戦争へ
城の方から女性神官が全力で走ってきた。
「アンさまーーー。
王子様が急遽出陣されるので祝福して欲しいとのことです」
アンはレイと向かい合って目を合わせた。
「アン、どうする?
お爺ちゃんは、まあアシャが面倒見てくれるか」
「そうだなアシャがなんとかしてくれるし、行くしかない。
ここでお給料をもらっているのだから。
まあ、また後方で高見の見物だ」
お爺さんは困った顔をして少し取り乱した。
「待ってくれアシャは裏切る可能性がある。
魔族に寝返るとかではなく、その時の気分で手を出さないとかあると思う」
アンはあきれた風に口をあけて
「さすがにそれは無いでしょう。
じゃあ行ってくるよ、お爺ちゃん」
サキュバスも「あたしらも心配だから行くよ・・・そもそも護衛だし」そう言ってアン達の後を追った。
そしてお爺さんもアン達の後を追ってきた。
「ワシも行くぞ」
かくかくした変な動きで動きずらそうだがお爺さんは後ろをついていった。実は某王として王子に面識のあるおじいさんだが、ちょっと見られたくないかくかくとしたみっともない動きと勝手に国に入ってきているので「この作家風のかっこうなら王子も分からんだろう」と考えていた。
城の前に着くと王子が数十名の騎士を従えてアンを待っていた。
「アン行くぞ」
「行く?
ここで祝福をするのでは・・・?」
「私の主力は国境の守備隊だ」
「つまり国境まで行くんですね」
「国境の守備隊は歩兵もいるからすでに陣地を出ている。
それを追うんだ。
心配するな、お前は入口の前で置いていく」
「入口?
デーモンホールの?
そんなところまで行くのか」
レイはアンから一歩引いて「アン頑張って、神の加護がありますように」と言って祈るしぐさをした。
アンは『こいつ逃げる気だ』と思ってカチンときたので飛び付くようにレイの腕を組んで「王子様、私は優秀な魔術師を連れて行きます」と宣誓した。
王子は「よし分かった。レイ、お前は確かデーモンコアを無力化して昇級したんだったな、問題無いだろう。
所でその爺さんはなんだ、盾にはなると思うが、連れていくのか?」そう言って横目で見た。
お爺さんは下を向きながら
「気にしないで下さい。
私は盾です」
顔を見せないように上目使いに王子を見た。
王子は下から覗き込むようにお爺さんの顔を見ようとしたがおじいさんがさらに頭を下げて見えなかったのであきらめた。
「お前は、どこかで見たような・・・名前が思い出せない。
まあ、思い出せないと言うことはたいした記憶ではないのだろうか、うーん、実に気持ち悪い」
ぶつぶつ言いながら王子は自分の馬に乗った。
女性神官は「アン様レイ様、ご武運を、レイ様おばあさまには伝えておきますからご安心を」そう言って城に向かって帰って行った。
アンとレイ、そしてサキュバスにおじいさんは馬車に押し込められた。
おじいさんは顔を上げて言った。
「皆さん本は持ったかい?」
「あー、えーっと、持ってきてしまったかな。
後で料金を払います。ごめんなさい」
「そうじゃない、ただ持っているかと聞いているんだ」
「持ってますよ、ポケットに、ほら」
アン達はそれぞれに取りだして見せた。
「サキュバスは持っているのは分かっている。
と言うかくすねるように秘密のポケットにいれたのは見ていた」
「嫌な言い方だな。
じいさんからもらったものだし、ちゃんと正規の入れ物いれに入れたぞ」
「それならいいが、本は濡れると使い物にならなくなるからな、気を付けろ」
「エロじじいが。
それよか切り傷が減ったな、押し返しているのか?」
「強い助っ人が来たからな。
まだまだ増やすぞ」
診療所の某王は余裕の表情で座って御茶を飲み始めた。
「どうした、魔王城のお前は死んだのか?」
「いやいや、ふにゃが暴れまわっているから少し休むよ」
ふにゃの舎弟はぴくっと反応した。
「総長は戦っとるんか?!」
「強いねえ、無双しておるわ」
「こうはしておれん、ワシらも行くぞ!」
「さてさて、どうするか。
まだ早いか」
デーモンホールの場所を確認してすぐにでも診療所を飛び出そうとしているとアシャが「あわてるな、某王が連れて行く、だろう」と言うと腕を組んでさらに付け加えた。
「おまえ、やり方が汚い・・・」
アシャが「汚い」と言い終わる前に某王は「おっと」と大袈裟に言って机の上に大粒の宝石を転がした。
それまで興味無さそうにボーッと鼻をほじっていた子供ドラゴンのセイが目を輝かせて宝石に目が釘付けになった。
「こんな大粒の宝石ははじめて見る。
どこで見つけたの?」
「ワシか戦っている魔王の宝物庫には山ほどあるぞ、ホッホッホッ」
「デーモンホール通ってどれくらいかかるの?」
「ワシの能力なら一瞬だよ」
子供ドラゴンのライザがぼそりと言った。
「この人、怪しいよ」




