番外編
「おい、ダンジョンにもぐるのにこの装備は無いだろ」
シスターは『?』となっていたがビクティムはかまわず続けた。
「お前は松明を持って私の後ろをついてこい」
シスターは懐中電灯を持ってビクティムの後をついていった。
だが地下は明るくすぐに明かりの心配が無いのが分かった。
「どこかの魔術師が明かりをつけたまま去ったのか」
暗号の書いた紙を手に取り通せんぼする棒を抜けると人がまばらにいる場所に出た。
「ここで地下鉄が来るのを待ちましょう」
ビクティムが剣を抜いて待っていると、炎のような光を発する巨大な地虫がはいよってきた。
地虫は透けて中が見えており、餌を取り込もうと脇腹をあけてビクティムを誘惑した。
「・・・なんだ魔道具か」
人々が降りてきたので安心して地下鉄にのった。
「ビクティム様、今日は池袋で路上生活者のために炊き出しをします」
先に用意をしていたシスター達がすでにパンとスープを配っていた。
シスターはすぐパンを配ったが、ビクティムはする事がなく、回りをブラブラしていると見知った年寄りを見つけた。
だがそこまで歩み寄る前に・・・
「おい姐さん・・・やらせろ」
「臭いぞ、風呂入ってこい」
「ちっ、ケチくせえ」
たわいのない会話をしていると、ビクティムは一人の老人の前にとまった。
「お前は、フランタ・・・フランタ・・・某王か、こんなところでなにをしている?」
「おお、聖騎士のビクティム殿か、これはこれは。
私はここでパンとスープにありついていたのだ」
「路上生活者、とか言うのがお前か」
「いかにも」
「お前は、こっちの世界に家族や仕事があるとか言っていたように記憶しているが」
「子供は一人立ちして、嫁は再婚していた。
気づけば仕事を引退する年寄りになっていて、仕事仲間もいなかった、と言うわけさ」
「ワッハッハ、それは愉快だな。
・・・では帰るのか?
跡目はあいつが次いだが娘もいるし何とかしてくれるだろ」
「自力で帰ろうとしたが・・・アンに渡した本は石の本棚にでも入れてあるのか転移できなかった」
「他にも本はあるだろ」
「有るにはあるが、もう力をだいぶ使ってしまったのでたまるの待ちだ」
「ほう、これは良いことを聞いた、帰れるんだな。
水龍なら近くにいるぞ、アイツなら行けるだろ」
「そうか。
所でこの新聞を見たかね?」
「新聞?
いや見てない」
「ここに。
彗星のように現れた推定日本人のモデル兼アーティスト、フランスのファッション界を統一する。
とある」
ビクティムは記事に添えられた写真を見た。
「カオス、だな」
「そうだ」
「統一した、と言うのは全員、兄弟に成ったってことだろう。
カオスが椅子にしているのは渋谷にいた男だな、こいつが長男だ」
「逆輸入とも書いてある」
「日本も皆兄弟になるのか、まああっちはアイツにまかせるか。
じゃあ、炊き出しも終わったみたいだし、あたしは帰るよ。
お前もくるか」
「いや。
またしばらくしたら行くよ、あの本は持っているか?」
「あー、あったな。
これか?
おかげで昔できたことはおおよそ出来るようになったよ。
これは広い場所に置いておくよ」
胸の間から本を取り出してまたしまった。
シスターとビクティムはまた地下鉄で帰って行った。
残ったシスター達は二人がいなくなったのを確認して各々に喋りだした。
「あれが天使様か、内から発せられる光がまばゆすぎて直視出来ないほどだ」
「私は涙が出てくるのをずっと我慢していたよ」
「すべての者に分け隔ての無い態度、私も見習わなければ」
「はじめはあそこの老人がまばゆく感じたが桁違いだ」
「ルネッサンス期の彫刻のような美しいお方だ」
「渋谷の修道院はよく連れてきてくれた、私達が天使様見たさに修道院に押し掛けたらいなくなってしまうかもしれないからな」




