ふにゃ様
アンとレイが、ふにゃ、をかこんで頭を撫でたり耳をツンツンしていた。
「かわいいね、女の子?」
「おうちはどこ?」
ふにゃ、は喉をならして喜んでいたが。アシャが横目で見ながら・・・。
「それはいちおう勇者だよ」
「ゆうしゃ、勇者?」
アンとレイは少し距離をおいていちおう敬意をはらってお聞きした。
「なにか飲み物でもお出ししますか、それともお食べになりますか?生の魚は無いんですけど」
「なんでもいいニャ」
「そっちの釘バットさんはどうします?」
アシャとレイが目を見合わせた。
「はっ?誰だい、怖いよ」
みんなあっけにとられていたが、アシャが・・・。
「なんだよアン、こん棒が飯食うかよ。
受けるよ」
ふにゃ、は目を閉じて一言いった。
「こん棒さまも、口が無いのに食えるかよ、とおっしゃっておられますニャ」
アシャは大笑いした。
「ふにゃ、のりがいいな。デザートも食べていけ」
ふにゃ、は果物を前にして上機嫌になった。
だがアンは顔を赤らめながら。
「あわわわっ、もう一人いらっしゃるのかと錯覚していました。なんでだろう」
ふにゃ、はパンとスープをたいらげると果物を食べて眠くなるのをこらえながら。
「戦いの前に祝福していただける方が欲しいニャ。
そこでアシャ様をお誘いに来ましたニャ、ですがニャ、こん棒さまが見えるアン様でもいいかニャ」
「アンはダメだよ、私が行ってやる。
で、どこと戦うんだ」
「魔王の尖兵隊だニャ」
「もう来てるんだな、・・・でも余裕なんでしよ?」
「こっちはゴルフ苦愛衆とチェーンズも参加するから秒でのせる、と、こん棒様がおっしゃっているんだニャ」
「そいつらも転生者なんだ?なら安心だね」
「そうなんだニャ」
レイがいぶかしげに、ふにゃ、に聞いた。
「異世界には猫の国があるんですか?」
「違うニャ・・・こん棒の国があるニャ」
「はっ?こん棒の国、こん棒の国って・・・」
「あ、まあ、あれだ・・・患者も少なくなったし。
お前らも行ってみるか、後はレイラにまかせればいい。それに魔王軍といっても雑魚みたいだし」
したくをしながらアシャは戦場でのヒーラーの役割を教えてくれた。
「ふにゃ達の打撃は最強で無敵だ、何も問題無いし、防御には魔法攻撃に対して耐性と無効が付与されるといった至れり尽くせりだ『ほとんど耐性だけみたいだけど』、しかし呪いには弱いからヒーラーが祝福するんだよ。
まあ、ヒーラーがいなくとも呪いにも耐性あると思い込んで戦うんだけどね。
それって根性って言ってたっけ?」
「こん棒様が、根性、あるいは、気合、っておっしゃるのニャ」
アシャが白い法衣を着るとアンとレイが。
「おお、綺麗です。見違えました」
「お前ら、普段着しか見てないもんな。
ほら杖を持つと、聖女に見えなくもないだろ」
「あははははっ」
似合ってはいたが必死に否定するのも変なので笑うしか思いつかなかった。
ドラに乗ってリュウも乗っけて飛ぶとものすごい速さで戦場まで着いた。戦場ではすでに王国軍と魔王軍のにらみ合いがはじまっていた。そこにアシャが降り立つとそれを見つけた国王が駆け寄って来た。
「おお、聖女様、よくおいで下された、それに、勇者ふにゃ殿と棍棒様、これで我々は勝つこと間違いない」
王国の兵士や、ふにゃ、の王国連合の面々がぞろぞろとアシャのまわりに集まって来た。皆は片膝をついてアシャの言葉をまった。
「戦場に集えし強者達よ、神より下された聖なる光をあびて無敵の神兵となり地上から魔を追い払うのだ」
神々しい光がアシャのさし上げた腕の先から発散されると皆の体からも光が発せられた。体の奥底から祝福されたことを感じた兵士たちの気持ちが高ぶるのがわかる。そして一人の兵士が叫んだ。
「女神の加護をえた我々は無敵だ!魔王軍を叩きのめすのだ!」
皆は立ち上がるとそのまま魔王軍に突撃していった。
アシャはアンとレイそしてドラとリュウを連れて小高い丘に腰をおろして戦いを見学した。
「ふにゃ、は相変わらず無茶苦茶だな、棍棒を横に振ってるだけだよ」
「でもいっぺんに何十人もの魔王の兵士を倒してますよ」
「棍棒が頑張ってるんだよな。知ってるか、国王はあの棍棒を『ルシファーズハンマー』って呼んでるんだよ。意味は、悪魔の鉄槌、なんだよなあ。神聖なる勇者の武器の名称じゃないよ、なんて名をつけるんだか、でもこん棒も気に入ってたりして」
ブツブツ言いながら、さらに目をこらして見ると。
「しかし勝ち確だな、メリケンサック拳闘士にモーニングスター女子もいるじゃないか」
「打撃系ばかりですね」
「レイは短剣つかうもんな、でも、あれでもいちおう分類上は聖剣で勇者なんだよ。
だがなんだゴルフクラブ衆ってのは新しいな、犬族かな?また、ふにゃ、がどこかでタイマンして引き込んだのか。しかし持っている武器が微妙に違うな」
「アイアンとかパターですかね?」
「アン、良く知ってるな」
「なんとなくそんな感じが・・・帝国で見たのかな」
しばらくたつと攻めあぐんでいるようなので、アシャが立ち上がって少し前に出た。
「秒はさすがにムリだな、圧倒してはいるが・・・テコ入れするか」
腕を高くあげると祝福の光が戦場を照らした。そうすると自軍の兵士は力を取り戻し、魔王軍の兵士の体が重くなった。
戦いは数分で終わった。
ふにゃ達が勝どきをあげているのを見ながらアシャは・・・
「さて帰るか。祝勝パーティーに巻き込まれると裸踊りをさせられる。
どうだ、この戦いは?お前たちが従軍した戦場とは違うだろ」
「分かりません・・・戦傷者が少ないですが」
「戦傷者が少ないのはたまたまだ。
人同士だと捕虜をとったりどこかで妥協するけど、魔王軍と戦うときはどちらかが完全勝利するまでやるんだよ」