれ以上の感情を持っていたのかもしれないが、数奇教は気持ちを切り替えて刀を鞘から抜いて若者たちに切りかかった。
「おっと、危ない」
枢機卿の渾身のひとふりは難なく若者にかわされ刀を奪われた。
「この爺さん、いや、この服装は・・・枢機卿殿は何故我々を切ろうとしたんだ」
「堕神め、私が成敗してやる!」
「・・・いちおう光は見えるようだが見分けまではつかないと言ったところか。私達は堕神ではない。
我々はイングランドから来た、第9次十字軍の者だ」
もう一人の若者がその後に続けて話し出した。
「そうだ、先祖代々伝えられた神剣を持ってだな遥々東方のはてまで・・・いやちょっと待て。
十字軍は今回13次だ、間違うな」
「いやいや、9次で間違いない。
お前の先祖がしょうもない小物相手に遠征したのを数に加えるな」
「しょうもないとはなんだ、今回のような教会で生まれた堕神討伐だろ」
「遥々中東まで遠征して聖剣をひとふりしただけだろ」
青年が大笑いするともう1人が怒って詰め寄ろうとするのを制止するかのように枢機卿は二人に話しかけた。
「いずこから来られていたのか。
それに・・・何か対策をご存じなのか?」
青年達は冷静さを取り戻して枢機卿に向かって説明をはじめた。
「我々はイングランドの貴族の家系で、遠い昔に祖先が十字軍として遠征している。
一般に言われているのとは異なり、堕神になった土地神達の征伐だ」
「ああそうだ、今回我々は・・・そのカオス様のギグにだな・・・参加してそこにいた堕神を・・・昇華させる姿を見て・・・本来我々の祖先から・・・とはちょっと違う方法なのだが・・・」
滑舌の悪い青年を押し退けてグループの女が話し出した。
「コイツらがカオスのセックスパーティに行って男に乗り移った堕神をカオスが成敗するところを見て、これカッケー、って思って今に至る、ってことだ」
「ちょっと違う、聖剣を使わずに相手の股間の剣をカオス様が・・・そういうことだ。
もちろん我々にはそのようなことは出来ないので聖剣を使うのだが」
青年は女に目を合わせずに枢機卿に背を向けた。
「あー何度思い出しても腹が立つ、コイツらはそのあとカオスについて回ってイングランドからアイルランドにスコットランドからウエールズと堕神退治を行ったんだよ。カオスから「コイツらいい餌になる」って言われながら。枢機卿様この言葉の意味が分かるか?男女いるんだぞ堕神に憑依された人は」
数奇教はそこら辺の話を流して「聖剣を持っているのか」と聞いた。
「え、ああ。
これはアーサー王のより古いぞ」
そう言って背中に担いでいた毛布から金色の剣を取り出した。
枢機卿は神々しい剣に祈りを捧げた後
「どうやって日本に持って入ったんだ」
「金属探知機には引っ掛からないが、形がな、刃物だから。
外交官の知り合いの親父に頼んでもちこんだのさ。
カオス様は係員と別室で一対一の説得をするとOKが出るらしい、さすが天使様だ」
女は吐き捨てるように「ヤったんだろその係員とよ」と言ったが男の一人は無視して
「これから800万退治するんだぜ、これは楽しみだ」




