冒険
「あまいな、お前ら。
これから人の汚さが見れるぞ」
サキュバスが小声で言った。
馬車が目的地につくと神官は引きずられるように降ろされた。
「おい、ちゃきちゃきと歩け」
神官がこけると拳闘家が上になって殴りだした。
「まったくお前はまともに歩けないのか」
アンは『この子、自分にヒール出来ないのか、回復術の訓練を受けていない本物の神官なんだ』と思い、助けるために拳闘家を眠らそうとしたが思いとどまった。しかしアンは本気でこの子をなんとか逃がしてやろうと決意した。
サキュバス達はそんなことも知らずにのんびりと冗談を言い出した。
「うちらも奴隷の時はこんな感じだった、かな?
ヒャハハハ」
アンはとっさに「ウソつきめ」と言った。
「ハッハッハ、男を眠らせたすきに神官を連れていけばいいだろ、アン」
「正式に入手した奴隷を勝手に連れて行くことは出来ないんだよ」
サキュバス達は
「分かった、そこで見ていろ」
そう言うとローズはもえもえちゃんの背中を押して前に出した。
「あの、やめて・・・あげて・・・ください」
もえもえちゃんが察してそう言うと男はもえもえちゃんを押し倒した。
「こんなガキが拳闘家とかふざけやがって!」
今度はもえもえちゃんを殴ると男が飛びのいた。
「痛ってえ!」
男の拳が砕けていた。
サキュバス達はニヤニヤしながら神官を起こすとアンにヒールをかけるよう促した。
そしてサキュバスは
「さて、約束通り神官は我々がもらうぞ」
「なんだと!そんな約束してないぞ」
これにはデーモンバスターのメンバーも怒り出した。
「その神官は我々が買ったんだ、お前ら勝手を言うな。
女のパーティだと思って優しくしていたら調子にのりやがって」
「うちの拳闘家が神官をかけてお前らの拳闘家と戦って勝っただろ。
フフフッ、決闘の流儀も知らんのか?ハハハッ」
デーモンバスターのリーダーは歯切れの悪い一言を発した。
「決着がついていないだろ」
サキュバスは一言
「じゃあ続けろ」
そう言うと、拳闘家はもえもえちゃんを蹴ると今度は脚が砕けた。
「痛ってえ!
このガキ、何かの魔法をかけているな」
「だとしてもお前の負けだ。
フッフッフ、うちの拳闘家は強いだろ。
取り戻すなら今のうちだ、お前らの中にコイツかあたし達と戦う奴はいないか」
リーダーの剣士が前に出たがサキュバス達が前に出てマントの隙間から剣を覗かせた。
「やめとけ、あたしらはうちの拳闘家ほど甘くないぞ」
リーダーは魔術師を見ると今度は魔術師が前に出た。しかしサキュバスは
「レイ、お前の出番だよ」
レイはアンと神官の介抱をしていたので自分の出番だとは思っていなかった。
だが相手の魔術師がレイの名を聞いて反応した。
「レ某だと、宮廷魔術師の血統とでも言うのか?
ふざけるな黒こげにしてやる」
レイが重い腰をあげると、後ろから
「じゃあ行くんだにゃ」
露店でお菓子を買い食いしていたふにゃが前に出た、しかし
「お前は魔術師じゃないだろ」
「なんだペットが出てきたぞ」
リーダーの剣士が前に出た。
「やめとけ、ふにゃはお前ら相手に手加減出来るかどうか分からん」
「手加減するにゃ」
「はっ、今度は、ふにゃ、か。
勇者が出てきたぞ、このハッタリどもが!
そっちの神官はアンとでも言いそうだな、それともア某か」
アンは「ア某?」と聞き返しそうになったがふにゃが先に喋り出した。
「アシャなら生きていたら治してくれるんだにゃ。
首を切ったら首から下を再生するし、体から首を再生すると似た何かになるそうだにゃ、まだ見たことないから見てみたいにゃ」
「アシャ?
あいつはそんなガキじゃない、アシャはおばさんだぞ」
アンは『すごいなアシャは、ほんとかもしれない』そう思いながら、そろそろやめてくれないかな、とサキュバスを見た。だがとまらなかった。
「試してみろよ、そいつはアンじゃないかもしれないぞ」
「アンなら魔族を奴隷として従えているはずだ、それほどマトモじゃないいかれたヒーラーだ。それに、お前らは異形じゃない」
「分からんぞ、フフフッ」
リーダーは踏ん切りが切れない様子で、
「そんなこん棒で首は切れないだろ」
「まだ姉さん達の方が、まともか、いや魔族臭いか・・・」
等としばらく言い合いをしていたら、役人が駆けつけてきた。誰かが通報したのだろう。
「どうした?ケンカか」
リーダーは少しほっとした顔をして
「お役人さん、
アン様レイ様御一行だ、勇者もいるぞ」
「バカを言うなこんな軽装でここにいるわけがない」
確認もしないでそう言うとデーモンバスターを向こうに追い払おうとした。
デーモンバスターは奴隷を取り返そうとしたが役人は決闘なら有効だと言ってアンに神官をわたすとアン達に向かって言った。
「騒ぎをおこすな、すぐこの村から出なさい」
そう言って馬車にのせて見えなくなるまで見送った。




